償却資産の申告
特例で経費にしても対象
毎年1月末が期限の、市区町村への申告です。少額減価償却資産の特例で経費にしたパソコンなどが漏れやすい理由と、申告する資産・しない資産の分け方を条文で整理します
税務署に出す確定申告とは別の手続きなので、毎年のことでも後回しにされやすい申告です。なかでも間違えやすいのが、「少額減価償却資産の特例」で全額を経費にした資産です。法人税・所得税では経費になっていても、償却資産の申告では対象になります。浜松市が「少額減価償却資産の申告には注意が必要です」という案内ページを設けているほどです。
しかもこの特例は、2026年4月1日以後に取得した資産から、上限が30万円未満から40万円未満に上がりました。これまで減価償却して固定資産台帳に載せていた30万円台の資産も、要件を満たせば全額を経費にできるようになり、そのぶん台帳から外れて申告から漏れやすくなります。改正後に特例で経費にした資産を初めて申告するのが、2027年1月の申告です。この記事では、地方税法の条文と、東京都主税局・広島市などの案内をもとに、申告する資産・しない資産の分け方と、申告しなかったときに起きることを整理します。
② 申告から外れる少額の資産は、10万円未満で一度に経費にしたものと、20万円未満で3年に分けて経費にする「一括償却資産」などに限られます。少額減価償却資産の特例で全額を経費にした資産は、申告の対象です。同じ15万円のパソコンでも、どの方法で経費にしたかで、申告が要るかどうかが変わります。
③ 申告漏れが分かると、最長5年度分さかのぼって課税されることがあります。特例を使うには確定申告書に明細書を付けるため、市区町村が閲覧できる書類に記録が残ります。
償却資産とは、土地と建物以外で、事業に使える資産のことです。地方税法341条4号は、償却資産を次のように定めています。
ただし書きには、次のようにあります。
「ただし、自動車税の課税客体である自動車並びに軽自動車税の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」
ソフトウェアのような形のない資産と、自動車税・軽自動車税がかかる車は、償却資産に入りません。そのうえで、償却資産を持っている人には、地方税法383条で申告が義務付けられています。
条文から読み取れる要点は3つです。1つ目は、基準になる日が1月1日であることです。固定資産税は1月1日に持っている人にかかるため、1月2日以降に手放しても、その年度の納税義務者は変わりません(東京都主税局のQ&A)。
2つ目は、申告先が「資産のある場所」の市区町村であることです。本社の所在地ではありません。支店や店舗が別の市区町村にあれば、それぞれに申告します。東京23区では、資産のある区を担当する都税事務所が申告先です。
3つ目は、期限が1月31日であることです。期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、休み明けの日が期限になります(地方税法20条の5第2項)。2027年は1月31日が日曜日なので、2月1日(月)が期限です。1月31日が土曜日だった2026年は、神戸市が期限を2月2日(月)と案内していました。
償却資産の申告は、税務署への確定申告とは別の手続きです。広島市のよくある質問は、違いを次のように説明しています。
利益が出ていない年も同じです。東京都主税局のQ&Aは、事業者が市区町村から行政サービスを受けていることに着目して課税する税(応益課税)であることを理由に、「利益がない場合でも、償却資産を所有している場合は申告をしていただく必要があります。」としています。
申告書は、多くの市区町村で12月に届きます(船橋市は12月上旬に配布、神戸市は12月中旬に案内を送ると説明しています)。開業したばかりの年などは、申告書が届かないこともあります。ただ、383条の申告の義務は、申告書が届くことを条件にしていません。船橋市は、申告書が届かない場合は窓口に用紙を備え付けているほか、ホームページからダウンロードした用紙も使えると案内しています。
事業に使っている資産のうち、何が対象になるかを先に押さえておきます。代表的なものは次のとおりです(内装・構築物・建物の設備の扱いは、東京都主税局のQ&Aによります)。
- 器具・備品/パソコン、複合機、ルームエアコン、応接セット、陳列棚、看板
- 機械・装置/工場の機械、製造設備
- 構築物/駐車場の舗装などの外構工事、広告塔
- 借りている店舗・事務所の内装/テナントが取り付けた内装・造作・建築設備
- 店の設備/飲食店などの厨房設備
借りている店舗の内装は、建物の持ち主ではなく、取り付けたテナントが申告するよう、東京都主税局・広島市とも案内しています(広島市は、地方税法343条10項と市の条例を根拠に挙げています)。一方、自分の建物に付けた設備は、家屋として固定資産税がかかるものと、償却資産として申告するものに分かれます。この分け方は市区町村によって違うことがあるため、手引きの区分表で確認します。
- 家屋/家屋として固定資産税がかかるもの
- 車/自動車税・軽自動車税の対象になるもの(フォークリフトなどの小型特殊自動車を含む)
- 形のない資産/ソフトウェア、特許権など
- 繰延資産/創立費、開業費など
- 一部の少額の資産/10万円未満で一度に経費にしたもの、一括償却資産など(POINT 03)
同じ日に買ったパソコンと会計ソフトでも、扱いが分かれます。パソコン本体は器具・備品なので申告の対象、ソフトウェアは形のない資産なので対象外です。ソフトウェアを法人税・所得税でどう処理するかは、償却資産の申告とは別に判断します。
「使う権利」か「自分のもの」かの分かれ道と、設定費用を資産に含めるかどうかを整理しています。
