源泉徴収票の税務署提出
令和9年1月から不要に
市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署に源泉徴収票を出したものとみなされます。ただし、従業員への交付は今までどおりで、税理士報酬や退職金を払った会社には合計表が残ります。国税庁のQ&Aと手引の原文で、変わること・変わらないことを整理しました
この二重の提出が、令和9年(2027年)1月に出す分から、市区町村への1回で済むようになります。国税庁はこれを「源泉徴収票のみなし提出の特例」と呼んでいます。ただ、「源泉徴収票が要らなくなる」と聞いて、従業員に渡す分もなくなるのか、法定調書合計表はどうなるのかと迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、国税庁の特設ページ、Q&A(令和8年4月)、「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」の原文を確かめました。そのうえで、変わること・変わらないこと・合計表の扱い・e-Taxで出す義務の新しい基準を順に説明します。
- 根拠/国税庁の「源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ」「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(令和8年4月)「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」、タックスアンサーNo.7411・7421・7431・7441・7455・2674、地方税法の条文です。原文は国税庁の特設ページから、Q&Aとリーフレットを開けます
- いつ決まったか/令和5年度の税制改正で決まった制度です。令和9年1月1日以後に出す源泉徴収票(令和8年分以後)から適用されます。今年の年末調整が終わったあと、来年1月に出す分が最初です
- 扱う範囲/会社が従業員・役員に払う給与の源泉徴収票が中心です。公的年金等の源泉徴収票にも同じ特例がありますが、この記事では扱いません
② 従業員に渡す源泉徴収票は、今までどおり必要です。年末まで在籍した人には翌年1月31日まで(来年は2月1日まで)に、途中で辞めた人には退職の日以後1か月以内に渡します。
③ 合計表がなくなるのは、給与の源泉徴収票しか出さない会社だけです。顧問の税理士への報酬が年5万円を超える、個人の大家に家賃を年15万円を超えて払っている、2026年に退職金を払った、のどれかに当てはまる会社は、その法定調書と合計表を税務署に出します。
④ e-Taxなどで出す義務の基準が、100枚以上から30枚以上に下がります。給与支払報告書をeLTAXなどで出す義務は、2年前に税務署へ出すべきだった源泉徴収票の枚数を、改正前の範囲で数えて決めます。
⑤ 来年の期限は2月1日(月)です。1月31日が日曜日のため、税務署への法定調書も、市区町村への給与支払報告書も、従業員への源泉徴収票の交付も、翌日が期限になります。
これまで、給与を払う会社は、1人の従業員について同じ内容の書類を2か所に出していました。税務署には源泉徴収票、従業員が住む市区町村には給与支払報告書です。給与支払報告書は、市区町村が住民税を計算するために使う書類です。
令和9年1月からは、このうち市区町村への提出だけで済みます。国税庁の特設ページは、次のように説明しています。
国税庁のリーフレットは、この特例の目的を「事業者の提出事務の負担軽減」としています。市区町村に届いた給与支払報告書の内容は、データで税務署にも渡ります。Q&A(問1)には「市区町村に提出された支払報告書の内容については、市区町村において入力等を行った後、税務署にデータ連携されます」とあります。同じ内容の書類を、会社が2か所に出す必要がなくなったわけです。
Q&A(問13)は、支払報告書を出したあとに、税務署から「みなし提出」がされた旨の通知等が届くことはないとしています。そのうえで、次のように書いています。
eLTAX(地方税の電子申告の仕組み)で出した場合は、市区町村への提出が終わると、メッセージボックスに「申告受付完了通知」が届きます。提出できたかどうかは、この通知で確かめます。
対象は「令和9年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票」で、Q&A(問1)はこれを令和8年分以後の源泉徴収票のこととしています。今年(2026年)の給与について、来年1月に出す分が最初です。
