負債1000億円超・全東信が破産
20年続いたとされる粉飾決算から経理が学ぶこと
「大企業の不正」で終わらせない。巻き込まれるリスクと今できる備え
報道されている内容を整理すると、次のとおりです。
- 株式会社全東信(大阪市中央区)はクレジットカード決済代行会社。資本金は45億円
- 2026年7月6日、大阪地裁に準自己破産(会社自身ではなく取締役などが申し立てる破産)を申請し、同日破産手続き開始決定
- 負債総額は1000億円超。金融機関からの借入金が中心
- 実態は600億円超の債務超過(資産をすべて売っても借金を返しきれない状態)のおそれ
- 業績悪化を隠すため、多額の預金を架空計上する粉飾決算を少なくとも20年前から続けていた疑い
- 売上金が未入金のままの加盟店は2万店超。夜間営業の飲食店を中心に影響が広がっている
決済代行会社とは、お店に代わってクレジットカード会社との契約や売上金の受け渡しを仲介する会社のことです。つまりお客様が支払ったカード決済のお金は、一度この会社を経由してからお店に振り込まれます。その「経由地」が破産したため、お店側は「売上はあるのにお金が入ってこない」状態に陥っているわけです。
粉飾決算とは、会社の成績表である決算書の数字を、実態より良く見せかけることです。代表的な手口には次のようなものがあります。
- 売上の水増し: 架空の取引をでっち上げたり、翌期の売上を前倒しで計上する
- 費用・負債隠し: 本当は発生している費用や借金を帳簿に載せない
- 資産の架空計上: 存在しない在庫や預金を「あることに」して資産を膨らませる
全東信で報じられているのは3つ目、「預金の架空計上」です。実際には存在しないお金を帳簿の上では「預金がある」ことにして、業績悪化と債務超過を隠していたとされています。
【7月9日追記】東京商工リサーチの調査報道によると、粉飾の内訳として、預金残高の水増し約170億円、架空債権約154億円、実質的に無価値な営業権の過大計上約88億円などが挙げられています。帳簿上は約25億円の資産超過に見せかけていたものの、実質は約605億円の債務超過だったとされています。
では、なぜ20年も見抜かれなかったのでしょうか。「監査法人のチェックはなかったのか?」と疑問に思った方は鋭いです。会計監査人(監査法人や公認会計士)による監査は、実は上場企業だけの義務ではありません。資本金5億円以上または負債200億円以上の会社は、会社法上の「大会社」として非上場でも会計監査人の設置が義務付けられています。資本金45億円の全東信は、本来この監査を受けるべき会社にあたります。
それでも見抜かれなかったのはなぜか。実際に監査が行われていたのか、行われていたならなぜ機能しなかったのか——担当監査法人の有無や名前を含め、この記事の時点で確認できる公表情報は見当たらず、今後の調査報道が待たれます。なお一般論として、非上場の会社には、義務があるのに会計監査人を置かないまま放置されているケースが相当数あることが以前から指摘されています(違反しても過料という軽い制裁にとどまるためです)。上場企業と違って監査の有無が外から見えにくく、銀行も取引先も「提出された決算書」を前提に判断するしかない——そこが偽られていると、外部から見抜くのは非常に困難なのです。
今回の破産で実害を受けているのは、全東信を通じてカード決済を導入していた加盟店です。お客様はすでに支払いを済ませているのに、その売上金が経由地で止まったまま入金されない——キャッシュフロー(手元のお金の流れ)への直撃です。飲食店のように日銭でやりくりする商売ほど、ダメージは深刻になります。
経理の実務としては、次の2点を押さえておきましょう。
- カード売上は、入金前でも売上として計上済みのはず。入金されない分は「売掛金(または未収入金)が回収できない」状態として残る
- 回収の見込みがなくなった場合、要件を満たせば貸倒損失(回収不能になった債権を損失として処理すること)にできる可能性があるが、破産手続きの進み方によって処理できる時期・金額が変わる
「粉飾なんて大企業の話」と思われがちですが、実は中小企業の粉飾は珍しくありません。しかも多くは、悪意の自覚がないまま始まります。よくあるのは次のようなパターンです。
- 銀行融資の審査前に、在庫を実際より多めに計上して資産を膨らませる
- 赤字を避けるため、翌期の売上を今期に前倒しして計上する
- 今期の経費をあえて帳簿に載せず、翌期に回して利益を多く見せる
「1回だけ」「来期に業績が戻れば帳尻が合う」——そう思って始めた化粧は、POINT 02で見たとおり雪だるま式に膨らみます。しかも粉飾した決算書で融資を受けると、詐欺罪などに問われるリスクすらあります。良く見せた決算書は、その場をしのぐ代わりに、会社の本当の状態を経営者自身にも見えなくしてしまうのです。
→ 負債1000億円超・影響2万店超
→ 非上場は外部監査なしで発覚しにくい
→ 契約先と入金サイクルの把握を
→ 月次の正確な数字が最大の防御
今回の事件が教えてくれるのは、「立派な決算書」と「会社の実態」は別物だということ。取引先を見るときは決算書だけを鵜呑みにしない、そして自分の会社では化粧をしなくて済むように毎月の数字と向き合う。この2つが、経理にできる一番確実な備えです。
「うちの取引先は大丈夫?」と思った方は、この記事で紹介したサインをその場でチェックできる無料ツールを用意しています。倒産の予兆とされる15のサインの判定と、決算書の数字からの粉飾サインチェックが、登録不要で使えます。
「取引先の経営状態が不安」「毎月の記帳が追いつかず、数字の把握が決算直前になってしまう」——そんなお悩みのご相談も承っています。税理士事務所での実務経験をもとに、無理のない経理体制づくりをご提案します。
ココナラの出品サービスもありますので、そちらもご活用ください。
お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします 説得力や信頼性が高まる知識をあなたに。

