「お品代」の領収書より、レシートのほうが使えます
必要なのは、何を買ったかが分かること
わざわざ領収書を発行してもらう手間、実は逆効果かもしれません
- 帳簿には「資産又は役務の内容」、つまり何を買ったかの記載が必要です
- 「お品代」の領収書は、この内容が分からないため後から困ります
- レシートは品目・税率・日付がまとめて印字されているので、そのまま使えます
- スーパー・飲食店・タクシーなどは、宛名がなくても問題ありません
消費税の仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書等の保存が必要です。このうち帳簿に何を書くかは、消費税法30条8項で決まっています。
- イ/課税仕入れの相手方の氏名又は名称
- ロ/課税仕入れを行った年月日
- ハ/課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象の場合はその旨も)
- ニ/課税仕入れに係る支払対価の額
注目していただきたいのがハです。条文は「資産又は役務の内容」を求めています。つまり何を買ったのか、何のサービスを受けたのかを記録する必要があるということです。
結局、あとで記憶をたどるか、レシートを探すことになります。領収書をもらった時点で、レシートを捨ててしまっているのが最悪のパターンです。
一方でレシートには、品目・数量・単価・日付・店名が印字されています。帳簿を作るのに必要な情報が、最初からそろっているわけです。
記帳を代行していると、「お品代」の領収書は毎回のように出てきます。そのたびに手が止まります。
- 勘定科目が決められない → 消耗品費か、接待交際費か、福利厚生費か。金額だけでは判断できません
- 税率が判断できない → 食品なら8%、日用品なら10%。中身が分からなければ区分できません
- 本人に確認する手間が発生する → 数か月前の買い物を思い出してもらうことになります
- 私的な支出との区別がつかない → 説明を求められたときに、根拠を示せません
どちらか一方しか残せないなら、内容が分かるレシートのほうが実務では役に立ちます。
時間が経ってからでは思い出せません。受け取った時点で書くのが唯一の解決策です。
レシートを避けて領収書をもらう理由の多くは、「宛名が入っていないと正式ではない」という思い込みです。しかし法律上、宛名が不要な業種が定められています。
消費税法施行令70条の11は、次の事業について宛名の記載を省いた簡易な形(適格簡易請求書)を認めています。
- 小売業、飲食店業、写真業及び旅行業
- タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業。一定のものを除く)
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に場所を提供するものに限る)
- これらに準ずる事業で、不特定かつ多数の者を相手にするもの
逆に言えば、相手が特定されている取引はこれに当たりません。継続的な外注先、事務所の家賃、士業への報酬などは、宛名の入った請求書等を受け取ることになります。
スーパーで食品と日用品を一緒に買うと、1枚のレシートに8%と10%が混在します。この場合、帳簿では税率ごとに分けて記帳する必要があります。
先ほどの30条8項ハには括弧書きがあり、軽減対象の課税仕入れについては「資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨」を記載するとされています。つまり軽減税率の対象であることが分かる形で記録するということです。
- 軽減税率の対象を示す印/「※」や「軽」などの記号が品目の横に付いています
- 税率ごとの小計/8%対象と10%対象が分けて集計されているか
- 登録番号/「T」+13桁。仕入税額控除を受ける場合はここも確認します
受け取った時点で読める状態のうちに、写しを取るか電子データとして保存しておくのが確実です。なお電子取引でやり取りしたデータは、電子帳簿保存法上そのままの形で保存する義務があります。紙に印刷して原本を捨てる運用はできません。
対象品目の考え方については、何が軽減対象で何が対象外かを整理した記事で詳しく解説しています。
ここまでレシートを推してきましたが、領収書のほうが必要な場面もあります。
- そもそもレシートが出ない/個人商店、手書きの請求など
- 相手が特定された取引/外注費、家賃、報酬など。宛名入りの書類が必要です
- 社内の精算規程で求められている/会社のルールが優先されます
- 金額が大きい取引/後から説明を求められる可能性が高くなります
品目を書くのが難しい場合でも、「食料品」「事務用品」程度の区分は書けるはずです。とくに軽減税率の対象が含まれる場合は、その旨の記載が必要になります。
ただし所得税法・法人税法上の保存義務は別にあります。また発行する側としては、取引先から求められれば対応が必要です。受け取る側では関係なくても、発行する側では影響を受けます。
→ 何を買ったかが分かること
→ 科目も税率も決められない
→ 情報が補い合う
領収書のほうが正式だと思われがちですが、帳簿を作る立場から見ると、内容が印字されたレシートのほうが役に立ちます。領収書を発行してもらう手間をかけた結果、かえって情報が減っていることも少なくありません。残すべきは、何を買ったかが分かるほうです。
「この支出はどの科目か」「税率が混ざったレシートをどう入力するか」——証憑を集めた後の作業でつまずく方は少なくありません。税理士事務所での実務経験をもとに、記帳の考え方や経理の整理についてお答えしています。
※個別の税額計算や申告書の作成は税理士業務のため承っておりません。記帳の考え方についてのご相談を承っています。

