個人事業主の確定申告|開業したら出す2枚の届出と期限

個人事業主の確定申告|開業したら出す2枚の届出と期限 起業・副業
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確定申告の準備

個人事業主が確定申告で損をしないために
開業したらすぐ出す2枚の届出

出すのは無料。出さないと、控除が最大65万円ぶん変わります

開業したら 届出を出す? 出した(青色申告) → 最大65万円の控除 出さない(白色申告) → 特別控除なし
確定申告で個人事業主が損をする一番の原因は、計算間違いでも経費の入れ忘れでもありません。開業したときに出しておくべき届出を、出していないことです。提出は無料で、書くのは1枚あたり10分程度。それだけで最大65万円の所得控除が使えるかどうかが決まります。しかも期限を過ぎると、その年はもう取り返せません。この記事では、開業したら真っ先に出すべき2枚の届出と、提出のタイミング、そして2027年からの改正で何が変わるのかまで整理します。
✓ 先に結論
  • 出すのは「開業届」と「青色申告承認申請書」の2枚。セットで出します
  • 青色申告承認申請書は期限を過ぎるとその年は適用されません(開業から2か月以内、または3月15日まで)
  • 2027年の取引分から制度が変わります。書面で申告している人は控除が55万円から10万円に下がります
  • 会社員の副業は、いきなり開業届を出すと不利になる場合があります
POINT01
そもそも確定申告が必要なのはどんな人か
「20万円」の意味を取り違えている人が多い部分です

確定申告が必要になる主なケースは次のとおりです。

申告が必要になる主なケース
  • 給与が年末調整されていない(給与の収入金額が2,000万円を超える場合など)
  • 給与以外の所得の合計が20万円を超える
  • 2か所以上から給与を受けていて、年末調整されていない給与収入と他の所得の合計が20万円を超える
  • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、年末調整では受けられない控除がある
⚠ 「収入」と「所得」は別物です
20万円の判定でつまずくのがここです。

収入=受け取った金額そのもの。
所得=収入から経費などを差し引いた後の金額。

つまり売上が30万円でも、経費が15万円なら所得は15万円なので、この基準では申告不要になります。「20万円稼いだら申告」と覚えていると、必要のない申告をしたり、逆に必要な申告を見落としたりします。
⚠ 住民税は20万円以下でも申告が必要です
ここまでは所得税の話です。住民税には20万円という基準がありません。副業の所得があれば、金額にかかわらず住民税の申告が必要になります。

ただし所得税の確定申告をしていれば、その情報が市区町村へ渡るため、住民税の申告を別途行う必要はありません。所得税の申告をしない場合だけ、お住まいの市区町村での手続きが必要になります。取扱いは自治体ごとに案内が異なるため、お住まいの市区町村の住民税担当課でご確認ください。
POINT02
開業したら出す2枚の届出
どちらも提出は無料です

最低限この2枚を出しておけば、確定申告で不利になることはありません。

必ず出す2枚
  • 個人事業の開業・廃業等届出書(通称「開業届」)
  • 所得税の青色申告承認申請書 ← 本命はこちら

この2枚は実質セットです。青色申告承認申請書を出すときに開業届も必要になるため、同時に提出するのが普通です。用紙はどちらも国税庁のサイトからダウンロードできます。

状況によっては必要になるもの
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(人を雇う場合)
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(家族に給与を払う場合)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(納付を年2回にまとめたい場合)
  • 消費税課税事業者選択届出書(インボイス登録に関連する場合など)
✓ 開業届を出さないこと自体に罰則はありません
開業届は「開業から1か月以内」とされていますが、出さなかったことへの罰則はありません。ただし青色申告承認申請書とセットで必要になるため、青色申告をするなら結局出すことになります。開業届だけを単独で出す意味は、あまりありません。
⚠ 職業欄の書き方で個人事業税が変わることがあります
開業届の「職業」欄と「事業の概要」欄の内容によって、個人事業税の対象になるかどうかが変わる場合があります。個人事業税は法定業種に対してかかる地方税で、業種によっては対象外です。