- 2026年の途中で辞めた人/源泉徴収票は、法令上は退職の日以後1か月以内に税務署へ出すものです。ただし、運用上、翌年1月末までにほかの分とまとめて出してよいことになっています。来年1月以後にまとめて出すなら、特例の対象として扱って差し支えありません(Q&A問2)
- 令和7年分(2025年分)/特例の対象外です。出し忘れていた分や訂正は、これまでどおり税務署に出します(Q&A問10・問11。POINT 06で説明します)
「源泉徴収票の提出が不要に」と聞くと、源泉徴収票そのものがなくなるように感じます。なくなるのは会社が税務署に出す分だけです。次の2つは変わりません。
タックスアンサーNo.7411は、特例で給与支払報告書を出した場合でも、従業員への交付が必要だと明記しています。
令和8年分は、1月31日が日曜日のため、国税庁の手引は交付の期限を令和9年2月1日までとしています。「すべての受給者」には、日本の居住者である外国人の従業員も含まれます。書面のかわりに、電子データで渡すこともできます。ただし、あらかじめ本人の承諾を得るなどの要件があり、本人から求められたときは書面で渡します。
転職した人にとっても、何も変わりません。年の途中で入社した人の年末調整では、前の会社から受け取った源泉徴収票などで、前の会社の給与や天引きされた税額・社会保険料を確かめます(タックスアンサーNo.2674)。確かめられないときは年末調整ができず、本人が確定申告で精算することになります。辞めた人に源泉徴収票を渡す仕事は、これまでと同じように大切です。
特例は、市区町村に給与支払報告書を出したときに、税務署にも出したことにする一方通行の仕組みです。逆はありません。
給与支払報告書を出さなければ、特例も働きません。市区町村に出していないだけでなく、税務署に源泉徴収票を出していないのと同じ状態になります。
あわせて、税務署に出すべき源泉徴収票の範囲も変わりました。これまでは、年末調整をした人なら給与が年500万円を超える人(役員は150万円超)など、一部の人の分だけを出していました。令和8年分からは給与支払報告書と同じ範囲、つまり年の途中で辞めて給与が30万円以下だった人を除く全員分です(Q&A問7)。
給与支払報告書を出していれば、この全員分を税務署に出したことになります。改正前の範囲は、POINT 04の「30枚」の判定で使います。
基礎控除・給与所得控除・扶養の所得要件・生命保険料控除の新しい金額を、国税庁の原文で整理しています。
1月に税務署へ出す書類には、源泉徴収票などの法定調書(会社が税務署に出す支払の記録)と一緒に出す「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」があります。以下、合計表と書きます。
給与の源泉徴収票を税務署に出さなくなるなら、合計表も要らないように思えます。Q&A(問8)の答えは、会社によって分かれます。合計表は、次の6種類の法定調書をまとめて書く兼用の様式だからです。
- ① 給与所得の源泉徴収票
- ② 退職所得の源泉徴収票
- ③ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- ④ 不動産の使用料等の支払調書
- ⑤ 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- ⑥ 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
Q&Aは次のように答えています。文中の「当該合計表」は、この合計表のことです。
その際、当該合計表には実際に税務署に提出する法定調書について記載していただくことになり、税務署に提出しない給与所得の源泉徴収票に係る記載は不要となります。
つまり、②〜⑥を1枚も税務署に出さない会社だけ、合計表が要らなくなります。中小企業でよくあるのは、次の3つのケースです。
- 顧問の税理士・弁護士・司法書士などに報酬を払っている/同じ相手に年5万円を超えて払っていれば、③の報酬の支払調書を出します(タックスアンサーNo.7431)。相手が税理士法人などの法人で、源泉徴収をしていない場合も対象です
- 個人の大家に、事務所や倉庫などの家賃を払っている/会社(法人)が同じ相手に年15万円を超えて払っていれば、④の不動産の使用料等の支払調書を出します(タックスアンサーNo.7441)。大家が法人で、家賃だけを払っている場合は要りません(権利金・更新料などは対象です)。管理会社に払っていても、物件の持ち主が個人なら個人への支払として扱います(手引)
