合同会社の設立で後悔する人・しない人|分かれ目は「取引先が誰か」

合同会社はやめとけ?後悔する人としない人の分かれ目 起業・副業
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法人設立の判断

合同会社の設立で後悔する人・しない人
分かれ目は「取引先が誰か」です

税理士事務所で見てきた、実際に困ったケースと・まったく問題なかったケース

取引先は 誰か? 個人のお客様・小規模な取引 → 困る場面はほぼない 大企業との取引・採用を予定 → 先に確認が必要
「合同会社 やめとけ」「合同会社 後悔」——設立を考えて検索すると、こうした言葉が並びます。読むほど不安になりますが、実際に困るかどうかは、事業の中身ではなく「誰と取引するか」でほぼ決まります。税理士事務所で多くの会社の経理に関わってきましたが、合同会社で本当に困っていたのは特定の場面に限られ、それ以外の会社は何年も何の問題もなく続いています。この記事では、よく言われるデメリットのうち実務で本当に効くものだけを切り分けて、自分がどちらに当てはまるかを判断できるように整理します。
✓ 先に結論
  • 個人のお客様が中心なら、合同会社で困る場面はほとんどありません
  • 大企業と直接取引する予定・人を採用する予定があるなら、先に確認すべきことがあります
  • 「信用が低い」は漠然と怖がる話ではなく、相手が誰かで有無が決まる話です
  • 迷ったら、あとから株式会社に変更できます(費用はかかります)
POINT01
「信用が低い」が実際に効く場面・効かない場面
漠然とした不安を、具体的な場面に分解します

合同会社のデメリットとして最初に挙げられるのが「社会的信用が低い」です。ただこの表現は漠然としていて、これだけでは自分に関係あるのか判断できません。実務で見てきた範囲では、信用の差が表に出る場面は限られています。

信用の差が出やすい場面
  • 大企業と直接取引する → 取引先の社内規程で取引相手の会社形態や資本金に条件がある場合があります
  • 新卒・若手を採用する → 応募者本人より、その家族に説明が必要になることがあります
  • 金融機関から多額の融資を受ける → 会社形態そのものより事業計画と実績が重視されますが、規模が大きくなるほど説明の手間は増えます
ほとんど関係しない場面
  • 個人のお客様向けの事業 → 飲食・美容・教室・小売など。お客様が会社形態を気にする場面はまずありません
  • ネット上での物販・サービス提供 → 表示義務があるのは会社名や住所であって、形態による不利はありません
  • 少人数で回す受託業務 → 相手が中小企業や個人であれば、問題になった例は見ていません
⚠ 「取引を断られる」は起こりうるが、事前に分かります
大企業の中には、新規の取引先を登録する際に条件を設けているところがあります。ただしこれは設立してから判明する種類の話ではありません。狙っている取引先が既に決まっているなら、設立前にその会社の購買窓口に確認できます。「合同会社でも取引可能か」と聞けば答えが返ってきます。不安なまま設立するより、先に1本電話を入れるほうが確実です。
POINT02
設立費用はいくら違うのか
ここは条文で金額が決まっているため、はっきり比較できます

合同会社の利点として確実なのが設立費用です。ここは感覚の話ではなく、法律で金額が決まっています。

登録免許税(登録免許税法 別表第一)
  • 株式会社の設立登記/資本金の額の1000分の7。計算額が15万円に満たないときは15万円
  • 合同会社の設立登記/資本金の額の1000分の7。計算額が6万円に満たないときは6万円

つまり資本金が小さい場合、登記の段階で9万円の差が出ます。

定款の認証
  • 株式会社/会社法30条により、定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません。認証の手数料が別途かかります
  • 合同会社/会社法575条は「社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印する」と定めるのみで、認証は求められていません
✓ 決算公告の義務は株式会社だけ。ただし実施率は1.8%
会社法440条は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない」と定めています。条文の主語が株式会社であり、合同会社にこの義務はありません。

ただしこの差を過大に評価しないでください。東京商工リサーチの調査(2023年6月公表)によると、2022年に官報で決算公告を行った株式会社は4万214社で、実施率は1.8%にとどまります。「株式会社にすると毎年公告費用がかかる」という説明を見かけますが、実際にその費用が発生している会社は少数派です。義務の有無は違いますが、費用の差として期待できるものではありません。
⚠ ただし、費用の差だけで選ぶと判断を誤ります
設立費用の差は最初の一度だけです。事業が続く限り効いてくるのはPOINT 01で挙げた取引先との関係のほうで、金額の差は判断材料としては軽いほうだと考えてください。数万円のために取引の機会を失うなら本末転倒です。
CASE03
実際に聞いたデメリット3つ
概要の比較表では見えてこない、現場で出てきた困りごとです

