消費税1%のレジ対応
今すぐ買い替えるべきか
補助金は動き出しました。ただし対象になる製品は決まっています
支援策については状況が変わりました。同じ2026年9月15日、中小企業庁が「デジタル化・AI導入補助金」の事前着手制度を公表しています。これにより、9月15日以降にレジの導入・改修を行い、あとから補助金を申請することができるようになりました。本記事のPOINT02は、当初「支援策の内容が固まるまで発注を待つ」という結論でしたが、この公表を受けて内容を見直しています。ただし対象期間・申請受付期間はいずれも中小企業庁の資料に「調整中」と記載されており、公募要領は後日公表とされています。税率・対象範囲・期間・開始時期は今後変更される可能性があります(期間の延長や制度の見直しを含みます)。
閣議決定の原文で何が確定し、何がまだ決まっていないかは、食料品消費税1%が閣議決定|確定したことと未定のことで詳しく整理しています。
「消費税が変わる=レジを買い替える」ではありません。いま使っているレジの種類によって、必要な作業はまるで違います。まずはここを切り分けてください。
- クラウド型のPOSレジ・タブレットレジ → 多くの場合、税率設定の数値を変えるだけ。メーカー側が自動でアップデートを配信するケースもあり、買い替えは通常不要
- 据置型のレジで、メーカーのサポートが続いているもの → 設定変更または業者による改修で対応できることが多い。ただし訪問の予約が必要になる
- 古い機械式・電子式のレジ(いわゆるガチャレジ) → 税率区分を増やせない機種があり、買い替えが必要になる可能性がある。ここが本当に急ぐべき層
- サポートがすでに終了している機種 → 改修を受けられない場合があるため、早めにメーカーへ確認が必要
0%にすると、これまで存在しなかった税率区分そのものを新設する必要が出てきます。一方1%なら、多くのレジはすでにある「8%」の設定値を「1%」に書き換えるだけで足ります。あなたの店のレジも、この「書き換えるだけ」に該当する可能性が十分あります。
最初にやるべきことは、レジを買うことではなく、メーカーまたは購入した販売店に「この機種は税率変更に対応できますか」と1本問い合わせることです。これだけで、必要な予算が数十万円変わることがあります。
ここは2026年9月15日に前提が変わった部分です。もともと本記事は「支援策の中身が分からないので発注を待つ」という結論でしたが、その理由がなくなりました。
同日、中小企業庁が「変化の時代に対応できるスマートレジの導入支援(事前着手制度)」を公表しました。使われるのは「デジタル化・AI導入補助金」(正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金。旧・IT導入補助金)です。
事前着手制度は、この原則に対する特例です。中小企業庁の資料には、事業者が「9月15日以降、事前に補助対象となるスマートレジの導入やPOSレジの改修等を行っていただき、事後に補助金を申請することができる」制度だと書かれています。つまり、発注を止めておく理由がなくなりました。
支援は2つの類型に分かれています。自分の店がどちらに当たるかで、対象になる経費が変わります。
- スマートレジ類型/従来型のレジから、スマートレジ(タブレットやスマートフォンなどの汎用端末に入れて使うレジ)へ切り替える場合
- POSレジ類型/いま使っているPOSレジ等を改修して、新しい税率に対応させる場合
補助率と上限額は、中小企業庁の資料に次のように示されています。ソフトウェアは、対象となる機能(「会計」「受発注」「決済」)が1つなら50万円まで、2つ以上なら350万円までが上限です。補助率は50万円以下の部分が3/4(小規模事業者は4/5)、50万円を超え350万円までの部分が2/3とされています。
- ソフトウェア/レジシステムの購入費・クラウド利用料、受発注システム・請求書管理システムの改修費など → 1機能なら〜50万円、2機能以上なら〜350万円
- 役務/導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート → ソフトウェアと同じ枠で扱われます
