新リース会計基準
中小企業は変わる?
2027年4月から始まる新しいルールが自社のリースに関係あるのかを、国税庁の資料と中小企業向けの会計ルールで確かめます
ただ、中小企業の経理担当や社長が知りたいのは、「うちも毎月のリース料の処理を変えないといけないのか」という一点ではないでしょうか。
この記事では、国税庁の改正資料、中小企業向けの2つの会計ルール(中小指針と中小会計要領)、法人税法・会社法の条文、消費税の通達を確かめました。そのうえで、中小企業が変えなくてよいことと、確認しておくことを整理します。
- 公表/新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)は、企業会計基準委員会が2024年9月に公表しました
- 始まる時期/2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首から、前倒しで使うこと(早期適用)も認められています。3月決算の会社なら、2027年4月に始まる事業年度(2028年3月期)からです
- 対象/主に、上場企業や公認会計士の監査を受ける会社です。この記事は、それ以外の中小企業に向けた内容です
- 扱う範囲/リースで物を借りる側(借手)の処理です。リース会社など貸す側の処理は扱いません
② ただし「中小企業」に入らない会社があります。上場企業など(金融商品取引法の適用を受ける会社)とその子会社・関連会社、会計監査人を置いている会社とその子会社は、中小指針の対象外です。資本金5億円以上か負債の合計が200億円以上の株式会社(大会社)は、会社法で会計監査人を置く義務があります。
③ 税金の処理も、新基準を使わない中小企業は大きく変わりません。ファイナンス・リースのリース料を毎月経費にした金額は、法人税では減価償却費として扱われます(法人税法施行令131条の2第3項)。オペレーティング・リースの支払いは、今までどおり賃借料として経費になります。消費税も、支払いのつど控除する方法が通達で認められています。
今までのルール(旧基準。企業会計基準第13号)では、リースは大きく2つに分かれていました。
- ファイナンス・リース/途中で解約できず、実質的に「お金を借りて物を買った」のと同じ契約。売買と同じように、資産と負債を貸借対照表に載せます(売買処理)
- オペレーティング・リース/それ以外のリース。毎月の支払いを費用にします(賃貸借処理)
新しい基準では、借りる側についてこの2つの区分をやめます。国税庁の資料は、新基準の内容を次のように説明しています。
聞き慣れない言葉が2つ出てきます。
- 使用権資産/借りた物を「一定の期間使える権利」を、資産として載せたもの
- リース負債/これから払うリース料を、負債(借金と同じ扱い)として載せたもの
費用の出し方も変わります。毎月のリース料をそのまま費用にするのではなく、使用権資産の減価償却費と、リース負債にかかる利息に分けて費用にします。今まで費用処理だけで済んでいたオペレーティング・リースも、原則として貸借対照表に載ることになります。
なお、リース事業協会(リース会社の業界団体)の資料によると、期間の短いリースや少額のリースには、今までどおり費用処理できる簡便な扱いが用意されています。
POINT 01の変更は、中小企業にもそのまま及ぶのか。国税庁の資料は、新基準の説明の下に次の注を付けています。
原文は国税庁のPDFの「リースに関する会計基準の公表」の項で確認できます。
ここに出てくる2つのルールは、どちらも中小企業のための会計の決まりです。
- 中小企業の会計に関する指針(中小指針)/日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体が作っています
- 中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)/中小指針よりも簡単な会計を想定したルールです。中小企業庁のサイトで公開されています
そして、どちらのルールにも、新基準に合わせたリースの見直しは入っていません。中小指針は2025年9月29日に修正版が公表されましたが、4団体の発表によると、修正は「項番号の修正や関係法令の更新等に伴う所要の変更のみ」です。修正点にリースの項目は挙がっておらず、修正版のリースの項目の参照先には、今も旧基準(企業会計基準第13号)が載っています。
国税庁の資料の書き方は「則った会計処理も可能」です。中小企業が新基準を自分から選んで使うことも妨げられていません。中小会計要領も、「金融商品取引法における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(中略)や中小指針に基づいて計算書類等を作成することを妨げない」と書いています。上場企業などが使う会計の基準(企業会計基準)で決算書を作ってもよい、という意味です。
つまり中小企業は、今までどおりの処理を続けるか、新基準を使うかを選べます。ただし、新基準を選ぶと法人税の申告での調整が増えます(POINT 05)。決める前に顧問の税理士に相談しておくと安心です。
国税庁の資料は「監査対象法人以外」と書いています。どこまでが「中小企業」かは、中小指針の対象の項目に書かれています。
(1) 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
