テイクアウトは消費税1%?
店内飲食との違い
持ち帰りは1%・店内で食べると10%。差は「9%」に広がります
食料品の消費税を2027年4月から2年間、1%に引き下げる方針は、2026年8月5日の臨時閣議で決定されました(法案の提出は秋の臨時国会の予定です)。この記事では、テイクアウトと店内飲食の境目がどこにあるのかを国税庁の原典で確認しながら、飲食店・小売店が今から準備すべきことを整理します。
テイクアウト・持ち帰り/そばの出前・宅配ピザの配達/スーパーやコンビニの弁当・惣菜を持ち帰る場合/飲食店のレジ前で売っている菓子
10%のまま(外食側)
店内飲食(イートイン)/フードコートでの飲食/ケータリング・出張料理/ホテルのルームサービス/店内で飲む缶・ペットボトル
分かれ目は「飲食設備のある場所で食べさせているか」です。お店の種類ではなく提供のしかたで決まります。なおお酒は持ち帰っても対象外(10%)です。それぞれの根拠と例外は、このあとPOINT 01〜06で国税庁の原典をもとに解説します。
閣議決定の原文で何が確定し、何がまだ決まっていないかは、食料品消費税1%が閣議決定|確定したことと未定のことで詳しく整理しています。
報道によれば、今回の引き下げは現在の軽減税率(8%)の対象品目を、そのまま1%に置き換える案です。対象の範囲を新しく作り直すのではなく、すでにある線引きを使って税率だけを下げるという発想です。
そして現行の軽減税率では、外食と酒類は最初から対象外とされています。消費税法では、軽減税率の対象にならないものとして次の2つが定められています。
飲食店業等を営む者が、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供
② ケータリング・出張料理
相手方が指定した場所において行う加熱・調理・給仕等の役務を伴う飲食料品の提供
つまり、法律上「外食」とはお店の種類ではなく、飲食させる設備がある場所で食べさせるという行為を指しています。ここを取り違えると、判定を間違えます。
判定の鍵になる「飲食設備」について、国税庁はかなり広い範囲を示しています。消費税法基本通達5-9-7では、飲食設備とは「テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備」とされ、その規模や目的を問わないと明記されています。
国税庁のQ&A(個別事例編)で示されている具体例を見ると、範囲の広さがわかります。
- カウンターだけの立食形式の店 → 飲食設備に該当。店内飲食は軽減税率の対象外
- スーパーの休憩スペース → 飲食に使えるなら飲食設備に該当
- フードコートのテーブル・椅子 → 自社の設備でなくても、設備設置者との合意等があれば該当
- 社員食堂 → 飲食設備で食べさせているため該当
- 屋台(テーブル・椅子を置いている場合) → 該当
逆に、飲食設備に該当しないとされているものもあります。ここが持ち帰り扱いになる分かれ目です。
- 従業員専用のバックヤード → 顧客が飲食に用いないことが明らかなため該当しない
- トイレ、サッカー台(袋詰め台) → 同上
- 公園の公共ベンチ → 特段の使用許可がなく誰でも自由に使える場合は該当しない
- 「飲食はお控えください」と掲示し、実態として飲食させていない休憩スペース → 該当しない
国税庁は黙示の合意を、設備設置者に黙認されており、かつ事業者がその設備を「管理支配しているような状況」と説明しています。具体例として、その設備にメニューを設置している・顧客を案内している・配膳や下膳、清掃を行っている、といった状況が挙げられています。「うちが置いた椅子ではない」は理由になりません。
店内飲食か持ち帰りかは、いつ判定するのか。基本通達5-9-10では、飲食料品の提供等を行った時点で、顧客への意思確認などにより判定するとされています。
これは実務上、非常に重要な意味を持ちます。国税庁のQ&Aには、判定が固定される例が具体的に示されています。
- 飲食店で食べ残しを折り詰めで持ち帰る → その場で飲食するために提供されたものなので、提供時点で「食事の提供」に確定。あとで持ち帰っても軽減税率にはならない
- 回転寿司で食べた寿司をパック詰めして持ち帰る → 店内で食べる寿司と区別せず提供したものは、同じく提供時点で確定。ただし最初から持ち帰り用として注文しパック詰めで販売したものは軽減税率の対象
