住民税の勘定科目は?従業員・個人事業主・法人別の仕訳をやさしく解説

住民税の勘定科目は?従業員・個人事業主・法人別の仕訳をやさしく解説 日常業務
勘定科目・仕訳の基本

住民税の勘定科目は?
従業員・個人事業主・法人で違う仕訳をやさしく解説

「預り金」「事業主貸」「法人税等」——同じ住民税でも、立場で答えが変わります

住民税 従業員から天引きした分 → 預り金 個人事業主本人の分 → 事業主貸(経費NG) 法人にかかる分 → 法人税、住民税及び事業税
6月に住民税の決定通知書が届き、給与からの天引き額も新年度の金額に切り替わったばかり。この時期は「住民税って、どの勘定科目で仕訳すればいいの?」という疑問が増えます。実はこの質問、「誰の住民税か」で答えが3通りに分かれます。従業員の給与から天引きした分は「預り金」、個人事業主本人の分はそもそも経費にならず「事業主貸」、法人にかかる分は「法人税、住民税及び事業税」。この記事では、住民税のしくみ(特別徴収と普通徴収)から、立場別の仕訳例、間違えやすいポイントまで、経理初心者の方向けにやさしく整理します。
POINT01
まず基本。住民税とは? 「特別徴収」と「普通徴収」の違い
仕訳の前に、お金の流れを押さえると迷わなくなります

住民税とは、住んでいる自治体に納める道府県民税(都民税)と市区町村民税をあわせた呼び名です。前年1年間の所得をもとに税額が決まり、当年6月から翌年5月にかけて納めます(制度の詳細は総務省の個人住民税の解説ページにまとまっています)。納め方は2種類あります。

住民税の2つの納め方
  • 特別徴収(とくべつちょうしゅう): 会社が従業員の給与から毎月天引きし、翌月10日までに従業員の住む自治体へまとめて納付する方式。給与を支払う事業主は原則こちらが義務で、6月分から翌年5月分までの12回に分けて天引きします
  • 普通徴収(ふつうちょうしゅう): 自治体から届く納付書で本人が直接納付する方式。個人事業主やフリーランスはこちらで、納期は年4回(6月・8月・10月・翌1月の月末が多いですが、自治体により異なります)
✓ 「6月に金額が変わる」のはこのしくみのため
住民税は前年の所得で計算されるので、毎年6月が「新年度の1回目」です。給与明細の住民税額が6月から変わった、6月だけ端数調整で他の月と金額が違う——これはどちらも正常です。逆に言うと、今の時期(7月)は新年度の天引き・納付が始まった直後で、仕訳や納付ミスが起きやすいタイミングです。
POINT02
従業員から天引きした住民税の勘定科目は「預り金」
会社の費用ではなく、従業員のお金を「一時的に預かっている」だけ

特別徴収で給与から天引きした住民税は、勘定科目「預り金(あずかりきん)」で処理します。天引きしたお金は会社のものではなく、従業員に代わって自治体へ納めるまでの間、預かっているだけだからです。したがって会社の費用(経費)には一切なりません

仕訳例①: 給与支給時(給与30万円、住民税2万5千円を天引き)
  • (借方)給与手当 300,000 / (貸方)普通預金 275,000・預り金(住民税)25,000
  • 実際には源泉所得税や社会保険料の預り金・法定福利費も並びますが、住民税部分だけ抜き出すとこの形です
仕訳例②: 翌月10日までに自治体へ納付したとき
  • (借方)預り金(住民税)25,000 / (貸方)普通預金 25,000
  • 天引きで増えた預り金が、納付でゼロに戻る——この繰り返しです。毎月の納付後に預り金(住民税)の残高がゼロになっているかを確認するだけで、天引き漏れ・納付漏れの両方に気づけます
⚠ 納期特例は「源泉所得税と住民税で期限が違う」に注意
給与の支払いを受ける人が常時10人未満(パート・アルバイト含む)の事業者は、申請して承認を受けると年2回にまとめて納付できる「納期の特例」を使えます。これは地方税法にもとづく全国共通の制度ですが、自動では適用されず、従業員が住んでいる市区町村ごとに申請書を出して承認を受ける必要があります。そして期限がややこしく、源泉所得税の納期特例は7月10日と翌年1月20日住民税(特別徴収)の納期特例は12月10日と翌年6月10日(6〜11月分を12月10日、12〜5月分を6月10日)。申請先も期限も違う、まったく別の制度です。「源泉所得税は7月に納めたから住民税もOK」という思い込みが納付漏れの定番パターンなので、両方の期限をカレンダーに登録しておきましょう。
POINT03
個人事業主本人の住民税は経費にならない。「事業主貸」で処理
「租税公課」にしてしまうのが一番多い間違いです