- 2026年に退職金を払った/令和8年分から、役員だけでなく退職金を払ったすべての人について、②の退職所得の源泉徴収票を税務署に出します。死亡退職の場合は、相続税法の別の調書を出すので対象外です(タックスアンサーNo.7421)
3つ目は、今年から変わった点です。国税庁の手引は、次のように書いています。
令和7年分までは、税務署に出すのは役員の分だけでした。社員の退職金しか払っていない会社は、②を出したことがないかもしれません。「給与だけだから合計表は要らない」と決める前に、2026年に退職金を払った人がいないかを確かめてください。税務署へは退職後1か月以内に出すのが原則ですが、その年の分をまとめて翌年1月31日までに出しても差し支えありません(タックスアンサーNo.7421)。令和8年分は、手引では令和9年2月1日までです。
合計表を出す場合も、給与所得の源泉徴収票の欄は書きません(Q&A問8)。報酬の支払調書だけを出すなら、合計表には報酬の支払調書の分だけを書きます。去年の控えを見ながら書くと、給与の欄まで埋めてしまいがちなので注意してください。
2026年9月に国税システム(国税庁の業務システム)が入れ替わり、書面で税務署に出す法定調書の様式も変わりました。手引は、書面で出す場合は国税庁のホームページから最新の様式をダウンロードして使うよう求めています。
お問い合わせ番号・年度の欄・A4の1枚ものの書き方を、国税庁の様式の画像つきで整理しています。
同じ令和9年1月から、もう1つ変わることがあります。法定調書を書面では出せず、e-Tax(国税の電子申告の仕組み)などで出さなければならない基準が下がります。
令和7年中に提出した法定調書の枚数が「30枚以上」であった方は、令和9年に提出する法定調書をe-Tax等により提出する必要があります。該当する法定調書は、書面での提出はできませんので、e-Tax等による提出のご準備をお願いします。
「e-Tax等」は、e-Tax、認定クラウド等(国税庁長官の認定を受けたクラウドサービス)、CD・DVDなどの光ディスク等のことです。判定は法定調書の種類ごとに行います。たとえば、令和7年1月に出すべきだった報酬の支払調書が30枚以上なら、令和9年1月に出す報酬の支払調書はe-Tax等で出します(タックスアンサーNo.7455)。
給与支払報告書にも、eLTAXか光ディスク等で出さなければならない義務があります(地方税法317条の6第5項)。この義務があるかどうかは、給与支払報告書の枚数ではなく、基準年(2年前)に税務署へ出すべきだった給与の源泉徴収票の枚数で決まります(Q&A問9)。
注意したいのは数え方です。Q&Aは、出す範囲が改正されたあとも、改正前の範囲で数えるとしています。
改正前の範囲は、次のとおりです(タックスアンサーNo.7411の注)。
- 年末調整をした役員/その年の給与が150万円を超える人
- 年末調整をした弁護士・税理士など(給与として払う場合)/250万円を超える人
- 年末調整をした、そのほかの人/500万円を超える人
- 扶養控除等申告書を出していて、年の途中で辞めた人など/250万円を超える人(役員は50万円を超える人)
- 給与が2,000万円を超えて、年末調整をしなかった人/全員
- 扶養控除等申告書を出していない人(乙欄・丙欄の人)/50万円を超える人
令和9年1月に出す給与支払報告書なら、基準年は令和7年です。令和7年中に税務署へ出すべきだった給与の源泉徴収票(多くは令和7年1月に出した令和6年分)を、上の範囲で数えて30枚以上なら、令和9年1月の給与支払報告書はeLTAXか光ディスク等で出します。従業員が30人以上いても、給与が500万円を超える人が少なければ、30枚に届かないことがあります。
令和9年からは、給与支払報告書を出せば、税務署に実際に出す給与の源泉徴収票は0枚になります。それでも、2年後の判定では0枚とは扱われません。
Q&Aの例では、令和9年に、給与600万円で年末調整をした人の給与支払報告書を20枚、給与40万円で乙欄の人の分を15枚出した会社は、改正前の範囲に入るのが前者の20枚だけなので、令和11年の電子提出の義務はありません。前者が50枚なら義務があります。「税務署に出していないから0枚」と数えないことが大切です。
