副業20万円以下でも
「何もしなくていい」ではありません
20万円ルールは所得税だけの話。住民税には、この免除がありません
②ただし確定申告をすれば、住民税の申告は不要になります。データが市区町村へ自動で回るためです
③「20万円」は売上ではなく所得(売上−経費)で判定します。振込額で判断すると、逆転することがあります
まず、20万円という数字がどこから来ているのかを確認します。国税庁が公開している給与所得者の確定申告の説明には、確定申告が必要な人として次のように書かれています。
出典: 国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
ここで注意したいのは、これが「所得税の確定申告が必要かどうか」を定めた記載であるということです。裏を返せば、20万円以下の人は「所得税の確定申告をしなくてよい」だけであって、他の税金について何かが免除されているわけではありません。
「20万円以下だから大丈夫」と考える前に、まず自分の副業が給与なのか報酬なのかを確認してください。給与明細が出るなら給与、クラウドソーシングや販売・請負なら報酬です。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。住民税の申告義務は地方税法317条の2という条文に定められていますが、そこには20万円という数字が一切出てきません。
条文は「申告書を提出しなければならない」と定めたうえで、ただし書きで提出しなくてよい人を挙げています。その中心部分を抜き出すと、次のようになっています。
読みにくい条文ですが、核心は「給与所得以外の所得を有しなかった者」という部分です。つまり住民税の申告をしなくてよいのは、給与以外の所得がまったくなかった人だけ、ということになります。
したがって、副業の所得が1円でもあれば、この免除には当てはまりません。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告義務は残ります
なお条文の末尾には「当該市町村の条例で定めるもの」という一節もあり、細かい取り扱いは自治体ごとに条例で決められる構造になっています
「そんなの聞いたことがない」と思われた方、それが普通です。実際のところ、住民税の申告だけをきちんとしている人は、現場でもあまり見かけません。だからこそ、知っているだけで「うっかり無申告」を避けられます。
ここまで読んで「面倒なことになった」と感じた方もいるかもしれません。ただ、対応そのものは難しくありません。選択肢は2つだけです。
- ① 住民税の申告だけをする: お住まいの市区町村の窓口やサイトで手続きします。申告書の様式は自治体ごとに用意されています
- ② 所得税の確定申告をしてしまう: 確定申告をすれば、住民税の申告は不要になります。申告データが市区町村へ回るためです
さらに、取引先が源泉徴収をしていた場合は、確定申告をすると税金が戻ってくることがあります。報酬から10.21%が引かれていた方は、確定申告のほうが金額面でも有利になる可能性があります
実際、「自分は申告義務がない」と思って放置していた方が、よく見ると源泉徴収で税金を払いすぎていて、申告したら数千円戻ってきた——というケースはよくあります。「義務がない」と「申告しないほうが得」は、別の話です。
20万円ルールのもう1つの誤解が、金額の数え方です。判定に使うのは売上ではなく所得(もうけ)で、計算式は次のとおりです。
この「所得」が20万円を超えるかどうかで判定します。振り込まれた金額で判断すると間違えます
現場では、逆方向の勘違いが両方とも起こります。
- 売上25万円だから申告が必要だと思っていた→ 経費を引いたら所得17万円で、所得税の確定申告は不要だった
- 振込が18万9千円だから大丈夫だと思っていた→ 源泉徴収で引かれる前の報酬額は21万円で、経費が少なく、基準を超えていた
判定は必ず源泉徴収される前の報酬額から始めてください。5分の計算で、結論が逆転することがあります。
会社員の方から相談を受けるとき、税額の話より先に出てくるのが「申告したら会社に知られるのでは」という不安です。不安なまま「じゃあ申告しないでおこう」と考えてしまう方がいるので、順番を正しておきます。
「知られたくないから申告しない」は、不安を先送りしているだけで、金額を増やす方向に働きます。
そのうえで、住民税の徴収方法には選択肢があります。確定申告書の第二表「住民税・事業税に関する事項」に、給与以外の所得に係る住民税の徴収方法を選ぶ欄があり、ここで「自分で納付」を選ぶと、副業分の納付書が自宅に届く形になります。
最終的な取り扱いは市区町村の運用によります。「自分で納付」を選んでも、処理の過程で合算されることがあります
確実を期すなら、申告後に市区町村の住民税担当窓口へ確認する方法があります。タイミングは4月末頃が目安です。確定申告が終わっていて、まだ会社へ通知が届く前の時期にあたります
なお、勤務先の就業規則で副業がどう定められているかは、税金とは別の問題です。手続きの前に、まず就業規則を確認しておくことをおすすめします。
「メルカリで売ったら、全部が税金の対象になるの?」という不安もよく聞きます。答えはノーです。判定の分かれ目は売ったものが何かにあります。
- 家にあった不用品(着なくなった服・読み終わった本など): 生活に使っていたものの売却にあたるため、原則として課税されません
- 売るために作ったもの・仕入れたもの(ハンドメイド作品・転売品): もうけを得るための活動にあたるため、課税の対象になります
つまり「メルカリだから」ではなく「何を売ったか」で決まります。ハンドメイド販売は後者にあたるため、この記事の判定の対象になります。
→ 他の税金は免除されていない
→ 条文に金額の基準が出てこない
→ 手間が1回で済む
→ 振込額で見ると逆転する
→ 加算税と延滞税が乗る
→ 不用品か、売るためのものか
20万円という数字だけが一人歩きしていますが、それは所得税の話です。住民税には同じ免除がないため、副業の所得がある方は「確定申告をしてしまう」のがいちばん簡単な解決策になります。源泉徴収されていた方は、むしろ税金が戻ってくる可能性もあります。まずは1年分の「売上−経費」を、ざっくりでいいので計算してみてください。
この記事で扱ったのは、副業の税金のうち「申告が必要かどうか」の入口部分だけです。実際には、経費にできるものの線引き、扶養の壁との関係、開業届や青色申告の期限、そして申告の具体的な手順まで、順番に確認していくことになります。
それらを税理士事務所の現場で実際に見てきた失敗をもとに1冊にまとめました。毎年2月、「知らなかっただけ」で慌てる方を減らしたいという動機で書いた本です。
Kindle Unlimited の対象です。加入されている方は追加の費用なく読めます。全11章で、確定申告の要否判定・経費・会社への伝わり方・扶養の壁・申告の手順・現場で見た失敗事例までを扱っています。

