利益は出ているのにお金がない|起業でつまずく会社の共通点

利益は出ているのにお金がない|起業でつまずく会社の共通点 起業・副業
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税理士事務所の現場から

利益は出ているのに、お金がない
起業してつまずく会社に共通すること

成功例は再現しにくい。でも失敗は、同じ道をたどります

決算書の利益 出ている 手元の現金 足りない ギャップの原因 会社と個人のお金が混在 借入の返済は経費でない 税金の支払いが読めない
税理士事務所で多くの会社を見てきましたが、成功した会社の方法は、そのまま真似できないことがほとんどです。立地に恵まれた、時流に乗れた、人の縁があった——再現の難しい要素が絡みます。一方でつまずく会社には、驚くほど共通点があります。しかも同じ行動をとれば、同じ結果に近づいていきます。この記事では、実際に見てきたつまずきのパターン4つを軸に、避けられるものと避けにくいものを整理します。成功の再現より、失敗を避けるほうが確実だと考えているためです。
✓ 先に結論
  • いちばん多いのが資金管理。「利益は出ているのにお金がない」状態です
  • 原因は借入の返済が経費にならないことと、会社と個人のお金が混ざることです
  • 人員の過剰は、いちど採用すると元に戻すのが難しく、影響が長引きます
  • 成功例で共通していたのは立地を数字で決めていたことでした
CASE01
利益は出ているのに、お金がない
つまずきの入口として、いちばん多いパターンです

決算書や試算表を見ると利益が出ている。それなのに資金が足りず、支払いのたびに慌てる。この状態の会社を何度も見てきました。

やっかいなのは、利益が出ているために問題として認識されにくいことです。「儲かっているはずなのに、なぜか苦しい」という感覚のまま、発覚が遅れます。

利益と現金がずれる主な原因
  • 借入の返済が経費にならない → 元本の返済は費用ではありません。お金は出ていくのに利益は減らないため、利益に応じた税金と返済が重なります
  • 会社と個人のお金が混ざっている → どこまでが事業の支出か分からなくなり、実際に使える資金が把握できなくなります
  • 通帳の残高しか見ていない → 税金や社会保険料など、後からまとめて出ていく支払いに備えられません
⚠ 帳簿と現金が合っていないと、ここに気づけません
きちんとした経理担当がいない会社では、帳簿の残高と実際の現金が合っていないことがよくあります。この状態では、いま使えるお金がいくらなのかを把握できません。

不足を個人の資金で埋めたり、借入でしのいだりして一時的には回りますが、その状態が続くほど資金は回らなくなっていきます。
✓ 対策は「毎月、帳簿をつける」だけです
特別なことは必要ありません。月単位でも記帳を続けていれば、多くは早い段階で気づけます。自分で行うか、経理担当を置くか、税理士に月次で依頼するか。方法は問いません。

起業のつまずきとして、これはもっとも避けやすい部類です。事業の中身の問題ではなく、記録をつけているかどうかの問題だからです。
CASE02
最初の価格設定を下げすぎた
あとから上げるのが、想像以上に難しくなります

開業したばかりの時期は、お客様を集めるために価格を抑えることがあります。それ自体は理解できる判断です。

問題は、その水準が低すぎた場合です。赤字が続いても、値上げに応じてもらえない。上げればお客様が離れる。そのまま廃業したり、借入が膨らみ続けたりするケースを見てきました。

⚠ 値上げできない状態は、時間が経つほど固まります
安い価格で来ているお客様は、価格を理由に選んでいることが少なくありません。値上げすれば離れる可能性が高くなります。

そして付き合いが長くなるほど、値上げを切り出しにくくなります。「最初に決めた価格」は、あとから動かすのが難しいと考えておいてください。
✓ 価格以外で選ばれる理由をつくる
価格競争から抜けるには、価格以外の理由で選ばれる状態をつくる必要があります。品質、提供する内容、回数券や継続契約といった仕組み、そして立地。