ただし税額を下げる目的で実態と違う職業を書くことは避けてください。あくまで事実を書いたうえで、自分の仕事がどの業種にあたるのかを確認するという順序です。業種の判定と税率は都道府県によって扱いが異なるため、お住まいの都道府県税事務所にご確認ください。
POINT03
青色申告で受けられる特典
この記事の本題です

青色申告承認申請書を出す価値は、控除の金額に表れます。国税庁のタックスアンサー(No.2072)にもとづくと、青色申告特別控除は次の3段階です。

青色申告特別控除の区分
  • 65万円/55万円の要件に加えて、e-Taxで申告するか優良な電子帳簿の保存を行う
  • 55万円/複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に提出する
  • 10万円/上記の要件を満たさない青色申告者

白色申告にはこの特別控除がありません。同じ所得でも、青色申告で65万円の控除を使うかどうかで、納める税金が変わります。

✓ 控除以外の特典もあります
  • 赤字を翌年以降に繰り越せる(純損失の繰越控除)
  • 少額減価償却資産の特例/一定額未満の資産を、その年の経費に一括計上できる
  • 家族に払う給与を経費にできる(青色事業専従者給与。事前の届出が必要)
⚠ 少額減価償却資産の金額基準は引き上げられています
この特例の金額基準は、令和8年度税制改正で30万円未満から40万円未満に引き上げられました(年間合計300万円までという上限は据え置き)。

国税庁のタックスアンサーは掲載時点の法令にもとづくため、30万円のままになっている場合があります。金額基準を確認するときは、掲載日と改正の施行日をあわせて見てください。
⚠ 「手間が増えるから白色でいい」とは限りません
青色申告は帳簿づけの手間が増えると言われますが、白色申告でも記帳と帳簿の保存は必要です。所得を計算する作業自体は避けられません。

違いは「複式簿記で記帳するかどうか」で、これは会計ソフトを使えば入力の手順としてはほぼ変わりません。手間の差より、控除の差のほうが大きいのが実情です。
POINT04
提出のタイミングを間違えると1年待つことになる
ここが一番の「損」が発生する場所です

青色申告承認申請書には期限があります。過ぎるとその年は青色申告にできず、翌年からの適用になります。

提出期限
  • その年の1月16日以後に開業した場合/開業の日から2か月以内
  • すでに事業をしていて、これから青色申告に切り替える場合/適用を受けたい年の3月15日まで
⚠ 「確定申告のときに一緒に出す」ができません
よくある勘違いがこれです。青色申告承認申請書は申告のときではなく、その年が始まる前(または開業直後)に出しておく書類です。

たとえば2026年分を青色申告したい場合、期限は2026年3月15日です。2027年2月に確定申告をする段階で「青色にしたい」と思っても、2026年分はもう白色でしか申告できません。これが「損をした」と気づくのが一番遅いパターンです。
✓ 迷ったら、とりあえず出しておくという考え方
青色申告承認申請書を出しても、提出したこと自体による費用や不利益はありません。結果として要件を満たせなければ10万円控除になるだけで、白色より不利になることはありません。

「複式簿記ができるか分からない」という理由で提出を見送ると、できるようになった年に使えないという結果になります。迷っている段階なら、先に出しておくほうが選択肢が広がります。
CASE05
会社員の副業は、すぐ開業届を出さないほうがいい場合がある
ここだけは「早く出す」が正解とは限りません

ここまで「早く出しましょう」と書いてきましたが、会社員が副業でやっている場合は事情が変わります。理由は2つあります。

注意すべき2点
  • 失業給付を受けられなくなる場合がある → 開業届を出すと「事業を始めた」と扱われます。退職の予定があるなら、提出の順序を考える必要があります
  • そもそも事業所得と認められるとは限らない → 認められない場合は雑所得となり、青色申告特別控除は使えません

2つ目が重要です。副業の所得が事業所得になるか雑所得になるかは、届出を出したかどうかでは決まりません。

⚠ 帳簿があるかどうかが判定の分かれ目です
国税庁の所得税基本通達35-2の(注)は、こう定めています。

事業所得と認められるかどうかは、その活動が「社会通念上事業と称するに至る程度」で行われているかで判定する。そのうえで、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当することに留意する——ただし「収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合」を除く、という構造です。