(2) 会計監査人を設置する会社(大会社以外で任意で会計監査人を設置する株式会社を含む。)及びその子会社」
理由として、これらの会社は公認会計士または監査法人の監査を受け、会計基準にもとづいて計算書類を作るためだと説明されています。
(1)の「金融商品取引法の適用を受ける会社」は、上場企業などが代表例です。(2)の会計監査人は、会社の決算書を監査する公認会計士・監査法人のことです。
会社法は、大会社に会計監査人を置くよう義務付けています(328条など)。大会社の定義は会社法2条6号にあり、次のどちらかに当てはまる株式会社です。
- 最終事業年度の貸借対照表の資本金が5億円以上
- 最終事業年度の貸借対照表の負債の合計が200億円以上
大会社は会計監査人を置くので、中小指針の(2)に当たり、対象から外れます。大会社でなくても、任意で会計監査人を置いている会社や、会計監査人を置いている会社の子会社も対象外です。
- 上場企業など(金融商品取引法の適用を受ける会社)、またはその子会社・関連会社 → 中小指針の対象外
- 会計監査人を置いている(任意で置いている場合も含む) → 対象外
- 会計監査人を置いている会社の子会社 → 対象外
- 資本金5億円以上、または負債の合計200億円以上 → 大会社で会計監査人を置く義務があるため対象外
- どれにも当たらない → 中小指針・中小会計要領を使って、今までどおりの処理を続けられます
中小会計要領も、利用が想定される会社から「金融商品取引法の規制の適用対象会社」と「会社法上の会計監査人設置会社」を除いています。こちらの文言には子会社が挙がっていません。親会社が上場企業や会計監査人を置く会社の場合は、まず親会社の経理部門に、グループとしてどの基準で決算を作るかを確認してください。
なお、株式会社以外について、中小指針は特例有限会社・合名会社・合資会社・合同会社にも中小指針に拠ることを勧めています。中小会計要領も、これらの会社が利用できるとしています。
「続けられる」今の処理とは、どういうものか。中小指針と中小会計要領では、書き方が少し違います。
注記については、「重要性がないリース取引については、注記を省略することができる」とも書かれています。
解説では、賃貸借の処理をした場合、将来払う金額が貸借対照表に載らないため、金額が大きいものは期末の未経過のリース料を注記することが望ましいとしています。
「所有権移転外ファイナンス・リース」は、リース期間が終わっても物件が自社のものにならないファイナンス・リースです。中小指針が賃貸借の処理を認めているのは、このタイプに限られます。中小指針では、物件が最後に自社のものになる契約(所有権移転ファイナンス・リース)は、売買の処理になります。
一方、中小会計要領は、所有権が移るかどうかで分けていません。リース取引について、賃貸借と売買のどちらの処理も認める書き方です。
毎月のリース料を費用にする賃貸借の処理では、仕訳は次のようになります。たとえば、コピー機を月額22,000円(税込・消費税10%)でリースし、税抜経理をしている場合です。
・賃借料(リース料)/20,000円
・仮払消費税等/2,000円
貸方
・普通預金/22,000円
勘定科目の名前は「賃借料」「支払リース料」「リース料」など、会社によって違います。毎期同じ科目を使えば問題ありません。
未経過リース料は、決算日の時点でまだ払っていない残りのリース料の合計です。たとえば、月額2万円・60回払いの契約で、決算日までに24回払っていれば、残りは36回です。未経過リース料は36回×2万円=72万円になります。
中小指針には、決算書の注記(個別注記表)の書き方の例も載っています。
なお、未経過リース料総額は、×××千円であります。」
前期の決算書にこの注記があれば、その会社は賃貸借の処理をしています。新基準が始まっても、この書き方を変える必要はありません。
会社法の決算書のルール(会社計算規則98条2項1号)では、公開会社でなく、会計監査人も置いていない株式会社は、「リースに関する注記」を省略できます。公開会社でない会社とは、すべての株式について、譲渡に会社の承認が必要だと定款で決めている会社です。中小企業の多くはこの形です。
未経過リース料の注記を求めているのは中小指針で、それも重要性がなければ省略できます。中小会計要領は、金額的に重要性があるものについて注記が「望ましい」という書き方です。そのため、賃貸借の処理をしていても、決算書にこの注記がないことがあります。注記がないからといって、売買の処理をしているとは限りません。
新基準に合わせて、令和7年度の税制改正でリースの税金のルールも見直されました。ただし、リース事業協会の資料は「新リース会計基準を適用しない中小企業等は、税制改正の影響は原則ありません」と整理しています。ここでは、その理由を条文で確かめます。
実は法人税法では、途中で解約できず、物件の代金をほぼ全額払う契約を「リース取引」と呼び、所有権が移らないものも含めてすべて「売買」として扱います(法人税法64条の2)。会計でいうファイナンス・リースにあたる契約です。中小指針にも「法人税法上は、すべての所有権移転外リース取引は売買として取り扱われる」と書かれています。
オペレーティング・リースは、この「リース取引」に入りません。後で説明する法人税法53条で扱います。