個人事業主・フリーランス本人の住民税は、事業ではなく「個人」にかかる税金です。そのため必要経費にはできません。事業用の口座や現金から納付した場合は、勘定科目「事業主貸(じぎょうぬしかし)」——プライベートの支出として処理します。

仕訳例: 事業用口座から住民税5万円を納付した場合
  • (借方)事業主貸 50,000 / (貸方)普通預金 50,000
  • プライベートの口座や財布から納付した場合は、事業のお金が動いていないので仕訳自体が不要です
よくある間違い(これはNG)
  • 本人の住民税を「租税公課」で経費にしてしまう(所得税・住民税は経費にできない税金の代表です)
  • 国民健康保険料・国民年金とまとめて「なんとなく経費」に入れてしまう(これらも経費NG。社会保険料控除など「所得控除」で反映します)
  • 経費にならないからと事業用口座からの納付を帳簿に記録しない(口座残高が帳簿と合わなくなります。事業主貸で必ず記帳)

まぎらわしいのは、同じ「税金」でも経費にできるものがあることです。個人事業税は経費OK(租税公課)、事業で使う部分の固定資産税や自動車税、収入印紙も経費にできます。「この税金はどっち?」と迷ったら、当サイトの無料ツールで確認できます(所得税・住民税の勘定科目 / 個人事業税の勘定科目 / 国保・年金の勘定科目)。

✓ 覚え方は「事業にかかる税金は経費、自分にかかる税金は経費NG」
所得税・住民税は「もうけた本人」にかかる税金なので経費になりません。一方、個人事業税は「事業をしていること」にかかる税金なので経費になります。この線引きを1つ覚えておくと、他の税金でも応用が利きます。
POINT04
法人の住民税は「法人税、住民税及び事業税」で処理
赤字でもかかる「均等割」と、従業員分との混同に注意

会社そのものにかかる法人住民税は、勘定科目「法人税、住民税及び事業税」(会計ソフトによっては「法人税等」)で処理します。決算で税額が確定したら「未払法人税等」を計上し、納付時に取り崩すのが基本の流れです。

仕訳例: 決算時と納付時
  • 決算時: (借方)法人税、住民税及び事業税 300,000 / (貸方)未払法人税等 300,000
  • 納付時(申告期限まで): (借方)未払法人税等 300,000 / (貸方)普通預金 300,000
  • 中間納付をしたとき: いったん「仮払法人税等」で処理しておき、決算で確定額と精算する方法が分かりやすくおすすめです
  • 赤字でも「均等割」はかかる: 法人住民税には所得に関係なくかかる均等割があり、小規模な会社でも年7万円程度(都道府県2万円+市区町村5万円が標準的な目安)は発生します。赤字だからゼロ、にはなりません
  • 従業員分と会社分を混同しない: 従業員から特別徴収した住民税は「預り金」(POINT 02)、会社自身の法人住民税は「法人税、住民税及び事業税」。同じ「住民税」という名前でも勘定科目はまったく別です
  • 延滞金は損金にできない: 納付が遅れて発生した延滞金は、経費(損金)として認められません。本税と混ぜずに分けて記帳しておくと、申告時の調整がスムーズです
⚠ 資金繰りには「未払法人税等」を織り込む
法人税等は決算から2ヶ月後にまとめて出ていくお金です。帳簿上の利益が出ているのに納税資金が足りない——を避けるため、月次の資金繰り表には未払法人税等の納付予定を必ず入れておきましょう。
まとめ: 住民税の勘定科目は「誰の税金か」で決まる
POINT 01
住民税は前年所得ベース
→ 特別徴収(天引き)と普通徴収の2方式
POINT 02
従業員から天引きした分
→ 「預り金」。会社の経費にはならない
POINT 03
個人事業主本人の分
→ 経費NG。「事業主貸」で処理
POINT 04
法人にかかる分
→ 「法人税、住民税及び事業税」。均等割は赤字でも

住民税の仕訳で迷ったら、まず「これは誰にかかっている税金か?」を考えてください。従業員なら預り金、事業主本人なら事業主貸、法人なら法人税等——この3択に整理するだけで、ほとんどのケースは迷わなくなります。

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この記事は、2026年7月時点の制度をもとに、住民税の一般的な経理処理を解説しています。普通徴収の納期や均等割の金額などは自治体によって異なる場合があります。また、税務上の取り扱いは個々の状況によって判断が分かれることがあるため、実際の申告・処理にあたっては税務署または税理士にご確認ください。
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