税理士事務所で関わった中で、合同会社であることが実際に問題になった場面を3つ挙げます。どれも設立の時点では想像しにくく、あとから出てきたものです。

① 知名度が低く、特殊な会社に思われる

会社と聞いて多くの人が思い浮かべるのは株式会社です。そのため「合同会社」という名前を見て、誰かと共同でやっている会社なのか、そもそも会社なのかと受け取られることがあります。実際に、お客様から「誰と一緒にやられているんですか」「合同会社って何ですか」と聞かれた会社がありました。

この会社は表に出す屋号を別に用意していたのですが、それがかえって裏目に出ました。請求書や契約書には正式名称を書く必要があるため、取引が進んだ段階で初めて「合同会社○○」という名前を見たお客様に、より強く不審がられたそうです。取引そのものに支障はなくても、説明の手間が増えるという話でした。

② 役員の入れ替えがしにくい

株式会社では、株主総会の決議で役員を選任・解任できます。就任する本人が株を持っている必要はありません。一方、合同会社は会社法590条により「社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する」とされ、業務を執行する立場と出資が結びついています。

そのため出資していない人を役員にできません。ある会社では「この人を役員にしたいが、出資していないのでできない」という形で問題になりました。代表を交代する場合も、出資してもらうか持分を買い取る必要があります。

⚠ 利益が出ているほど、交代の負担は重くなります
持分を買い取る場合、出資したときの額面ではなく、その時点の会社の価値に応じた金額が基準になります。事業がうまくいっているほど会社の価値は上がっているため、交代にかかる金額も大きくなります。これは株式会社でも同じですが、合同会社は出資と経営が結びついている分、役員を入れ替えるだけでこの問題に当たります。
③ 定款に定めがないと相続できない

ここが3つの中で最も見落とされやすく、影響が大きい点です。

会社法607条1項3号は、社員の死亡を退社の事由として定めています。そして608条1項は「持分会社は、その社員が死亡した場合……当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる」としています。

つまり定款にこの定めを置いていなければ、持分は相続されません。相続人が受け取れるのは、611条による持分の払戻しです。

⚠ 相続では「合同会社はお金、株式会社は権利」
株式会社の株式は相続の対象になるため、承継した割合によっては相続人が会社の経営権を引き継げます。これに対し定款の定めがない合同会社は、お金は受け取れるが会社そのものは引き継げないという結果になります。

家族に引き継ぐ可能性が少しでもあるなら、設立時の定款にこの定めを入れておくかどうかを必ず検討してください。あとから気づいても、その時点で定款を変更できる状況とは限りません。会社をめぐる相続は揉めることが多い領域です。定款の具体的な文言は、司法書士や弁護士にご相談ください。
CASE04
まったく問題なかったケース
こちらのほうが件数としては多数です

検索すると失敗談ばかりが目に入りますが、実際には何事もなく続いている合同会社のほうが多数です。困った話は記事になりやすく、問題がない話はわざわざ書かれないためです。

問題が起きていなかった会社の共通点
  • お客様が個人/飲食店・美容室・教室・整体など。会社形態を尋ねられた場面自体がほぼありません
  • 1人または家族だけで運営/意思決定で揉める構造がそもそもありません
  • 取引先が中小企業や個人事業主/相手側にも形態による制限がなく、話題にすら上がりません
  • 大きな借入や外部からの出資を予定していない/資金調達の選択肢の差が実際には効きません

この条件に当てはまるなら、「やめとけ」という言葉は自分向けではないと考えて差し支えありません。ネット上の失敗談は、多くが規模拡大や共同経営を前提にした話です。

✓ 合同会社が向いているケース
  • ミニマム法人・マイクロ法人として設立する
  • すでに株式会社があり、サブ的な位置づけで設立する
  • 1人会社として運営していく
  • お試しで起業してみる
共通するのは「メインではなくサブ」「規模を大きくすることを前提にしていない」という点です。この場合は費用を抑えられる利点がそのまま効きます。逆に本腰を入れて会社を大きくしたい場合は、株式会社での設立をおすすめします。
✓ 経理の手間は、形態でほとんど変わりません
「合同会社のほうが経理が楽なのでは」と聞かれることがありますが、日々の帳簿づけ・決算・税務申告の手間は株式会社とほぼ同じです。法人税の計算方法も変わりません。違うのは前述の決算公告と、株主総会に関する手続の有無くらいです。経理を理由に合同会社を選ぶ必要はありません。
POINT05
あとから株式会社にできるのか
できます。ただし費用と手間はかかります

「選び間違えたら取り返しがつかないのでは」という不安が、判断を止めている一番の原因かもしれません。結論として、合同会社から株式会社への変更はできます。組織変更という手続です。

