利益は出ているのに、お金がない
起業してつまずく会社に共通すること
成功例は再現しにくい。でも失敗は、同じ道をたどります
- いちばん多いのが資金管理。「利益は出ているのにお金がない」状態です
- 原因は借入の返済が経費にならないことと、会社と個人のお金が混ざることです
- 人員の過剰は、いちど採用すると元に戻すのが難しく、影響が長引きます
- 成功例で共通していたのは立地を数字で決めていたことでした
決算書や試算表を見ると利益が出ている。それなのに資金が足りず、支払いのたびに慌てる。この状態の会社を何度も見てきました。
やっかいなのは、利益が出ているために問題として認識されにくいことです。「儲かっているはずなのに、なぜか苦しい」という感覚のまま、発覚が遅れます。
- 借入の返済が経費にならない → 元本の返済は費用ではありません。お金は出ていくのに利益は減らないため、利益に応じた税金と返済が重なります
- 会社と個人のお金が混ざっている → どこまでが事業の支出か分からなくなり、実際に使える資金が把握できなくなります
- 通帳の残高しか見ていない → 税金や社会保険料など、後からまとめて出ていく支払いに備えられません
不足を個人の資金で埋めたり、借入でしのいだりして一時的には回りますが、その状態が続くほど資金は回らなくなっていきます。
起業のつまずきとして、これはもっとも避けやすい部類です。事業の中身の問題ではなく、記録をつけているかどうかの問題だからです。
開業したばかりの時期は、お客様を集めるために価格を抑えることがあります。それ自体は理解できる判断です。
問題は、その水準が低すぎた場合です。赤字が続いても、値上げに応じてもらえない。上げればお客様が離れる。そのまま廃業したり、借入が膨らみ続けたりするケースを見てきました。
そして付き合いが長くなるほど、値上げを切り出しにくくなります。「最初に決めた価格」は、あとから動かすのが難しいと考えておいてください。
いずれも時間がかかるため、認知を得ている間に手を打っておくという順序になります。
なお撤退する場合は、早いほど傷が浅く済みます。借入を重ねて続けると、抜け出しにくくなります。判断が遅れるほど選択肢は減っていきます。
どれか一つ抜けているだけで、あとから資金が苦しくなります。
過剰投資と一言で言っても中身はさまざまです。元に戻しにくいものほど、あとが苦しくなります。影響が長引く順に挙げます。
採用しすぎた場合が、もっとも打開しにくくなります。雇う側にとっても、雇われた側にとっても不幸な状態だからです。
従業員に大きな落ち度がある場合を除き、解雇には手続きと費用がかかります。「明日から来なくていい」で終わる話ではありません。会社都合の解雇を行うと、その後の募集や、雇用に関する助成金にも影響が及びます。辞めた方の心情から、評判に響くことも考えられます。
意外に思われるかもしれませんが、実際にあります。車が多く、ほかに投資用の不動産や金融資産というケースも見てきました。
共通しているのは、手持ちの資金を超えてローンや借入で購入していることです。売却してプラスマイナスゼロに収まればよいのですが、売っても借入が残ると、返済の原資がないまま負債だけが残ります。
事業が軌道に乗った後に起きやすいパターンです。「家賃がもったいない」という動機は自然なものですが、返済額が元の家賃を上回ってしまうことがあります。
頭金や返済年数を調整して家賃と同水準に収めるのが理想ですが、手元資金や金融機関との条件で、そうならない場合があります。そこに返済が経費にならないという論点(CASE 01)が重なり、利益と資金のバランスが崩れていきます。
店舗や事務所の家賃が高すぎた場合です。ただしこれは他の3つと性質が違います。立地には投資する価値があるため(POINT 05を参照)、抑えればよいという話ではありません。
分かれ目は自己資金と回収までの見通しを、どれだけ具体的に計算できているかです。計算が難しければ、1年分の資金や追加の調達余力を確保した状態で始めるという備え方になります。
利益が安定してくると、「このままで大丈夫」と考えたくなります。人は変化を避けるもので、うまくいっているなら現状のままがいちばん楽です。
ただそのままで安定し続けることは、ほとんどありません。
かといって単価を上げれば、競合との関係が崩れて売上が落ちることもあります。「何もしない」が選べる状況ではないというのが実際のところです。
人口の減少、災害、感染症による生活様式の変化など、想像がつかないことも起こります。変化を続けている会社が残り、そうでない会社が細っていく——そういう場面を見てきました。
現実的な進め方としては、自分の事業と関連が深く、初期費用を抑えられるものから試すことです。関連が薄く費用の大きいものは、CASE 03の②に近づいていきます。
冒頭に書いたとおり、成功の理由はそのまま真似できないことが多いです。ただ一つだけ、手順として真似できるものがありました。
ある飲食店の例です。出店を考えていた地域には、同じジャンルの店がすでにいくつかありました。そこでこの方は、市区町村や住宅街といった単位ではなく、道路を軸に出店先を探しました。
- 道路の広さではなく交通量を基準にする
- その道路のどの区間で交通量が多いかを調べる
- その区間で借りられるテナントがあるかを確認する
- 車や人が入りやすい場所かを見る
- 同じジャンルの店の有無と、その客層を確認する
これらの条件に最も合う場所を選んで出店し、売上は順調に伸びました。味や価格帯も周辺の同業より上だったこともあり、その地域では上位に入る店になっています。
場所を先に決めざるを得ない場合は、その場所で成立する業種や提供内容のほうを吟味してください。順序が逆になるだけで、検討すべきことは変わりません。
- 新しい仕組みを早く取り入れていた/通信販売への切り替えや、交流サイトの活用で遠方から依頼が来るようになった例があります
- 利益を周囲に還元していた/給与や賞与という形で明確に還元し、業績を伸ばしている会社があります。ただし資金繰りが苦しくなったときの余力は残しておく必要があります
- 直接、仕事を頼みに行っていた/一緒に仕事をする機会があったときに、率直に依頼してみる。それで実際に受注につながった例を見ています
→ 資金のずれに早く気づく
→ 人員・借入での購入
→ 最初にできる広告
どのつまずきにも共通していたのは、勢いだけで進めてしまったことでした。調べること、計画を立てること。ただし時間をかければよいというものでもありません。短い時間で精度を上げるほうが、結果につながりやすいと感じています。迷ったときは、精度より速さを優先したほうが動き出せる場面も多くあります。
資金のずれは、早く気づくほど手を打ちやすくなります。「帳簿と現金が合わない」「何にいくら使えるのか分からない」——こうした状態の整理を、税理士事務所での実務経験をもとにお手伝いしています。
※具体的な税額の計算・申告書の作成は税理士業務のため承っておりません。経理の整理や記帳の考え方についてのご相談を承っています。

