円安162円台との「ダブルパンチ」。中小企業の値上げ交渉・資金繰りの備え方

円安162円台との「ダブルパンチ」。中小企業の値上げ交渉・資金繰りの備え方 日常業務
経理目線の経済ニュース解説

原油が一時4%超急騰
ホルムズ海峡のリスク再燃で何が変わる

円安162円台との「ダブルパンチ」。中小企業の値上げ交渉・資金繰りの備え方【2026年7月13日時点】

ホルムズ海峡 航行に懸念 原油先物 一時+4%超 WTI 74ドル台
2026年7月13日、米国とイランが大規模な攻撃の応酬を繰り広げ、イラン革命防衛隊が原油輸送の要衝ホルムズ海峡の再封鎖を宣言したと報じられました。これを受けてWTI原油先物は前週末比4%超上昇し、一時1バレル=74ドル台後半まで急騰。同時に円安も進行し、東京市場では一時1ドル=162円台まで円が売られ、日経平均株価も1000円超下落する場面がありました。この記事では、原油高と円安が同時に来る「ダブルパンチ」が中小企業・個人事業主のコストにどう波及するのか、経理・資金繰りの目線で整理します。
POINT01
何が起きたか(2026年7月13日時点)
米国・イランの攻撃応酬と、7月8日に続く「2度目」の海峡リスク

報道を整理すると、今回の急騰の背景は次の通りです。

直近の動き(2026年7月13日時点)
  • 米国とイランが週末にかけて大規模な攻撃を応酬。イラン革命防衛隊が、原油輸送の要衝ホルムズ海峡の航行が困難になるとの声明を出したと報じられている
  • WTI原油先物が前週末比4%超上昇し、一時1バレル=74ドル台後半。北海ブレント原油も一時70ドル台後半まで上昇した
  • 為替市場では円安が進行し、東京市場で一時1ドル=162円台。日経平均株価も一時1000円超下落する場面があった
⚠ 実は「今年2度目」の海峡リスク
同様の懸念は2026年7月8日にも一度発生しており、その際もトランプ米大統領がイラン攻撃を示唆したことで原油価格が急伸しています。今回はその緊張が収まらないまま再燃した形で、市場では「短期間での解決は難しいのでは」との見方も出ています。単発の一時的な値動きではなく、しばらく続く可能性を念頭に置いておくとよさそうです。
POINT02
なぜ「海峡の懸念」だけで原油が上がるのか
ホルムズ海峡とは何か。「懸念」段階でも価格が動く仕組み
世界の原油・LNG輸送 約20% が原油輸送の要衝 「ホルムズ海峡」を通過

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾と外洋をつなぐ幅の狭い海峡で、中東産の原油・LNG(液化天然ガス)を運ぶタンカーの大半がここを通ります。世界の原油輸送量のおよそ2割がこの海峡を経由するとされ、「石油の大動脈」とも呼ばれる要衝です。

ここで押さえておきたいのが、原油価格は「実際に供給が止まった量」ではなく「将来止まるかもしれないという懸念」だけでも動くという点です。原油先物市場は、今この瞬間の需給だけでなく、数週間〜数か月先のリスクを織り込んで値付けされます。だからこそ、実際にタンカーが1隻も止まっていない段階でも、「封鎖を宣言した」というニュースだけで価格が跳ね上がります。

✓ ガソリン代・電気代への反映にはタイムラグがある
原油先物が急騰しても、街のガソリンスタンドの価格や企業の電気代にすぐ反映されるわけではありません。原油の仕入れ・精製・流通には数週間〜1、2か月ほどのタイムラグがあるため、「ニュースが出た直後」ではなく「その後の請求書」で影響が見えてくることが多いです。慌てて対応するより、まずは動向を見ながら準備しておく姿勢で大丈夫です。
POINT03
円安162円との「ダブルパンチ」で何が起きるか
自社への影響はいつ、どこに出るのか

今回厄介なのは、原油高と円安が同時に進んでいる点です。原油はドル建てで取引されるため、①ドルベースの原油価格そのものが上がり、②円安でその価格を円に換算するときのレートも上がる、という二重の値上がりが起きます。輸入に頼る原材料・エネルギーほど影響が大きくなります。

影響が及びやすいコスト
  • 燃料費・電気代: ガソリン・軽油・灯油のほか、火力発電の燃料コストにも波及し、電気代の値上がりにつながりやすい
  • 物流費: 運送業者が請求する「燃料サーチャージ」(燃料費上昇分を運賃に上乗せする仕組み)の増額を通知されるケースが増える
  • 原材料費: 石油化学製品由来のプラスチック・梱包資材、化学繊維などのコストが上がりやすい
⚠ 「値上げ通知が来ていないから大丈夫」ではない
POINT02のタイムラグの通り、今日時点でまだ値上げ通知を受け取っていなくても、数か月後の請求書で反映されてくる可能性があります。資金繰り計画を立てる際は、「今の単価がこのまま続く」前提ではなく、「数か月後に上がるかもしれない」前提で余裕を見ておくと安心です。
POINT04
中小企業・個人事業主が今できること
価格転嫁の考え方と、資金繰りの備え方

コストの上昇そのものは止められませんが、備え方はいくつかあります。

今のうちにできること
  • 価格転嫁交渉の準備: 原材料費・燃料費の上昇は、取引先への価格転嫁を求める正当な理由になり得ます。「いつ・何が・どれだけ上がったか」を示す資料(仕入伝票や請求書)を整理しておくと交渉がスムーズです
  • 資金繰り計画の見直し: コスト増が資金繰りを圧迫する前に、必要な運転資金の見込みを再確認しておく
  • 借入コストとの複合影響も意識する: 金利が上昇局面にある場合、原油高・円安によるコスト増と借入負担の増加が同時に来ることもあります
✓ 関連する無料ツール・記事
価格転嫁の交渉に不安がある場合、2026年1月から下請法が「取適法」に変わり原価上昇分の価格協議が下請け側の権利になったことをまとめた「タダノの下請法違反ニュース解説記事」も参考になります。資金繰りに不安がある場合は「公的融資かんたんチェッカー」で使える制度の候補を確認できます。借入を検討する際の金利負担は「借入金利かんたんシミュレーター」で試算しておくと安心です。
まとめ: 「懸念」の段階でも備えは始められる
POINT 01
米国・イラン応酬
→ ホルムズ海峡再封鎖宣言で原油4%超急騰
POINT 02
ホルムズ海峡とは
→ 世界の原油輸送の約2割が通過。懸念だけで価格が動く
POINT 03
円安162円とのダブルパンチ
→ 燃料費・物流費・原材料費に波及
POINT 04
今できること
→ 価格転嫁の資料整理・資金繰り計画の見直し

原油・為替の動きは今後も変わる可能性があります。「実際に値上げ通知が来てから慌てる」のではなく、「懸念が出ている今のうちに」資料を整理し、資金繰りの余裕を確認しておくことが、落ち着いた対応につながります。

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この記事は、2026年7月13日時点の報道をもとに作成しています。原油価格・為替相場・国際情勢は流動的で、記事公開後に状況が変わる可能性があります。最新の価格動向は日本経済新聞などの報道でご確認ください。価格転嫁交渉や資金繰り、税務上の個別判断については、必ず専門家(税理士・中小企業診断士など)にご相談ください。
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