手続の概要
  • 組織変更計画を作り、社員全員の同意を得る
  • 債権者に対する手続(官報公告など)を行う。ここに一定の期間が必要です
  • 合同会社の解散の登記と、株式会社の設立の登記を行う
⚠ 「あとで変えればいい」と気軽に構えるのも違います
変更自体は可能ですが、登記費用・官報掲載料・専門家への報酬がかかり、期間も要します。新しく設立するのと変わらない、あるいはそれ以上の負担になることもあります。手続の詳細と費用は司法書士に確認してください。

したがって現実的な考え方は、「数年先まで見て、大企業との取引や採用の予定がないなら合同会社で始める」「その予定が既にあるなら最初から株式会社にする」というものです。可逆ではあるが、無料ではありません。
POINT06
設立前に確認しておくこと
この4つに答えられれば、判断できます

ここまでの内容を、設立前のチェックとしてまとめます。すべて「調べれば分かること」です。不安のまま進めるのではなく、ひとつずつ確認してください。

  • 取引したい会社は決まっているか/決まっているなら、その会社に会社形態の条件があるかを直接確認する
  • 3年以内に人を採用する予定があるか/新卒や若手の採用を考えているなら、説明の手間が増えることを見込んでおく
  • 将来、家族や第三者に引き継ぐ可能性はあるか/少しでもあるなら、相続に関する定款の定めを設立時に検討する
  • 出資していない人を役員にする予定はあるか/あるなら、合同会社では対応できないため形態から見直す
  • 大きな借入や外部出資を予定しているか/予定があるなら、金融機関に事前相談したうえで形態を決める
✓ 迷ったときの考え方
4つとも「いいえ」なら、合同会社を選んで後悔する場面は考えにくいと言えます。ひとつでも「はい」があるなら、そこだけを個別に確認してから決めてください。全体を漠然と不安がるより、該当する1点を潰すほうが早く決着します。
⚠ 設立の手続そのものは専門家の領域です
定款の作成や登記の代行は司法書士・行政書士の業務です。この記事は判断材料の整理までを扱っています。実際の手続や、事業内容に応じた最適な形態の最終判断は、司法書士または顧問税理士にご相談ください。
まとめ:不安の中身を、相手の顔で分解する
STEP 01
取引先が個人中心か
→ 困る場面はほぼない
STEP 02
大企業取引・採用の予定は
→ あるなら事前に確認
STEP 03
家族に引き継ぐ可能性は
→ あるなら相続の定款規定を

合同会社で後悔するかどうかは、事業の中身ではなく「誰と取引し、誰を雇い、誰に引き継ぐか」で決まります。設立費用が安いことは確かな利点ですが、それは最初の一度だけの差です。判断の軸は費用ではなく、これから関わる相手に置いてください。

最後に、実際に聞いた言葉をひとつ。デメリットの話をしてくれた会社は、「こんなに大きくなるとは思わなかった。株式会社にしておけばよかった」と言っていました。事業がうまくいった結果の悩みなので嬉しい誤算ではあるのですが、設立の時点でどこまで大きくなるかを見通すのは簡単ではありません。だからこそ、費用の差だけで決めずに、この記事で挙げた点を一度確認しておいてください。

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「この事業なら法人にすべきか」「役員報酬はどう決めるのか」「設立後の帳簿は何から始めるのか」——設立の前後は、調べても答えが出にくい疑問が一度に出てきます。税理士事務所での実務経験をもとに、こうした疑問にお答えしています。

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※登記や定款そのものの手続は司法書士の業務です。経理・税務まわりのご相談を承っています。

本記事は2026年8月28日時点の法令にもとづいて作成しています。登録免許税の金額は登録免許税法別表第一、定款の認証に関する記載は会社法30条および575条、決算公告に関する記載は会社法440条、決算公告の実施率(2022年・1.8%)は東京商工リサーチが2023年6月26日に公表した調査により、業務の執行に関する記載は会社法590条、社員の死亡による退社と持分の承継に関する記載は会社法607条1項3号・608条1項、持分の払戻しに関する記載は会社法611条の条文を確認したうえで記載しています。相続に関する定款の定めの有無や具体的な文言によって結論は変わります。本記事で紹介した事例は、筆者が税理士事務所での実務で見聞きした範囲のものであり、すべての合同会社に当てはまるものではありません。取引先の登録条件や金融機関の判断は個社ごとに異なるため、実際の可否は相手先に直接ご確認ください。定款の作成・設立登記・組織変更の手続は司法書士および行政書士の業務であり、本記事はこれらの手続の代行や個別の法律判断を行うものではありません。組織変更に要する費用と期間は事案によって異なります。実際の設立にあたっては、司法書士または顧問税理士にご相談ください。本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
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