同一労働同一賃金2026年10月改正|経理への影響と対応

同一労働同一賃金2026年10月改正|経理への影響と対応 特別業務
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税理士事務所の現場から

同一労働同一賃金が
2026年10月に変わります

家族手当・住宅手当の見直しは、給与計算と社会保険にはね返ります

同一労働同一賃金は、今回はじまる制度ではありません。根拠となるパートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日に施行され(中小企業は2021年4月1日から)、すでに5年以上運用されています。

2026年10月1日に行われるのは、その中身の見直しです。労働条件の明示事項が1つ追加され、判断の基準となる「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正され、企業に求められる説明の方法が具体的に指定されます。とくに影響が大きいのはガイドラインの改正で、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇について、これまで示されていなかった考え方が明記されました。

この改正は労務の話として説明されることがほとんどです。しかし実際には、経理が処理を引き受ける部分があります。家族手当や住宅手当をパート・有期雇用の方にも支給することになれば、支給額が変わるだけでは終わりません。社会保険の等級が動く可能性があり、残業代の単価も変わる可能性があります。

この記事では、まず制度の沿革と適用範囲を確認し、2026年10月に変わる3点を見たうえで、「どこまでなら不支給でよいのか」を厚生労働省の具体例で確認します。最後に手当を増やしたときに経理側で何が起きるかを整理します。10月まで残り約1か月半です。手当の棚卸しは、今からでも間に合います。
✓ 先に結論
制度自体は2020年4月から。今回は「中身の改正」です
パートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日施行(中小企業は2021年4月1日から適用)。今回はその施行規則と指針の改正です

今回の改正に、中小企業の猶予はありません
2026年10月1日から、企業規模を問わず一斉に適用されます。前回のような1年の猶予期間は設けられていません

改正は3つ。本体はガイドラインの改正です
明示事項の追加は1項目ですが、ガイドライン改正では家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が新たに示されました。実務への影響はこちらが大きくなります

経理側の影響は「手当を足して終わり」ではありません
標準報酬月額の随時改定割増賃金の算定基礎に波及します。ここを見落とすと、あとから修正が必要になります
POINT01
前提:この制度は2020年から動いています
「新しく始まる制度」と誤解すると、対応の要否を読み違えます

本題に入る前に、制度の位置づけを確認します。ここを取り違えたまま読むと、自社に対応が必要かどうかの判断を誤ります。

「同一労働同一賃金」は働き方改革関連法の一環として導入されたもので、根拠法はパートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)です。

⚠ これまでの施行スケジュール
2020年4月1日/パートタイム・有期雇用労働法 施行(大企業)
2021年4月1日中小企業にも適用開始(1年の猶予期間が設けられていました)
2020年4月1日派遣労働者については労働者派遣法の改正で対応。こちらは企業規模による猶予がなく、一斉に適用されました

つまりすでに5年以上運用されている制度であり、不合理な待遇差の禁止(第8条)や、待遇差について説明を求められたら説明する義務(第14条)は、現時点ですでに存在しています。

そのうえで、厚生労働省は今回の改正の趣旨を次のように説明しています。

⚠ 改正の背景(厚生労働省)
「同一労働同一賃金は、『働き方改革関連法』の一環として2020年4月から順次施行されました。これにより待遇改善は着実に進んできましたが、依然として課題も残されています。今回の改正は、公正な待遇の確保に向けた取組をさらに進めるためのものです。」
✕ 今回は「中小企業の猶予」がありません
ここが、前回との最大の違いです。

2020年の施行時には、中小企業に1年の猶予(2021年4月適用)がありました。そのため「今回も中小企業は先延ばしだろう」と考えてしまいがちですが、2026年10月の改正に、企業規模による猶予は設けられていません。

大企業も中小企業も、2026年10月1日から一斉に適用されます。

なお、2021年4月から適用対象になった「中小企業」の範囲は、中小企業基本法の区分に沿って次のように定められていました。今回は全企業が対象のためこの区分で対応の要否は分かれませんが、自社がどちらとして扱われてきたかを確認する際の参考になります。

✓ 中小企業の範囲(参考)
資本金の額または出資の総額常時使用する労働者数いずれかが基準を満たせば中小企業に該当します(事業場単位ではなく企業単位で判断)。

製造業その他/資本金3億円以下 または 労働者300人以下
卸売業/資本金1億円以下 または 労働者100人以下
サービス業/資本金5,000万円以下 または 労働者100人以下
小売業/資本金5,000万円以下 または 労働者50人以下

