消費税1%の対象品目
何が1%で、何が10%か
「食料品なのに1%にならないもの」が、判定ミスの温床になります
米・パン・麺類/野菜・果物・肉・魚/牛乳・卵・乳製品/調味料(塩・砂糖・醤油・味噌・みりん風調味料)/菓子・アイス/弁当・惣菜の持ち帰り/ミネラルウォーター/ノンアルコールビール・甘酒(アルコール1度未満)/food表示のある栄養補助食品
1%にならないもの(対象外・10%)
お酒(ビール・日本酒・本みりん・料理酒など、アルコール1度以上)/店内飲食(イートイン)・ケータリング/医薬品・医薬部外品(栄養ドリンクの一部)/水道水/ペットフード(人の飲用・食用でないため)/food以外の日用品
水道水が対象外なのは意外に思われますが、飲用の水と風呂・洗濯などの生活用水が混然一体で供給されるためです(ペットボトルに詰めて飲用として売る場合は対象)。ミネラルウォーターやウォーターサーバーの水は飲用に特定されているため対象という違いがあります。
迷いやすいのは「食品に見えるのに対象外」のグループです。本みりんは酒類なので対象外、みりん風調味料は対象——この分岐をPOINT 03で詳しく解説します。
閣議決定の原文で何が確定し、何がまだ決まっていないかは、食料品消費税1%が閣議決定|確定したことと未定のことで詳しく整理しています。
まず、なぜ今この仕分けを見直す必要があるのかからお話しします。
現行の軽減税率では、8%と10%の差は2%です。仮に商品の区分を間違えても、税額のズレは売上の2%相当にとどまります。ところが食料品が1%になると、1%と10%で差は9%になります。
現行(8%と10%):差は2%なので、税額のズレは約20万円
改正後(1%と10%):差は9%なので、税額のズレは約90万円
ミスの発生率が同じでも、金額のインパクトは4倍以上になります。これが、今のうちに商品マスタを見直しておくべき最大の理由です。
しかも、この差は売る側だけの問題ではありません。間違った税率で請求書(インボイス)を発行すると、それを受け取った取引先の仕入税額控除にも影響します。自社のミスが取引先にまで波及するという構造は、現行制度と同じですが、金額の重さだけが変わります。
「税率が下がるのだから、うちには関係ない」と考えるのは危険です。下がるからこそ、区分を間違えたときの差が開きます。
意外に思われるかもしれませんが、「これは食料品か」の判定は、消費税法だけを見ても答えが出ません。国税庁のタックスアンサーNo.6102は、軽減税率の対象を次のように定めています。
「食品表示法に規定する食品とは、人の飲用または食用に供されるものをいい、医薬品、医薬部外品および再生医療等製品が含まれず、食品衛生法に規定する添加物が含まれます」
ここから、判定に必要な3つのフィルターが導けます。
- フィルター1:人が飲み食いするものか → 人の飲用・食用に供されるものでなければ対象外(観賞用の熱帯魚や種もみがここで落ちます)
- フィルター2:医薬品・医薬部外品ではないか → 該当すれば「食品」ではないため対象外
- フィルター3:酒類ではないか → 酒税法上の酒類は明文で除外されています
この3つを通過して、はじめて「飲食料品」になります。そのうえで外食・ケータリングに当たらないかという場所の判定が加わる、という二段構えです。本記事では品目そのものに絞って進めます。
実務で迷いが集中するのは、次のような商品です。いずれも現行の軽減税率でも対象外とされているものです。
- 酒類:酒税法上の酒類は、アルコール分1度以上の飲料をいいます(酒税法第2条)。ビール・日本酒・ワインはもちろん、料理に使う本みりんも酒類に当たります
- 医薬品・医薬部外品:栄養ドリンクは、パッケージに「医薬部外品」と書かれているものが対象外になります。同じ棚に並んでいても、清涼飲料水に分類されるものは飲食料品側という分かれ方をします
- 水道水:飲用にも使いますが、風呂や洗濯などの生活用水と混然一体で供給されるため対象外です。ただし水道水をペットボトルに詰めて販売する場合は飲食料品になります(ミネラルウォーターも飲食料品)