- ハードウェア/スマートレジ類型はPC・タブレット購入費、POSレジ類型はレジ購入費 → いずれも〜20万円・補助率1/2
資料には、補助額の目安として「中小企業者 最大350万円(3/4補助)」「小規模事業者 最大350万円(4/5補助)」と示されています。中堅企業も一部対象とされており、小規模事業者だけの制度ではありません。
注意したいのは、ハードウェアだけ補助率も上限額も別枠だという点です。レジ本体やタブレットの購入費は20万円・1/2までしか出ません。金額が大きくなるのはソフトウェアと役務のほうなので、「レジ本体でいくら戻るか」だけを見て判断しないでください。
つまり登録されていない製品を買うと、事前着手制度を使っても対象になりません。発注前に、その製品が事務局に登録されているかを販売店・メーカーに確認してください。ここが今いちばん間違えやすいところです。
あわせて、改修費や役務費については複数見積もりが必要になる場合があるとされています。1社だけの見積もりで進めないでください。
経理の実務でいえば、レジを買った月の証憑をひとまとめにして別ファイルにしておくのが確実です。あとから探すと、たいてい見積書だけが見つかりません。
スケジュールは、中小企業庁の資料で次のように示されています。ただし、どちらにも「調整中」と付記されています。
- 対象期間/2026年9月15日 〜 2027年3月(調整中)
- 申請受付期間/2027年1月 〜 2027年3月(調整中)
この記事に書いた金額・期間も、公募要領で変わる可能性があります。実際に申請するときは、必ず下記の事務局ページで最新の要領を確認してください。
制度の詳細は、公的機関のページで直接確認できます。
- 中小企業庁「変化の時代に対応できるスマートレジの導入支援(事前着手制度)」(2026年9月15日公表)
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金(消費税率引き下げ対策)」(PDF/補助率・上限額・スケジュールの原典)
- デジタル化・AI導入補助金 事務局「スマートレジ導入支援」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
では、いま何をすればいいのか。順番はこうです。
- 1. 自店のレジが対応可能かをメーカーに確認する(費用はかかりません。POINT01の切り分けが先です)
- 2. 検討している製品が、事務局に登録されているかを確認する(ここを外すと補助の対象になりません)
- 3. 改修費・役務費は複数社から見積もりを取る(1社だけだと、あとで足りなくなる場合があります)
- 4. 契約・納品・支払いの書類をすべて保管する(事後申請のため、これが申請書類そのものになります)
- 避けたいこと/「補助金が出るので今すぐ契約を」という営業に押され、登録製品かどうかを確認しないまま契約してしまうこと
ただし補助金の側は「変化の時代に対応できるシステム作り」を理由に措置されており、税率変更だけを目的とした制度ではありません。レジの更新自体に別の理由(レジ締めの手間、売上の把握)があるなら、税率の行方と切り離して判断できます。
ガチャレジからの切り替えなど、買い替えが必要になった場合は、候補の製品が事務局に登録されているか・どのプランが補助の対象かを、契約の前に資料で確かめるのが確実です。
一例として、クラウドPOSレジの「スマレジ」は、公式サイトですべてのプランが食料品8%→1%に対応すると案内しています。補助金の対象になるか、事前着手制度で使えるかは、資料請求のあとの相談で確認してください。
※店舗でレジを使う事業者向けの資料です(ダウンロードは無料)。記載は2026年9月28日時点のスマレジ公式サイトの案内にもとづきます。
買い替えるときの選び方(税率の変更・補助金・会計ソフトとの連携)は、別の記事で詳しく整理しています。
消費税1%でレジを買い替えるなら|補助金で損しない選び方レジを改修した場合、その費用をその年の経費(修繕費)にできるのか、資産として何年かに分けて償却するのか(資本的支出)。ここは金額が大きくなるほど利益に響きます。
国税庁のタックスアンサーNo.5402「修繕費とならないものの判定」では、次のように整理されています。