※資本金等がない場合は労働者数のみで判断します

ここまでが前提です。以下、2026年10月に何が変わるのかを3つのポイントで見ていきます。

POINT02
雇い入れ時に明示する項目が1つ増えます
契約更新のたびに必要になるため、対象人数は思ったより多くなります

まず、現在の義務を確認します。パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときは、4つの事項を書面の交付等により明示することが義務付けられています。

✓ 現在の明示事項(4項目)
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・相談窓口

これらは労働基準法で定められた明示事項とは別に、パートタイム・有期雇用労働法で上乗せされているものです。

2026年10月から、ここに1項目が加わります。厚生労働省は次のように説明しています。

⚠ 追加される明示事項(厚生労働省)
「今回の改正により、新たに『待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる』旨を明示することが必要となります。パートタイム・有期雇用労働者に対して正社員との待遇の違いについて会社に説明を求めることができる旨を明示し、疑問が生じた際に相談を促すことを目的としています。」

ここで注意したいのは、説明そのものを事前にする義務ではないという点です。求められたときに説明する義務はすでに現行法(第14条)にあります。今回追加されるのは、「求めることができますよ」と伝えておく義務です。

⚠ ただし「1文足せば終わり」ではありません
この明示事項の追加だけを見ると、対応は書面に1文を加えるだけに見えます。実際、この項目単体ではそのとおりです。

しかし今回の改正は3つが同時に入ります。この明示(POINT 02)は「説明を求められる機会を増やす」ための入口であり、求められた後に何を答えるかを決めるのがガイドライン改正(POINT 03)、どう答えるかを定めるのが説明方法の指定(POINT 04)という関係になっています。

実務の負担が大きいのはPOINT 03です。明示だけ対応して手当の点検を後回しにすると、説明を求められたときに答えられない状態になります。
✕ 「新規採用のときだけ」と考えると漏れます
厚生労働省は明示のタイミングについて、「労働契約の更新時も含みます」と明記しています。

つまりすでに在籍しているパート・有期雇用の方も、契約を更新する時点で対象になります。1年契約の方が多い職場では、10月以降の更新分から順次、対象者が発生していくことになります。

新規採用が少ない会社ほど「うちは関係ない」と判断しがちですが、更新のたびに必要になるため、実務量は継続的に発生します。労働条件通知書のひな型を直しておけば、以後は自動的に対応できます。
✓ いま準備できること
労働条件通知書・雇用契約書のひな型に1文を追加するだけで、この項目自体の対応は完了します。

様式を給与システムや労務管理システムから出力している場合は、システム側の改修時期を確認してください。10月1日以降の交付分から必要になります。

書面の交付以外に、労働者が希望した場合はFAXや電子メール等でも明示できるとされています(現行の4項目と同じ扱いです)。
POINT03
家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の扱いが明確になりました
「条件付き」である点を正確に読むことが重要です

今回の改正でもっとも実務に影響するのが、「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正です。このガイドラインは、どのような待遇差が不合理と認められるのかを具体例とともに示したものです。

厚生労働省は、改正の趣旨を次のように説明しています。

⚠ ガイドライン改正の内容(厚生労働省)
「今回の改正では、裁判例などを踏まえ、賞与、退職手当、各種手当、福利厚生についての記載が見直され、その考え方がより明確化されました。」

新たに考え方が示されたもののうち、実務でよく出てくるのが家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の3つです。

それぞれ、原文にあたって正確に確認します。いずれも「無条件で支給せよ」ではなく、条件が付いています。

✓ 家族手当
「相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない」とされました。

判断の分かれ目は「相応に継続的な勤務が見込まれるか」です。短期の契約で反復更新の予定がない方と、実質的に長く勤務している方とでは扱いが変わり得ます。

自社の家族手当が「扶養親族がいること」を支給要件にしている場合、雇用形態だけを理由に対象外としている運用は、見直しの検討対象になります。
✓ 住宅手当
「正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない」とされました。

こちらは「転居を伴う配置の変更があるかどうか」が分かれ目です。転勤のないパート・有期雇用の方について、転勤のある正社員と支給に差があること自体が直ちに問題になるわけではありません。