- 賞味期限切れの食品を廃棄するために譲渡する場合:人の飲用・食用に供するものとして譲渡していないため対象外です
逆に、意外にも対象になるものもあります。国税庁のQ&A(個別事例編)が明示的に「対象となる」としている例です。
- 食品添加物:食品衛生法の添加物は食品に含まれます。食用の金箔や食品添加物の重曹も対象。売り先が化粧品メーカーであっても、添加物を「食品」として販売するなら対象です
- 食品添加物として販売される消毒・除菌用のアルコール製剤:厨房などで食品に直接噴霧できるタイプのアルコール製剤には、食品衛生法の添加物として販売されているものがあり、その場合は軽減税率の対象になります。購入者が手指の消毒に使ったとしても、判定は販売時点で行うため税率は変わりません
- ノンアルコールビール・甘酒:アルコール分1度未満なら酒類に当たらないため対象
- 料理酒などの発酵調味料:アルコール分が1度以上でも、塩を加えて飲用できないようにしたものは酒類に当たらず対象になります
- 日本酒の原料となる米:米そのものは酒類ではないため対象。一方で「食品の原材料になるワイン」は酒類なので対象外です
- 食用の活魚:対象になります。ただし観賞用の熱帯魚は対象外。同じ生きた魚でも用途で分かれます
医薬品・医薬部外品として販売される消毒用アルコール → 食品に該当せず10%
雑貨として販売される除菌スプレー → 食品ではないので10%
食品衛生法の添加物として販売されるアルコール製剤 → 食品に該当し軽減税率(8%)
仕入れる側の経理としては、用途や見た目で判断せず、請求書・レシートに表示された税率と、メーカーが公表している販売区分(食品添加物か医薬部外品か)で確認するのが確実です。同じ売場・同じ用途の商品で税率が混在し得る、区分経理の落とし穴です。
もうひとつ、食器や容器そのものは食品ではありません。ただし包装材料や容器が「その販売に付帯して通常必要なもの」として使われている場合は、容器も含めて飲食料品の譲渡になります。判断が分かれるのはここからで、次のPOINTの「一体資産」につながります。
本みりんはアルコール分が1度以上あるため酒税法上の酒類に当たり、軽減税率の対象外です。一方、みりん風調味料はアルコール分が1度未満で酒類に当たらないため、飲食料品として軽減税率の対象になります。
見た目も売場も似ていますが、税率は別です。改正後はこの差が9%になります。同じ理屈で、ノンアルコールビール(アルコール分1度未満)は飲食料品側、甘酒も製品によって分かれます。
注意していただきたいのは、これらは「食品かどうか」を商品名や売場で判断していないという点です。判断の根拠は、酒税法上の酒類に当たるか、医薬部外品として承認されているか、という他の法律上の区分にあります。迷ったら商品パッケージの表示を見るのが最も確実です。
おもちゃ付きのお菓子、カード付きのお菓子、紅茶とティーカップのセット、食品と雑貨が入った福袋——こうした食品と食品以外があらかじめ一体になっていて、ひとつの価格だけが表示されているものを「一体資産」といいます。
国税庁No.6102は、一体資産の扱いを次のように定めています。
ポイントは「全体が」という部分です。食品部分だけを取り出して軽減税率にするのではなく、セット全体がまとめてどちらかに倒れます。
- 両方の条件を満たす → セット全体が1%側(改正後)
- 税抜1万円を超える → 食品が大半でも、全体が10%
- 食品の割合が3分の2未満 → 全体が10%
- そもそも価格が食品と食品以外で別々に表示されている → 一体資産ではなく、それぞれの税率で判定
お中元・お歳暮など高額なギフト商材を扱う事業者は、価格設定そのものが税率をまたぐことになります。商品企画の段階で意識しておく価値があります。
ここからが本題です。国税庁のQ&A(個別事例編)には、判断に迷う具体例が並んでいます。結論が直感と食い違うものが多いので、代表的なものを見ていきます。
- おもちゃ付きのお菓子(食玩) → 1万円以下かつ食品3分の2以上なら全体が対象。典型的な一体資産です
- キャラクターを印刷した缶箱入りのお菓子 → 全体が対象。缶が再利用できても、通常は「販売に付帯して必要な包装」と見るため一体資産にはなりません
