タダノに下請法違反で勧告
「金型の無償保管」はなぜダメ?下請け側が知っておく権利
勧告が相次ぐいま、2026年の新ルール「取適法」もあわせて整理します
- 株式会社タダノ(高松市)は建設用クレーンの製造販売大手
- 下請け業者に、部品づくりに使う金型などを無償で保管させていたとされる
- 公正取引委員会が下請法違反として勧告。香川県の企業への勧告は初と報じられている
- 前日には給湯器大手のノーリツも下請法違反で勧告を受けており、勧告が相次いでいる
「金型を預かっておくくらい、大した話ではないのでは?」と思うかもしれません。ですが金型の保管には、置き場所の確保・管理の手間・サビや破損を防ぐメンテナンスといった実費がかかり続けます。しかも量産が終わった後も「補修用の部品を作るかもしれないから」と何年も預かり続けさせられるケースが多く、下請け側は断りにくい。だからこそ、法律ではっきり禁止されている行為なのです。
下請法(正式には「下請代金支払遅延等防止法」)は、立場の強い発注側が、立場の弱い受注側に無理を押し付けることを防ぐ法律です。発注側の義務(発注内容を書面で交付する、代金の支払期日を決める等)と、やってはいけない禁止行為が具体的に列挙されています。代表的な禁止行為は次のとおりです。
- 代金の減額: 受注側に責任がないのに、決めた代金を後から減らす
- 支払遅延: 品物やサービスを受け取ってから60日以内に代金を払わない
- 買いたたき: 通常の対価より著しく低い代金を一方的に決める
- 返品・やり直しの強制: 受注側に責任がないのに受け取りを拒む・作り直させる
- 不当な経済上の利益の提供要請: 金銭・労働の無償提供を求める——金型などの無償保管はこの類型
今回のタダノのケースで報じられている「金型などの無償保管」は、この最後の類型にあたるとされる行為です。保管にかかるコストは本来、保管を求める発注側が負担すべきもの。それを下請け側に無償で負わせることが「不当な経済上の利益の提供要請」と判断されるわけです。
実は下請法は、2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(通称: 取適法)」に生まれ変わりました。「下請」という言葉自体が上下関係を連想させるとして、法律名からなくなったのが象徴的です。中小企業・個人事業主に関係が深い変更点は次の5つです。
- 手形払いの禁止: 約束手形での代金支払いが禁止に。すぐ現金化できない電子記録債権なども対象。受注側が現金化まで何か月も待たされる慣行が変わる
- 価格協議への対応義務: 受注側から価格の相談を求められたのに、協議に応じない・説明しないまま一方的に代金を決めることが禁止に。原材料高・賃上げ分の価格転嫁を交渉しやすくなった
- 対象取引の拡大: 荷主から運送事業者への委託(特定運送委託)が新たに対象に
- 対象事業者の拡大: 資本金の基準に加えて従業員数の基準(300人・役務等は100人)が新設され、「資本金を小さくして規制逃れ」がしにくくなった
- 呼び方の変更: 「下請事業者」→「中小受託事業者」、「親事業者」→「委託事業者」に
ルールを知っていても、「取引を切られたら困るから言えない」というのが下請け側の本音だと思います。だからこそ、日頃の経理でできる備えが重要になります。
- ①発注条件を記録に残す: 発注書・メール・チャットは消さずに保存。口頭発注は「先ほどのご依頼の確認です」とメールで復唱しておく。減額や無償要請があった日付・金額も記録する
- ②支払条件を経理でモニタリング: 受け取りから60日を超える支払い、一方的な減額、相殺の増加がないか、月次で入金をチェックする
- ③相談窓口を知っておく: 公正取引委員会・中小企業庁には申告・相談窓口があり、申告したことを理由にした報復(取引停止など)は法律で禁止されています。いきなり申告でなくても、下請かけこみ寺などの無料相談から始められます
もうひとつ、経理目線で見逃せないのは、支払条件の変化は「相手の資金繰り悪化のサイン」でもあるということです。支払サイトの延長や手形への変更を求められたら、下請法(取適法)の問題であると同時に、取引先の経営が傾いている予兆かもしれません。先日の全東信破産のように、ある日突然「売上金が入ってこない」事態は現実に起きています。
→ 金型の無償保管が問題に。勧告が相次ぐ
→ 減額・支払遅延・買いたたき・無償要請
→ 手形払い禁止・価格協議は「権利」に
→ 発注・入金の記録と相談窓口の把握
取り締まりが強まり、法律も受注側に有利に変わりました。あとは、下請け側がそれを「知っているか」だけの差です。発注書と入金の記録という、経理の基本こそが自分の会社を守る一番の武器になります。
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