自社の住宅手当が何に対して支払われているのか——転勤に伴う住居費の補填なのか、住居費一般の補助なのか——を規程で確認する必要があります。ここが曖昧なままだと、説明を求められたときに答えられません。
✓ 夏季冬季休暇
「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない」とされました。

原則の記載は家族手当・住宅手当よりシンプルで、条件が書かれていません。ただし具体例のほうには限定があります。「問題となる例」として挙げられているのは「繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者」に付与していないケースです。

つまり繁忙期だけの短期契約の方まで当然に対象になるとは書かれていません。原則だけを読むと「全員に付与が必要」と見えますが、具体例まで含めて読む必要があります。
✕ 「手当の名前」だけで判断しない
もっとも起きやすい誤りが、手当の名称だけを見て当てはめてしまうことです。

ガイドラインが見ているのは「その手当が何に対して支払われているか」(性質・目的)であって、名称ではありません。「住宅手当」という名前でも、実質的に基本給の一部として全員に一律支給しているのであれば、判断は変わってきます。

逆に、名称が「特別手当」であっても中身が家族手当なら、家族手当として考えることになります。まず自社の手当を、名称ではなく支給要件で分類し直すところから始めてください。
⚠ 支給しないなら、説明できる理由が必要です
ガイドラインに沿わない待遇差がある場合、直ちに違法と判断されるわけではありません。不合理かどうかは、職務の内容・責任の程度・配置変更の範囲などを踏まえて判断されます。

ただし今回の改正では、説明を求めることができる旨の明示(POINT 02)と説明方法の指定(POINT 04)が同時に入ります。つまり「説明を求められる場面が増える」前提で設計されています。

差を残すこと自体は選択肢です。問題は、その理由を書面で説明できるかどうかです。ここが整理されていない状態が、いちばんリスクが高くなります。
CASE
実例:どこまでなら不支給でよいのか
厚生労働省のガイドラインが挙げている具体例をそのまま見ます

ここまでは言葉での説明が続きました。「では、うちのパートに賞与を出していないのは問題なのか」——実務でいちばん知りたいのはここだと思います。

この点について、ガイドライン(指針)には「問題とならない例」と「問題となる例」が具体的に書かれています。抽象的な基準だけでなく、A社・X・Yという登場人物を使った事例の形で示されているため、自社に当てはめて考えやすくなっています。

⚠ 読み方のコツ
具体例を読むときは、結論(支給する・しない)ではなく、その理由の部分を見てください。

同じ「不支給」でも、問題にならない例と問題になる例の両方があります。分かれ目は「何を理由に差をつけているか」「その理由が実態と合っているか」です。

以下、実務で問い合わせの多い賞与・家族手当・住宅手当について、指針の具体例を引用します。

✓ 賞与:不支給でも問題とならない例
「A社においては、通常の労働者であるXは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、通常の労働者であるYや、有期雇用労働者であるZは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、Xに対しては、賞与を支給しているが、YやZに対しては、待遇上の不利益を課していないこととの見合いの範囲内で、賞与を支給していない。」

ポイントは「責任を負っているか」です。目標未達のときに不利益(降給・降格など)を受ける立場のXには賞与があり、そうした責任を負わないZには賞与がない——この対応関係があれば問題とならない、という整理です。

注目すべきは、比較対象に「通常の労働者であるY」が入っていることです。正社員の中にも賞与が支給されない人がいるという設定になっています。つまり雇用形態で分けているのではなく、責任の有無で分けているという構造が示されています。
✕ 賞与:問題となる例
「賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献がある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給していない。」

「賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。」

後者がとくに重要です。「貢献に応じて支給する」と説明しているのに、実際には正社員なら貢献に関係なく全員に出している——この場合、実質的に雇用形態で分けていることになり、問題となる例に挙げられています。

自社が後者の状態になっていないかは、確認する価値があります。「正社員には一律で出している」なら、その賞与は貢献への対価とは言いにくくなります。
⚠ 賞与についての留意事項(改正で追記された部分)
今回の改正では、賞与に「注」が新設されました。長澤運輸事件の最高裁判決を踏まえたものです。

「賞与については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等の様々な性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、(中略)均衡のとれた内容の賞与を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、(中略)基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。」

「賞与を出さない代わりに時給を高くしている」という説明が成り立つ場面があることが示されています。ただし「労使交渉を経て」という条件が付いている点に注意してください。会社が一方的に決めただけでは、この理屈は使いにくくなります。