- 桐の箱入りの食品 → 箱に商品名を直接印刷するなど、その食品を販売するためだけに使うことが明らかなら全体が対象
- 高価な専用容器に盛り付けた洋菓子 → 全体が10%。容器が菓子より高価だと、食品3分の2の要件を満たしません
- 食品と雑貨が入った福袋 → 1万円以下かつ食品3分の2以上なら全体が対象
- 非売品のおもちゃ付きペットボトル飲料 → おもちゃが非売品で、付いていなくても価格が変わらないなら、おもちゃは0円と評価でき全体が対象
包装材料等がその形状や販売方法から見て、装飾品・小物入れ・玩具など「他の用途に再利用させることを前提」として付けられている場合は、通常必要な包装には当たらず、その商品は一体資産に該当するとされています。
つまり「缶だから対象」ではなく、その缶が何のために付いているかで結論が変わります。貯金箱型の缶に入ったお菓子などは、判断が分かれやすい商品です。
この「食品3分の2以上」の要件が実際にどう効くのか、メーカー自身が公表している実例があります。カルビーの「プロ野球チップス」(カード付きポテトチップス)です。
「食品部分の値段が、全体の2/3未満であると、軽減税率が適用されません。そのため、この商品の消費税は10%となります」
おまけの選手カードの価値が大きいため、食品3分の2以上の要件を満たさず、ポテトチップス部分も含めて全体が10%になっているということです。同じ棚に並ぶ普通のポテトチップスは8%なので、見た目がほぼ同じ商品で税率が分かれています。
改正後にこの区分が維持されれば、この差は1%と10%、つまり9%の差になります。「お菓子だから軽減税率」という思い込みがいちばん危ない、ということを示す好例です。
おもちゃ付きの食玩は要件を満たせば全体が軽減税率、カードの価値が大きいプロ野球チップスは全体が10%——「おまけ付きのお菓子」というくくりでは判定できず、中身の価格構成で結論が逆になるのが一体資産の怖さです。
では、おまけを商品と一体にせず、レジで別に渡す売り方ならどうでしょうか。ここでも結論が変わります。
「あらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの」は物理的に一体である必要はなく、陳列棚に表示したうえでレジで引き渡すものも含まれます。ただし設問のように複数の中から無作為に選んで渡す場合は「あらかじめ一の資産を形成」していないため、一体資産には当たらず「一括譲渡」になります。
もっとも結論としては、ステッカーが非売品でおにぎりの価格も変わらないため、ステッカーの売価を0円として全体が軽減税率の対象となります。
ここで押さえておきたいのは、「一体資産に当たるかどうか」と「結局どちらの税率か」は別の問題だということです。一体資産に当たらなくても、おまけの価値が0円と評価できるなら全体が軽減税率になります。
逆に、顧客がセットの中身を選べる場合は一体資産になりません。お菓子・ドリンク・おもちゃのセットで中身を選べるなら「一括譲渡」となり、おもちゃの部分だけを合理的にあん分して10%で計算する必要があります。ただし国税庁は、選べる組み合わせのパターンを提示してそれぞれに価格を付けている場合は一体資産に当たるとも注記しています。
もうひとつ実務で使えるのが、ビールと惣菜をセットで一括値引きするようなケースです。これは元々別々の商品なので一体資産にはならず、値引き額を売価の比率であん分して税率ごとに区分します。惣菜は軽減税率、ビールは酒類なので対象外という組み合わせは、改正後に9%の差を生みます。
自分で3分の2の計算をする必要があるのは、セットを組む側(製造・卸)です。小売側は仕入税率をそのまま使えるため、負担はかなり軽くなります。
なお「食品の価額の占める割合」は、売価または原価をもとにした合理的な方法で計算します。国税庁の例では、紅茶450円・ティーカップ200円の仕入れで450÷650≒69.2%となり3分の2以上を満たす、という計算が示されています。66.666…%ちょうどでも要件を満たす点も例示されています。