「300万円を超えていれば帳簿がなくても事業所得になる」わけではありません。300万円超であることに加えて、事業と認められる事実があることが必要です。逆に言えば、帳簿をきちんと付けていることが、事業所得として扱われるための土台になります。
✓ 判断に迷う段階なら、雑所得で申告するという選択もあります
副業を始めたばかりで収入が安定していない段階では、無理に事業所得として扱わず雑所得で申告しておくという進め方もあります。収入が安定し、帳簿も整ってきた段階で開業届と青色申告承認申請書を出す、という順序です。

個別の判定は税務署でも相談できます。自分のケースが事業所得にあたるか不安な場合は、所轄の税務署または顧問税理士にご確認ください。
POINT06
2027年からの改正で何が変わるか
今から準備しておかないと、控除が45万円減ります

令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の区分が変わります。適用は令和9年分、つまり2027年1月〜12月の取引について、2028年の申告から適用されます。

改正後の区分
  • 75万円(新設)/複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿等の要件を満たす
  • 65万円/複式簿記+e-Tax(据え置き)
  • 10万円/複式簿記でも書面で申告する場合(現行の55万円から引き下げ)
  • 10万円/簡易簿記
⚠ 影響が大きいのは「増える人」より「減る人」です
新設される75万円に目が向きがちですが、実務で影響が大きいのは書面で申告している人です。これまで55万円だった控除が10万円になり、45万円ぶん減ります。

現在、複式簿記で記帳しながら書面で申告している方は、e-Taxへの切り替えを検討してください。切り替えるだけで65万円が維持できます。
⚠ 「来年から」ではありません。1年ずれます
この改正は令和9年分から適用されます。2027年3月に行う申告(令和8年分)は、まだ現行の制度です。

紛らわしいのは、準備の期限は改正の適用より前に来る点です。優良な電子帳簿の要件を満たすには、2027年1月1日の時点で条件を満たした状態である必要があります。年の途中で設定を変えても、さかのぼって適用されません。75万円を狙うなら、実質的な準備期限は2026年内です。
まとめ:損の大半は「出していない」ことから生まれる
STEP 01
開業届と青色申告承認申請書
→ 2枚セットで出す
STEP 02
期限は開業から2か月以内
→ 過ぎるとその年は使えない
STEP 03
申告はe-Taxで
→ 2027年分から書面は10万円に

確定申告で損をする人の多くは、計算を間違えたのではなく使えたはずの制度を使っていないだけです。届出の提出は無料で、かかる時間も10分程度。それだけで最大65万円の控除が使えるかどうかが決まります。まだ出していない方は、期限を確認して先に手続きを済ませてください。

届出は出した。次は帳簿をどうするか

青色申告で65万円の控除を受けるには、複式簿記での記帳と、貸借対照表・損益計算書の添付が必要です。「何から始めればいいのか」「この支出はどの科目か」——最初につまずきやすいところを、税理士事務所での実務経験をもとにお答えしています。

お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします

※個別の申告書の作成代行は税理士業務のため承っておりません。記帳の考え方や経理の整理についてのご相談を承っています。

本記事は2026年8月28日時点の法令および公表情報にもとづいて作成しています。確定申告が必要となる場合および青色申告特別控除の要件は国税庁タックスアンサー(No.2072「青色申告特別控除」)、事業所得と雑所得の区分に関する記載は国税庁「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」(令和4年10月7日)の所得税基本通達35-2の原文を確認したうえで記載しています。少額減価償却資産の特例の金額基準は令和8年度税制改正により30万円未満から40万円未満に引き上げられていますが、国税庁タックスアンサーには掲載時点の法令にもとづく旧基準が記載されている場合があります。青色申告特別控除の改正(75万円の新設および書面申告の場合の引き下げ)は令和9年分から適用されるものであり、令和8年分の申告には適用されません。制度の詳細および届出書の名称は今後変更される可能性があります。個人事業税の課税対象となる業種および税率は都道府県により取扱いが異なります。住民税の申告の要否および手続は市区町村により案内が異なります。事業所得と雑所得の判定は個々の実態により結論が変わるため、実際の判断にあたっては所轄の税務署または顧問税理士にご確認ください。本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
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