なお退職手当についても同じ趣旨の注が新設されました(メトロコマース事件を踏まえたもの)。
✓ 家族手当:不支給でも問題とならない例
「A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返していない等、相応に継続的な勤務が見込まれない有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。」

問題となる例はこの裏返しです。

「A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。」

分かれ目は「更新を繰り返しているかどうか」だけです。長く勤めている方に出していなければ問題、短期の方に出していなくても問題ではない——という整理になっています。判断基準としては、かなり明快な部類です。
✕ 住宅手当:実態が伴わないと問題になります
まず問題とならない例です。

「A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれる通常の労働者であるXには住宅手当を支給しているが、一方で、有期雇用労働者であるYには転居を伴う配置の変更が見込まれないため、住宅手当を支給していない。」

一方、問題となる例はこうです。

「A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれることを理由として、通常の労働者であるXに対し、住宅手当を支給しており、当該変更が見込まれないことを理由として、有期雇用労働者であるYには住宅手当を支給していないが、A社では実態として通常の労働者に対しても、転居を伴う配置の変更を命じていない。」

ここが住宅手当の要注意ポイントです。規程上は転勤ありでも、実際には何年も誰も転勤していない——この場合、「転勤があるから」という理由が実態と合っておらず、問題となる例に該当します。

「規程にどう書いてあるか」ではなく「実際に運用しているか」で判断されることが、はっきり示されています。
⚠ 具体例に載っていなくても、対象外ではありません
今回の改正では、指針の「基本的な考え方」に次の趣旨が明記されました。

「この指針に原則となる考え方が示されていない待遇や、具体例に該当しない場合であっても、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の待遇の相違が不合理と認められる等の可能性があり、その場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる。」

「ガイドラインに書かれていないから大丈夫」とは言えないという念押しです。自社独自の手当についても、支給の目的に照らして説明できるかを確認しておく必要があります。
✕ 「人材確保のため」という理由だけでは足りません
あわせて、今回の改正で次の内容が追記されています。

「(前略)当該待遇を行う目的に『通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る』等の目的があったとしても、(中略)当該目的があることのみをもって直ちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではない。」

「正社員を確保・定着させるため」という説明は、それだけでは理由にならないということです。実務では使われがちな説明だけに、注意が必要です。
✓ 原典で確認する
ここで引用した具体例は、厚生労働省の労働政策審議会に提出されたガイドライン見直しの新旧対照表に記載されているものです。

同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)(厚生労働省・PDF)

左が改正後、右が改正前の対照表になっており、どこが新設・変更されたのか、根拠となった最高裁判決は何かまで欄外に記載されています。自社の手当を点検する際は、この資料が最も確実です。

あわせて、厚生労働省は不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアルを業界別に公開しており、手順に沿って自社の待遇を点検できる様式が用意されています。同一労働同一賃金特集ページから入手できます。
POINT04
説明の方法が指定されます。口頭だけでは足りません
「望ましい」とされているだけの項目と混同しないよう注意します

3つ目の改正は、企業に求められる雇用管理上の措置です。ここには義務として求められるもの望ましいとされるものが混在しているため、分けて読む必要があります。

⚠ 説明の方法(厚生労働省)
「パートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員との待遇の相違等について説明する際には、『資料を活用し、口頭により説明する方法』または『説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法』のいずれかにより説明することが必要になります。」

ポイントは「いずれかにより説明することが必要」とされている点です。資料を用意せず口頭だけで説明する、という方法は想定されていません。

実務上は、説明用の資料をあらかじめ作っておくのが現実的です。求められてから作ると時間がかかり、内容も担当者によってぶれます。

✓ 賃金決定についての考え方
あわせて、「賃金を決定する際には、職務の内容や成果、意欲、能力、経験をはじめとする要素を公正に評価し、昇給に反映するなど、公正な評価に基づいて決定することが求められます」とされています。

パート・有期雇用の方の賃金を「時給◯◯円で据え置き」としてきた職場では、評価の仕組みそのものを問われる可能性があります。
✕ 「ウェブサイトでの公表」を義務と誤解しない
今回の改正には、正社員等への転換制度に関する項目も含まれています。ここは表現に注意が必要です。

厚生労働省の記載は「正社員等への転換制度の内容や転換実績などをパートタイム・有期雇用労働者に明示するよう努めることや、それらをウェブサイトで定期的に公表することが望ましい」です。