- 修繕費になる → 固定資産の維持管理や原状回復のために要した費用
- 資本的支出になる → 使用可能期間を延ばすもの、または価値を増加させるもの
とはいえ、実際には「これは維持なのか価値の増加なのか」で迷う場面がほとんどです。そのために、金額で割り切ってよい基準が用意されています。
本来は資本的支出に当たるものでも、修繕費として処理できます。
② おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良
過去の実績などから周期的に行われることが明らかな場合は、修繕費として扱えます。
③ 区分が明らかでない場合は、60万円未満または取得価額の10%以下
この範囲なら修繕費として処理できます。
レジの税率設定を変更してもらうだけの作業であれば、機能が増えるわけではなく、金額も上記の範囲に収まることが多いため、修繕費として処理できるケースが多いと考えられます。
判定に使う金額の基準や、補助金をもらって設備を買ったときの圧縮記帳という処理については、別記事で詳しく整理しています。買い替えになりそうな方は、あわせて確認してください。
レジの発注と並行して、お金をかけずに今すぐ始められる準備があります。むしろこちらのほうが、対応漏れが起きやすい部分です。
それが商品マスタ(商品ごとの税率設定)の棚卸しです。レジの機械が対応できても、どの商品を1%にするかの設定は、結局お店側が決めなければなりません。
- 取扱商品のうち、どれが飲食料品でどれが違うかを一覧にする(酒類は対象外である点に注意)
- 飲食店なら、店内飲食・持ち帰り・出前のどれに当たるかを売上区分ごとに整理する
- レジ前の菓子や瓶詰めソースなど、物販として売っているものを洗い出す(飲食店でも1%側になり得ます)
- 自販機・売店・イートインなど、同じ店舗内で判定が分かれる場所を確認する
同じ設定ミスをしても、納税額への影響は今の4.5倍になるということです。レジの機械を新しくすることよりも、どの商品にどの税率を割り当てるかを正しく決めることのほうが、金額的な重要度は高いと考えてください。
なお、店内飲食と持ち帰りの区分ルールそのものは、いまの軽減税率で使われている基準と同じになる見通しです。判定に迷いやすい「飲食設備とは何か」「出前とケータリングの違い」については、別記事で国税庁のQ&Aをもとに詳しく整理しています。
「レジさえ直せば終わり」と思われがちですが、税率の設定はお店のあちこちに散らばっています。ひとつでも古い設定が残っていると、そこから誤った金額が出続けます。
- 会計ソフト → 仕訳を入力するときの税区分。クラウド型なら自動更新されることが多い
- 請求書・納品書の発行システム → 得意先へ出す書類の税率。インボイスの記載要件にも関わる
- ECサイト・ネットショップ → 商品ごとの税率設定と、表示価格の見直し
- 券売機・セルフレジ・自動釣銭機 → レジ本体とは別に改修が必要な場合がある
- 価格表・メニュー表・POP → 税込表示をしている場合、印刷物の差し替えが発生する
- 受発注システム・卸先との取引データ → 取引先側の対応時期とすり合わせが必要
現在の「8%と10%」の2区分に慣れた運用から、区分がひとつ増えます。システムが3区分に対応できるかどうかは、レジだけでなく会計ソフトや請求書システムでも確認しておきたい点です。
なお、これらの対応にかかる費用そのものと、納税額がどう変わるかは別の話です。特に飲食店は、売上が10%のままで食材の仕入だけが1%になるため、納める消費税が増える方向に動きます。改修費用の予算だけでなく、納税資金の見通しもあわせて立てておいてください。
報道では「0%にするとレジの改修が間に合わない」という説明が中心でした。ニュースで「レジに0が入力できない」という話を聞いた方も多いと思います。
ただ、これを聞いて「レジには非課税のボタンがあるのに、なぜ0%だけできないのか」と疑問に思った方もいるはずです。もっともな疑問です。実際、この点は政府の説明への批判としても取り上げられました。
そこで、政府の会議に提出された経済産業省の資料そのものを確認しました。すると、単なるシステムの都合ではなく、消費税の根幹に関わる理由が書かれていました。