給与支払報告書は、eLTAX・光ディスク等・書面のどれで出しても、税務署に源泉徴収票を出したものとみなされます(Q&A問4)。POINT 04の義務がある会社は、eLTAXか光ディスク等で出します。市区町村には、個人別の給与支払報告書と一緒に総括表(会社ごとの表紙にあたる書類)も出します(Q&A問8)。
これまでeLTAXには、源泉徴収票と給与支払報告書を一度に作って出せる機能がありました。この機能は、すでに終わっています。
給与の源泉徴収票は、給与支払報告書を出せば税務署に出さなくてよくなります。一方で、報酬の支払調書・退職所得の源泉徴収票・合計表は、これまでどおり税務署に出します。これらはe-Taxか書面で出し、e-Taxなら、ソフトを入れずに使える「e-Taxソフト(WEB版)」でも作れます(国税庁のe-Taxの案内)。
eLTAXで出した給与支払報告書は、令和9年2月以降、マイナポータル連携の対象になります(Q&A問14)。従業員がふるさと納税や医療費控除で確定申告をするとき、給与の情報が申告書に自動で入ります。国税庁のリーフレットによると、書面や光ディスク等で出した給与支払報告書は対象になりません。連携のため、マイナンバー・氏名(カナを含む)・住所・生年月日などに誤りがないよう、注意も呼びかけられています。
給与支払報告書の期限は1月31日です(地方税法317条の6第1項)。令和9年(2027年)の1月31日は日曜日なので、期限は翌日の2月1日(月)になります。期限が休日にあたるときは翌日を期限とみなす、という規定があるためです(地方税法20条の5第2項)。税務署に出す法定調書と合計表も、手引に「令和9年2月1日(月)までに所轄税務署に提出しなければなりません」とあります。手引は、給与支払報告書の期限と従業員への源泉徴収票の交付の期限も、令和9年2月1日としています。
- 12月/年末調整。源泉徴収票と給与支払報告書に書く金額は、ここで決まります
- 1月12日(火)/12月分の源泉所得税を納める(毎月納める会社)
- 1月20日(水)/7月〜12月分の源泉所得税を納める(納期の特例の会社)
- 2月1日(月)まで/従業員に源泉徴収票を渡す。市区町村へ、給与支払報告書と総括表を出す。税務署へ、給与以外の法定調書(報酬の支払調書・退職所得の源泉徴収票など)と合計表を出す。給与以外の法定調書がなければ、税務署に出すものはありません
給与支払報告書は、市区町村が従業員の住民税を計算するもとになります。年末調整が終わったら、2月1日を待たずに準備を始めると安心です。
出した給与支払報告書に誤りが見つかったら、市区町村に訂正した給与支払報告書を出すだけです。eLTAXで出した場合は、提出区分を「訂正」にして出し直します。光ディスク等や書面の場合は、訂正の方法が市区町村ごとに違うので、提出先に問い合わせます(Q&A問12)。
令和7年分(2025年分)は特例の対象外です。出し忘れに気づいたら、源泉徴収票は税務署に、給与支払報告書は市区町村に、それぞれ出します(Q&A問10)。誤りの訂正も、税務署には無効分と訂正分の源泉徴収票を出します。市区町村に出した給与支払報告書にも同じ誤りがあれば、訂正分を別に出します(Q&A問11)。
- NG「源泉徴収票は要らなくなった」と、従業員や退職者に渡すのもやめてしまう
- NG給与支払報告書を出したから合計表も不要と考え、税理士報酬の支払調書や退職所得の源泉徴収票を出さない
- NG税務署に源泉徴収票を出したから、市区町村への給与支払報告書は出さなくてよいと考える
- NG合計表に、税務署に出していない給与の源泉徴収票の分まで書く
- NG「みなし提出」で税務署に実際に出した枚数は0枚だから、30枚の基準には当たらないと数える
- NG令和7年分の出し忘れを、市区町村への給与支払報告書だけで済ませる
→ 給与支払報告書を出せば税務署分は不要
→ 退職者は退職後1か月以内
→ 税理士報酬・退職金があれば必要
→ 給与は改正前の範囲で数える
→ eLTAXの一元化機能は終了
→ 令和7年分は今までどおり税務署へ
自社が出す書類はどれか、合計表に何を書くのか、退職金や報酬の支払調書に漏れがないかなど、1月の段取りを整理したいときは、第三者に一度見てもらうと整理がつくことがあります。
お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします税理士事務所での実務経験をもとに、経理まわりのご相談をお受けしています。※具体的な税額の計算・申告書の作成・個別の税務判断は税理士業務のため承っておりません。