明示は「努める」(努力義務)、ウェブ公表は「望ましい」(推奨)であり、いずれも義務ではありません。解説記事によっては義務のように読める書き方をしているものがありますが、原文はそうなっていません。

やらなければ違反になるものやったほうがよいものを分けて把握しないと、対応の優先順位を誤ります。
⚠ 改正の位置づけ
今回の改正は、2020年4月から順次施行された働き方改革関連法の延長線上にあります。厚生労働省は「待遇改善は着実に進んできましたが、依然として課題も残されています。今回の改正は、公正な待遇の確保に向けた取組をさらに進めるためのものです」としています。

制度が新しく始まるのではなく、すでにある枠組みの中身が具体化されたという理解が正確です。
POINT05
手当を増やすと、社会保険と残業代に波及します
ここが経理側で見落とされやすい部分です

ここからが、労務の解説ではあまり触れられない部分です。家族手当や住宅手当を新たに支給すると、支給額が増えるだけでは終わりません。2つの方向に波及します。

⚠ 波及その1:社会保険の標準報酬月額
家族手当・住宅手当は、労働の対償として経常的・反復的に支払われるものであれば報酬に含まれます。つまり標準報酬月額の計算対象です。

手当を新設して固定的賃金が増えた場合、随時改定(月額変更届)の対象になる可能性があります。随時改定は次の3つをすべて満たしたときに該当します。

(1) 固定的賃金の変動があること——手当の新設はこれに当たります
(2) 変動月以後3か月の平均から算出した標準報酬月額に、従前と2等級以上の差が生じること
(3) 3か月とも支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)であること

10月から支給を開始した場合、10月・11月・12月の平均で判定し、該当すれば2027年1月改定という流れになります。
✕ 手当を足したまま、届出を忘れる
もっとも起きやすい事故がこれです。給与システムに手当を追加する作業と、月額変更届を出す作業は別だからです。

手当の追加は10月に行い、随時改定の判定は12月の給与が確定してからになります。2か月以上あいだが空くため、担当者の記憶から抜けやすいという構造があります。

手当を新設した時点で、「1月に随時改定の判定を行う」とカレンダーに入れておいてください。ここは自動では出てきません。

なお、パート・有期雇用の方が社会保険の被保険者かどうかは別途の判断になります。被保険者でない方であれば、この論点は生じません。
⚠ 波及その2:割増賃金(残業代)の算定基礎
こちらは、手当の設計次第で結論が変わるため、より注意が必要です。

労働基準法では、割増賃金の算定基礎から除外できる手当が限定的に定められており、家族手当と住宅手当はその中に含まれています。

ただし除外できるのは、名称ではなく実質で判断されます。扶養家族の人数に応じて支給する家族手当、住宅費用に応じて支給する住宅手当は除外できますが、扶養の有無にかかわらず一律に支給する場合や、住宅費用と無関係に定額で支給する場合は、除外できず算定基礎に含まれると解されています。

つまり「一律◯円」という設計にすると、残業代の単価が上がります。
✓ 支給設計を決める前に確認すること
1. その手当の支給要件を、金額の根拠まで書けるか
「扶養親族1人につき◯円」なのか「扶養があれば一律◯円」なのかで、割増賃金の扱いが変わります

2. 社会保険の被保険者かどうか
被保険者であれば、標準報酬月額への影響を見込む必要があります

3. 増加額は「手当の額」だけではない
手当 + 社会保険料の会社負担分 + 割増賃金の増加分が実際のコストです。手当の額だけで試算すると不足します

4. 支給開始月を、いつにするか
10月改正だからといって10月支給と決まっているわけではありません。ただし改正後に不合理な待遇差があると判断されれば、その状態が続いていること自体が問題になります
✓ 勘定科目は変わりません。変わるのは金額です
家族手当・住宅手当は給与の一部ですので、勘定科目は通常の給与と同じです。手当のために新しい科目を作る必要はありません。

ただし、増加額を後から集計できるようにしておくと、次年度の予算や助成金の申請時に役立ちます。勘定科目を分けなくても、給与システムの支給項目を分けておけば足ります。

なお、これらの手当は原則として給与所得となり、源泉徴収の対象です。通勤手当のような非課税枠はありません。
⚠ 決算をまたぐ時期に手当を増やす場合
給与は締日と支給日がずれるため、決算期をまたぐ分について未払計上を行っている会社が多くあります。