① 消費税が「0円」のものは、システム上「非課税」として扱われてしまう
② そのため、0%対象商品の価格・税額をインボイスに表示できないシステムがある
③ 結果として、小売事業者は消費税法にもとづく適法なインボイスを発行できない
④ そのレシートを受け取った事業者は、同時に購入した10%対象商品についても仕入税額控除ができない
つまり問題は0%の商品だけにとどまりません。同じレシートに載っている10%の商品の控除まで巻き添えになるという点が、最も重い課題として挙げられています。
ここで鍵になるのが、「非課税」と「0%課税」はまったく別物だという点です。どちらも消費税額は0円ですが、仕入税額控除の扱いが正反対になります。
「非課税と免税は、その取引のために行った課税仕入れについて仕入税額の控除を行うことができるかどうかという点が異なります」
非課税 → その取引のために行った課税仕入れについて、原則として仕入税額を控除できない
免税(0%課税) → 課税資産の譲渡等に当たるため、原則として仕入税額を控除できる
この違いが、事業者にとって何を意味するか。同じ「税額ゼロ」でも、手元に残るお金が変わります。
- 0%課税として扱われる場合 → 売上の税は0円。それでも食材の仕入で払った消費税は控除できるため、差し引きで還付になり得る
- 非課税として扱われる場合 → 売上の税は0円。しかし仕入で払った消費税を控除できず、そのままコストになる(いわゆる損税)
消費税には、税込価格から税額を逆算する割戻し計算という方法があります。0%だとこの計算が成り立ちません。「割り算ができない」と言われていたのは、この話です。
また改修が必要なのはレジ本体だけではなく、在庫・受発注管理システムや割引・ポイント管理システムにも税率計算の機能が入っている点が指摘されています。POINT05で「レジ以外にも設定がある」とお伝えしたのは、こうした構造があるためです。
改修に必要な期間として資料に示されているのは、次の見通しです。
- 0%対応 → 大規模改修の想定で最大10か月〜1年程度(影響調査・システム改修・テスト・店舗導入の合計)
- 1%への引下げ → 「0%の特殊性」に関する影響調査・改修・テストが不要になるため、制度の詳細公表後5〜6か月程度に短縮できるとのシステムメーカーの見解
そして実務的に重要なのは、期間の起点が「制度の詳細が公表されてから」だという点です。5〜6か月という数字は、法案や詳細が固まった時点からカウントされます。2027年4月の開始に間に合わせるには、逆算するとほとんど余裕がありません。中小企業庁も事前着手制度の趣旨を「経営の現場においてスマートレジの導入等が間に合うよう」措置したものと説明しています。だからこそ「待つ」のではなく、「登録製品かどうかを確かめたうえで動く」のが、いまの正しい順番になります。
なお、仮に将来ふたたび0%案が議論される場合も、それが「非課税」なのか「0%課税」なのかによって、事業者の損益は正反対になります。税率の数字だけを見ていては判断できません。報道で税率が話題になったときは、あわせて「仕入税額控除はどうなるのか」を確認する——これが経理側の見方です。
→ 設定変更で済む場合が多い
→ ただし登録製品のみ対象
→ 買い替えは資産計上
→ 無料で今日から着手できる
→ 会計ソフト・請求書・EC
→ 非課税との区別が難所
「消費税が変わるからレジを買い替えなければ」とあわてる必要は、多くの場合ありません。やるべき順番は、①自店のレジが対応できるかの確認、②商品マスタの棚卸し、③登録製品かどうかを確かめてから発注、です。①と②はお金がかからず、いちばん効果があります。発注の前に、まずこの2つを済ませてください。
そして、この改正を「レジの買い替え問題」として捉えているうちは、判断を誤ります。0%が見送られた理由が非課税との区別と仕入税額控除にあったように、税率の話は必ず控除の話とセットです。報道で税率の数字が動いたときは、「自社の仕入税額控除はどうなるのか」まで確認する。これが経理側の見方です。
「うちのレジは対応できるのか」「改修費は経費で落ちるのか」「納税額はどう動くのか」——判断に必要な材料は業態によって変わります。何を今やって何を待つべきかを、税理士事務所の実務目線で一緒に整理します。