いずれも時間がかかるため、認知を得ている間に手を打っておくという順序になります。

なお撤退する場合は、早いほど傷が浅く済みます。借入を重ねて続けると、抜け出しにくくなります。判断が遅れるほど選択肢は減っていきます。
⚠ 原価と人件費だけで価格を決めない
価格を決めるときに見落とされやすいのが、税金・家賃・営業以外にかかる経費です。原価と人件費だけを積み上げて価格を決めると、これらを回収できません。

どれか一つ抜けているだけで、あとから資金が苦しくなります。
CASE03
過剰投資は、戻すのが難しい順に重い
同じ「使いすぎ」でも、影響の長さが違います

過剰投資と一言で言っても中身はさまざまです。元に戻しにくいものほど、あとが苦しくなります。影響が長引く順に挙げます。

① 人員(いちばん戻しにくい)

採用しすぎた場合が、もっとも打開しにくくなります。雇う側にとっても、雇われた側にとっても不幸な状態だからです。

従業員に大きな落ち度がある場合を除き、解雇には手続きと費用がかかります。「明日から来なくていい」で終わる話ではありません。会社都合の解雇を行うと、その後の募集や、雇用に関する助成金にも影響が及びます。辞めた方の心情から、評判に響くことも考えられます。

② 事業に関係のない資産の購入

意外に思われるかもしれませんが、実際にあります。車が多く、ほかに投資用の不動産や金融資産というケースも見てきました。

共通しているのは、手持ちの資金を超えてローンや借入で購入していることです。売却してプラスマイナスゼロに収まればよいのですが、売っても借入が残ると、返済の原資がないまま負債だけが残ります。

③ 事務所の建設

事業が軌道に乗った後に起きやすいパターンです。「家賃がもったいない」という動機は自然なものですが、返済額が元の家賃を上回ってしまうことがあります。

頭金や返済年数を調整して家賃と同水準に収めるのが理想ですが、手元資金や金融機関との条件で、そうならない場合があります。そこに返済が経費にならないという論点(CASE 01)が重なり、利益と資金のバランスが崩れていきます。

④ 賃料(判断が難しい)

店舗や事務所の家賃が高すぎた場合です。ただしこれは他の3つと性質が違います。立地には投資する価値があるため(POINT 05を参照)、抑えればよいという話ではありません。

分かれ目は自己資金と回収までの見通しを、どれだけ具体的に計算できているかです。計算が難しければ、1年分の資金や追加の調達余力を確保した状態で始めるという備え方になります。

⚠ 借入で買うときは、売却したときに残るかを考える
②に共通する構造は、資産の価値より借入のほうが大きくなることです。買う前に「手放すことになったら、いくらで売れて、いくら残るか」を一度考えておくと、判断が変わることがあります。
CASE04
現状維持は、維持になりません
起業してしばらく経った会社に起きます

利益が安定してくると、「このままで大丈夫」と考えたくなります。人は変化を避けるもので、うまくいっているなら現状のままがいちばん楽です。

ただそのままで安定し続けることは、ほとんどありません。

⚠ 周りが変化している以上、現状維持は成り立ちません
考えてみてください。材料費も人件費も上がっています。その状況で売上だけが横ばいなら、実質的には後退しています。

かといって単価を上げれば、競合との関係が崩れて売上が落ちることもあります。「何もしない」が選べる状況ではないというのが実際のところです。

人口の減少、災害、感染症による生活様式の変化など、想像がつかないことも起こります。変化を続けている会社が残り、そうでない会社が細っていく——そういう場面を見てきました。
✓ ただし、力を入れる方向を間違えると逆効果です
変化が必要とはいえ、方向を誤ると失敗につながります。難しいのはここです。

現実的な進め方としては、自分の事業と関連が深く、初期費用を抑えられるものから試すことです。関連が薄く費用の大きいものは、CASE 03の②に近づいていきます。
POINT05
うまくいった会社に共通していたこと
再現しにくいものが多いなかで、これは真似できます