手当を新設すれば、この未払計上の金額も変わります。前期と同じ金額で計上しないよう注意してください。

使用する科目や計上のしかたは会社ごとに異なります。自社の従来の処理に合わせてください。
POINT06
10月までにやること
手当の棚卸しから始めます

残り期間で優先すべき順に並べます。全部を10月1日までに終わらせる必要はありませんが、1と2は先に済ませておくと後が楽になります。

✓ 手順1:手当の棚卸し(最優先)
自社で支給しているすべての手当について、次の3点を一覧にします。

・手当の名称
・誰に支給しているか(正社員のみ/全員/条件付き)
・支給要件と金額の根拠(規程のどこに書いてあるか)

この一覧がないと、以降のすべての判断ができません。賃金規程を見ながら30分程度で作れます。まずここからです。
✓ 手順2:労働条件通知書のひな型を直す
POINT 02の明示事項を追加します。1文の追記で対応できます。

10月1日以降に雇い入れる方と、契約を更新する方が対象です。9月中に更新の予定がある方は現行のひな型で問題ありませんが、10月以降の更新分から必要になります。
✓ 手順3:待遇差の理由を書き出す
手順1の一覧をもとに、正社員と差がある項目それぞれについて、その理由を1〜2行で書きます。

職務の内容が違うのか、責任の範囲が違うのか、配置変更の範囲が違うのか——ここで書けない項目が、見直しの候補です。

この作業がそのまま、POINT 04の説明用資料になります。二度手間になりません。
⚠ 手順4:支給を変える場合はコストを試算する
手当の額 + 社会保険料の会社負担分 + 割増賃金の増加分で計算します。

あわせて、随時改定の判定時期(支給開始から3か月後)をカレンダーに入れておきます。

支給額の変更は賃金規程の改定を伴うことが多く、就業規則の変更届が必要になる場合があります。ここは社会保険労務士に確認してください。
✕ 「うちはパートがいないから関係ない」で終えない
対象はパートタイム労働者と有期雇用労働者です。「アルバイト」「契約社員」「嘱託」など、社内での呼び方は関係ありません。

1週間の所定労働時間が正社員より短い方、または期間の定めのある労働契約の方がいれば対象です。定年後に再雇用した嘱託の方も、有期契約であれば含まれます。

社内の呼称ではなく、契約の中身で確認してください。
まとめ:手当の棚卸しから始める
POINT 01
制度は2020年4月から
→ 今回の改正に猶予はない
POINT 02
本体はガイドライン改正
→ 名称でなく支給要件で見る
実例
不支給でよい例もある
→ 分かれ目は責任と実態
POINT 04
標準報酬月額に波及
→ 3か月後に随時改定の判定
POINT 05
一律支給は残業代が上がる
→ 割増賃金から除外できない
POINT 06
コストは手当の額だけでない
→ 社会保険料と割増賃金を加算
手当の見直しで、経理側の影響が読めないとき

手当を増やしたときの社会保険料や割増賃金への影響は、実際の給与データに当てはめてみないと金額が見えません。試算の考え方や、随時改定の判定でつまずいたときは、第三者に一度確認してもらうと整理がつくことがあります。

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本記事は、厚生労働省の公表資料(Webマガジン、および労働政策審議会同一労働同一賃金部会に提出された「同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)」新旧対照表)をもとに、2026年8月時点の情報を整理したものです。「問題とならない例」「問題となる例」として引用した文章は、同新旧対照表からの引用です。パートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日施行(中小企業は2021年4月1日から適用)、今回の改正施行規則および改正指針は2026年10月1日から企業規模を問わず適用されます。中小企業の範囲は中小企業基本法の区分によります。

給与に関する会計処理の科目や計上方法は、企業の会計方針や従来の処理によって異なります。自社の従来の処理を確認のうえご判断ください。

個々の待遇差が不合理と認められるかどうかは、職務の内容・責任の程度・配置変更の範囲などを踏まえた個別の判断となります。就業規則・賃金規程の改定、労働条件通知書の記載内容、割増賃金の算定基礎に関する個別の判断は、社会保険労務士または管轄の労働局・労働基準監督署へご確認ください。社会保険の資格や届出に関する個別の判断は、管轄の年金事務所へご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。

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