- ハンバーガーとドリンクのセット商品で、ドリンクだけ店内で飲む → セットは一の商品なので、全体が「食事の提供」。ハンバーガーを持ち帰っても軽減税率にはならない
つまり同じ組み合わせでも、セットで売るか単品で売るかで税率が変わります。差が9%になれば、この違いが価格表とレジ設定に直接響きます。
では意思確認は、全員に一人ずつ聞かなければいけないのか。ここは実務に配慮した扱いが示されています。
ただし注意点があります。「飲食はお控えください」と掲示していても、実態としてそこで飲食させている場合は「食事の提供」に当たると明記されています。掲示さえ出せばよい、という話ではありません。
デリバリーが当たり前になった今、ここは多くの飲食店に関係します。出前・宅配と、ケータリング・出張料理は、消費税では扱いが正反対です。
国税庁は「顧客の指定した場所まで単に飲食料品を届けるだけであるため、飲食料品の譲渡に該当する」としています。届けるだけなら「食事の提供」にも「ケータリング」にも当たりません。
味噌汁付き弁当を配達し、配達先で味噌汁を器に注ぐ
「取り分け」は飲食料品の譲渡に通常必要な行為であり、ケータリングの「役務」には含まれないとされています(弁当全体が軽減税率の対象)。
配達後に会議室で給仕等の役務を行う場合
ホテルのルームサービス(客室のテーブル・椅子という飲食設備で飲食させるため)
国税庁はケータリングに該当する例として、相手方の指定場所で①盛り付けを行う ②器を配膳する ③取り分け用の食器等を飲食に適する状態に配置する場合を挙げています。「盛り付け」は役務に含まれ、「取り分け」は含まれないという線引きです。
飲食店にとっては、デリバリー比率が高いほど売上に占める1%部分が増えることを意味します。店内飲食中心の店と、宅配中心の店では、影響がまったく違ってきます。
意外に見落とされるのが、飲食店の中にも「軽減税率の対象になる売上」があるという点です。国税庁のQ&Aから、店内で税率が分かれる例を拾ってみます。
- 飲食店のレジ前で売っている菓子 → 単に飲食料品を販売しているだけなので軽減税率の対象(1%側)
- ラーメン店で缶・ペットボトルをそのまま提供 → 店内で飲食させるものとして提供しているので対象外(10%)
- 映画館の売店での販売 → 単なる店頭販売なら対象。ただし売店のそばにテーブル・椅子を置いてその場で飲食させるなら対象外
- ホテル客室の冷蔵庫内の飲料(酒類を除く) → 単に販売するものなので対象
- 遊園地の売店で買って園内を食べ歩く → 売店の管理が及ばないベンチ等は飲食設備でないため対象。ただし売店の管理が及ぶテーブル・椅子で飲食させるなら対象外
- 列車内の移動ワゴン販売 → 原則対象。ただし座席にメニューを設置して注文に応じる場合や事前予約による提供は対象外
レジ前の菓子、テイクアウト用の瓶詰めソース、店頭で売る食パン——こうした「物販売上」がある店は、商品マスタの税率区分を今のうちに棚卸ししておくことをおすすめします。
店内飲食中心の飲食店にとって、この改正は二つの方向から圧力がかかる形になります。
しかもこの負担増は、日々の売上の中では見えません。気づくのは決算・申告のときです。資金繰りの計画に織り込んでおかないと、納税時に慌てることになります。
納税額がどう動くか、簡易課税を選ぶべきかどうかは、業態によって結論が正反対になります。この点は前回の記事で計算例つきで整理しました。自社がどちら側になるかは、そちらで確認してください。
→ 差は2%から9%へ
→ 他社の設備でも該当し得る
→ あとから持ち帰っても不変
→ 役務が伴うと10%のまま
→ レジ前の菓子など物販
→ 資金繰りへの織り込みを
店内飲食と持ち帰りの区分ルール自体は、いま軽減税率で使われているものと同じです。変わるのは間違えたときの金額の重さです。差が9%になれば、レジの区分ミスも、商品マスタの設定漏れも、これまでの4.5倍の影響になります。制度の確定を待つ間に、自店の売上がどちらに区分されるかの棚卸しだけは先に始めておくことをおすすめします。
店内飲食と持ち帰りが混在する店舗ほど、区分の設計と納税額への影響は複雑になります。「どの売上がどちらに入るのか」「準備は何から手を付けるべきか」を、税理士事務所の実務目線で一緒に整理します。