ファイナンス・リースが売買として扱われるのに、毎月のリース料を経費にする処理で問題にならないのは、法人税法施行令に次の規定があるからです。
つまり、リース料として経費にした金額は、法人税では減価償却費として処理したものとして扱われます。リース事業協会の資料によると、令和7年度の改正で、この規定の「賃借料」という言葉が「賃借料その他当該リース資産を賃借するために支出した費用」に広げられました。
ただし、扱いはあくまで「減価償却費」なので、法人税で経費にできる上限(償却限度額)があります。所有権移転外のリースでは、リース料の総額をリース期間で均等に割った額が上限です(リース期間定額法)。毎月同じ額を払う一般的な契約なら、経費にしたリース料と上限が一致するので、申告での調整はいりません。
一方、初回の支払いが多い、ボーナス月に上乗せがあるなど、支払額が毎期一定でない契約では、経費にした額と上限がずれるため、申告で調整が必要になります。中小会計要領の手引きも、この点を注意点として挙げています。また、物件が最後に自社のものになる契約は、税務では自社で買った資産と同じ方法で償却します(国税庁の資料)。そのため、賃貸借の処理をすると調整が必要になることがあります。
令和7年度の改正では、法人税法53条が新しく作られました。リース取引に当たらない賃貸借(オペレーティング・リースなど)で支払う金額は、その事業年度に債務が確定した分を損金(税金の計算上の経費)にする、という規定です。
新基準を使う会社は、会計では使用権資産の減価償却費と利息を費用にします。それでも税金の計算では、今までどおり支払う賃借料で考える、という意味の規定です。リース事業協会の資料は、新基準を使う会社がオペレーティング・リースを借りる場合、基本的に申告での調整が必要になるとしています。中小企業が新基準を選ぶ場合の注意点は、ここです。
消費税では、法人税で売買として扱うリース(ファイナンス・リース)は、物を受け取ったときにリース料の総額分をまとめて控除するのが原則です。オペレーティング・リースは、もともと毎月の支払いごとに控除します。ファイナンス・リースについては、消費税法基本通達に、賃貸借の処理をしている会社向けの例外が書かれています。
所有権移転外のリースで毎月のリース料を経費にしている会社は、消費税も毎月の支払い分ずつ控除する方法をとれます。
中小企業は、2027年4月に向けて処理を変える必要はありません。それでも、次の点は今のうちに確かめておくと、決算や問い合わせのときに慌てずに済みます。
- 自社の立ち位置/上場企業のグループか、会計監査人を置いているか、大会社の基準(資本金5億円・負債200億円)に当たらないか(POINT 03)
- 今の会計の方針/前期の貸借対照表に「リース資産」「リース債務」があるか。リース契約があるのに載っていなければ、賃貸借の処理をしていると考えられます(注記がない会社もあるので、注記だけで判断しない)
- リース契約の一覧/契約日・月額・支払回数・残りの回数・最後に自社のものになるか・残価保証があるか
- 未経過リース料/賃貸借の処理をしているなら、決算日時点の残りのリース料を計算できるようにしておく
- これからの予定/上場の準備、会計監査人を置く予定、上場企業の子会社になる予定(買収・合併など)があれば、中小指針の対象から外れるため、新基準の準備が必要か早めに相談する
- NG「2027年からすべての会社が対象」と思い込み、慌てて会計の方針を変える
- NG法人税の申告での調整が増えることを確かめないまま、新基準を自分から使うと決める
- NG親会社が上場企業なのに、グループの方針を確かめずに中小企業向けのルールで決算を作り続ける
- NG賃貸借の処理をしているのに、未経過リース料の注記が要るかを確かめずに決算書を作る
リースの契約書は、取引の書類として法人税法で7年、会社法で10年(株式会社は432条、合同会社などは615条)保存する書類です。契約の一覧を作るときに、契約書の保管場所もあわせて確かめておくと安心です。
法人税法の7年と会社法の10年、取引の書類をどちらで管理するかを整理しています。
→ リースを原則すべて資産・負債に
→ 中小指針・中小会計要領で続けられる
→ 中小指針の対象外
→ 未経過リース料の注記を確認
→ 法人税では減価償却費の扱い
→ 立ち位置と契約の一覧を確認
自社が中小企業向けのルールを使えるのか、今の処理や注記がこのままでよいのか。リース契約の一覧を作ってみて判断がつかないときは、第三者に一度見てもらうと整理がつくことがあります。
お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします税理士事務所での実務経験をもとに、経理まわりのご相談をお受けしています。※具体的な税額の計算・申告書の作成・個別の税務判断は税理士業務のため承っておりません。
会計の方針の選び方や、新リース会計基準を使うかどうかは、会社の状況によって異なります。個別の判断は、顧問の税理士・公認会計士にご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。
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