注意点として、食品と食品以外の仕入れに共通してかかった配送料などを、食品の原価にだけ上乗せして計算するのは合理的とはいえないとされています。割合を有利に見せる計算は認められないということです。セット商品を扱う場合は、この計算根拠を残しておくと後から説明を求められたときに困りません。
ここまでは「1%になるかもしれない話」でしたが、すでに確定して施行されている改正もあります。老人ホームや学校給食などの飲食料品の提供に関する金額基準です。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・義務教育諸学校・幼稚園・特別支援学校などの特定の施設で行う一定金額以下の飲食料品の提供は、軽減税率の対象とされています。この「一定金額」の上限が、2026年6月1日から引き上げられました。
- 2026年6月1日から → 一食730円以下、一日累計2,190円まで
- 2025年4月から → 一食690円以下、一日累計2,070円まで
- 2024年6月から → 一食670円以下、一日累計2,010円まで
- 制度開始(2019年10月)当初 → 一食640円以下、一日累計1,920円まで
また、学校給食について「児童または生徒の全てに対して提供するもの」という要件がありますが、アレルギーなどの個別事情で全員に提供できなかったとしても、軽減税率の対象となるとされています。実務上ありがたい注記です。
金額基準は「同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額(税抜)」で判定します。一食ごとの単価だけでなく、一日の累計にも上限がある点に注意してください。給食費の改定を検討している施設は、この基準をまたぐかどうかで税率が変わります。
なお、これらの施設の給食が今後1%の対象になるのかどうかは、現時点では不明です。対象品目の線引き自体が確定していないためです。
対象品目の範囲が確定していない以上、細かい設定作業は今やっても手戻りになります。しかし、確定を待たずに進められる作業があります。
- 商品マスタに税率区分が正しく入っているかの点検 → 現行の8%/10%の区分が正確なら、その土台はそのまま使えます。いまズレているなら、改正後は9%のズレになります
- 境界品目の洗い出し → 本みりん・医薬部外品の栄養ドリンクなど、自社に「食品売場にある10%商品」があるかをリスト化しておく
- セット商品・ギフト商材の把握 → 一体資産に当たるものがあれば、税抜1万円と食品3分の2の判定根拠を整理しておく。おまけ・販促品の付け方(あらかじめ一体か、レジで無作為に渡すか)でも結論が変わります
- 給食を提供している施設は、金額基準の確認 → こちらは推測ではなく確定済みの改正なので、いま対応が必要です
仮に対象範囲に修正が入れば、どの商品がどちら側かの再判定が必要になります。ここが決まらないうちにシステムの設定作業を進めるのは、待つのが賢明です。いま価値があるのは、設定の変更ではなく現状の棚卸しです。
逆に言えば、現行の区分が正しく整備されている事業者ほど、改正時の作業は軽くなります。今回の改正を、放置してきた商品マスタを整理する機会として使うのが、いちばん無駄のない進め方です。
食料品が1%になるという話は、一見すると「消費者が得をする」ニュースです。しかし事業者側から見ると、本質は税率の複数化がさらに進むことにあります。1%・10%、そして経過措置が絡めばさらに複雑になります。
そして、税率の幅が広がるほど、区分を間違えたときの傷は深くなります。制度の詳細が固まるのを待つ間にできる最善の準備は、新しい設定を先取りすることではなく、いま持っている商品マスタが現行ルールに照らして正しいかを確かめておくことです。土台が正確なら、税率の数字が変わっても対応は最小限で済みます。
「この商品は1%側なのか」「セット商品の判定に自信がない」「給食の金額基準に引っかかっていないか」——境界にある商品ほど、判断には根拠が必要です。自社の商品構成に即して、どこにリスクがあるかを税理士事務所の実務目線で一緒に整理します。