冒頭に書いたとおり、成功の理由はそのまま真似できないことが多いです。ただ一つだけ、手順として真似できるものがありました。

立地を、感覚ではなく数字で決めていた

ある飲食店の例です。出店を考えていた地域には、同じジャンルの店がすでにいくつかありました。そこでこの方は、市区町村や住宅街といった単位ではなく、道路を軸に出店先を探しました。

実際に確認していたこと
  • 道路の広さではなく交通量を基準にする
  • その道路のどの区間で交通量が多いかを調べる
  • その区間で借りられるテナントがあるかを確認する
  • 車や人が入りやすい場所かを見る
  • 同じジャンルの店の有無と、その客層を確認する

これらの条件に最も合う場所を選んで出店し、売上は順調に伸びました。味や価格帯も周辺の同業より上だったこともあり、その地域では上位に入る店になっています。

✓ 立地は「最初にできる広告」です
この考え方が使えるのは、自分の生活圏で起業する場合です。どの道が混むか、どの店が流行っているか、うまくいっていそうな会社はどこか——すでに持っている情報が、そのまま材料になります。
⚠ 「持っている土地だから」「家賃が安いから」で決めない
場所の選び方を誤ると、それを補うための広告宣伝費が必要になり、かえって高くつくことがあります。家賃を抑えたつもりが、別の費用で消えていくという形です。

場所を先に決めざるを得ない場合は、その場所で成立する業種や提供内容のほうを吟味してください。順序が逆になるだけで、検討すべきことは変わりません。
✓ そのほかに見てきた共通点
  • 新しい仕組みを早く取り入れていた/通信販売への切り替えや、交流サイトの活用で遠方から依頼が来るようになった例があります
  • 利益を周囲に還元していた/給与や賞与という形で明確に還元し、業績を伸ばしている会社があります。ただし資金繰りが苦しくなったときの余力は残しておく必要があります
  • 直接、仕事を頼みに行っていた/一緒に仕事をする機会があったときに、率直に依頼してみる。それで実際に受注につながった例を見ています
まとめ:勢いだけで進めない
STEP 01
毎月、帳簿をつける
→ 資金のずれに早く気づく
STEP 02
戻しにくいものから慎重に
→ 人員・借入での購入
STEP 03
立地は数字で決める
→ 最初にできる広告

どのつまずきにも共通していたのは、勢いだけで進めてしまったことでした。調べること、計画を立てること。ただし時間をかければよいというものでもありません。短い時間で精度を上げるほうが、結果につながりやすいと感じています。迷ったときは、精度より速さを優先したほうが動き出せる場面も多くあります。

「利益は出ているのにお金がない」に心当たりがあれば

資金のずれは、早く気づくほど手を打ちやすくなります。「帳簿と現金が合わない」「何にいくら使えるのか分からない」——こうした状態の整理を、税理士事務所での実務経験をもとにお手伝いしています。

お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします

※具体的な税額の計算・申告書の作成は税理士業務のため承っておりません。経理の整理や記帳の考え方についてのご相談を承っています。

本記事は2026年8月30日時点の情報にもとづいて作成しています。本記事で紹介した事例は、筆者が税理士事務所での実務で見聞きした範囲のものであり、業種や規模によって当てはまらない場合があります。個別の事情を特定できないよう、内容には変更を加えています。解雇に関する手続および助成金の受給要件は労働関係法令によるものであり、具体的な取扱いは社会保険労務士または所轄の労働局・ハローワークにご確認ください。借入金の返済のうち元本部分が費用に計上されないことは会計上の取扱いであり、利息部分の取扱いとは異なります。価格設定・出店場所の選定・投資判断についての記載は経営上の一般的な考え方を述べたものであり、成果を保証するものではありません。具体的な税額の計算および申告書の作成は税理士の業務です。実際の判断にあたっては、所轄の税務署または顧問税理士にご相談ください。本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
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