個人事業主が気をつけたいのが、家事按分(かじあんぶん)です。所得税では、事業で使う割合の分だけを経費にします。ところが償却資産の申告では、割合で分けた金額ではなく、もとの取得価額で申告します。
広島市:「たとえ事業用に使用する割合が家庭用に使用する割合より小さい場合でも、その資産全体が償却資産の申告の対象になります。」
少額の資産のうち、償却資産の申告から外れるものは、地方税法施行令49条が決めています。法人税・所得税で、次の方法をとった資産です。
- 10万円未満などで一度に経費にしたもの/使える期間が1年未満、または取得価額が10万円未満で、買った年に全額を経費(損金)にしたもの(法人税法施行令133条1項・所得税法施行令138条1項)
- 一括償却資産にしたもの/取得価額が20万円未満で、3年間で均等に経費にしたもの(法人税法施行令133条の2第1項・所得税法施行令139条1項)
- リース資産/取得価額が20万円未満のもの(49条ただし書き)
この中に、「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」は入っていません。この特例は、青色申告をしている中小企業者等(従業員の数などの要件があります)が、10万円以上40万円未満の資産を、年間の合計300万円まで、買った年に全額経費にできる制度です(租税特別措置法67条の5。個人事業主は28条の2)。東京都主税局のQ&Aは、申告の対象になる資産として次の2つを挙げています。
「(法人税・所得税法上は損金算入できますが、固定資産税(償却資産)においては適用されません。)」
「少額であっても個別に減価償却することを選択した資産」
法人税・所得税の帳簿では、特例を使った資産は買った年に全額が経費になり、固定資産の勘定に残らないことが多くなります。「経費で落としたから資産ではない」と考えやすいのは、このためです。償却資産の申告では、この考え方が通用しません。
15万円のパソコンを買った場合、法人税・所得税での処理の方法は主に3つあります。どれを選んだかで、償却資産の申告が変わります。
- 一括償却資産にした(3年で均等に経費にする)→ 申告しない
- 少額減価償却資産の特例で全額を経費にした → 申告する
- 耐用年数に応じて減価償却した → 申告する
決算で特例を選ぶときは、翌年1月の償却資産の申告に載る資産が増えることも、あわせて把握しておきます。特例を使った資産を固定資産台帳に載せずに管理していると、1月の申告の時点で拾えなくなるためです。
特例の上限は、2026年4月1日以後に取得した資産から40万円未満に上がりました(所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕附則35条・65条)。2026年3月31日までに取得した資産は、これまでどおり30万円未満です。特例を使える期限は、2029年3月31日までに取得した資産です。
30万円以上40万円未満の資産は、これまでも通常の減価償却をしていたため、もともと償却資産の申告の対象です。申告の対象であることは変わりません。変わるのは帳簿のほうで、特例で全額を経費にすると固定資産の勘定に残らなくなり、台帳だけを見て申告すると漏れるおそれが出てきます。
2026年4月から12月までに取得して特例を使った資産を初めて申告するのが、2027年1月の申告(期限は2月1日)です。申告に載るかどうかは1月1日に持っているかで決まり、法人の決算期とは関係ありません。
法人税・所得税の減価償却が終わり、帳簿の金額が1円(備忘価額)になった資産も、償却資産の申告からは外れません。倉庫にしまってあるだけの機械や備品も同じです。
「現に事業の用に供することができる資産であれば、償却資産として申告の対象になります。したがって、未稼働資産や遊休資産であっても申告する必要があります。」
償却資産の評価額は、法人税・所得税の減価償却とは別に、市区町村が計算します。取得価額をもとに、取得してからの年数に応じて減らしていく計算です。ただし、評価額は取得価額の5%より下がりません(広島市のよくある質問)。古い資産も、事業に使える限り、取得価額の5%の評価額で残り続けます。
反対に、廃棄・売却した資産は、申告書で「減少」として届け出ます。広島市のよくある質問は、償却資産に申告が必要な理由を「償却資産は、土地・家屋のような登記制度がないことから、所有者や資産内容を把握するため」と説明しています。市区町村は申告をもとに資産を把握しているため、手放したことを申告しないと、市区町村には伝わりません。
事業をやめた場合や、市区町村の外へ移転して資産がすべてなくなった場合、東京都主税局は「全品減少の申告」を求めています。申告書が届いたものの対象の資産を持っていない場合も、備考欄に「該当資産なし」と書いて申告するよう協力を呼びかけています。
損金にできる損失・費用、修繕費と資本的支出の分け方、失った帳簿の復元までを順番に解説しています。
償却資産の固定資産税は、次のように計算します(広島市・船橋市の案内)。
1.4%は、地方税法350条が定める標準税率です。課税標準額は、同じ市区町村(東京23区では区ごと)にある資産の評価額を合計した額です。
ただし書きで、財政上その他特別の必要がある場合には、市区町村の条例で150万円未満でも課税できるとされています。
評価額の合計が150万円未満なら、償却資産の固定資産税はかかりません。資産の少ない事業者では、申告しても税額が出ないことがあります。東京都主税局のQ&Aによると、この場合は納税通知書も届きません。
ただし、免税点は「税をかけない」ための基準で、351条は申告について何も定めていません。評価額を計算して合計するのは市区町村です。そのため、免税点未満でも申告を求める市区町村があります。
神戸市は、前年度の合計が免税点未満だった人には、申告書の代わりにハガキの「償却資産の申告のお知らせ」を送り、資産の状況を申告するよう案内しています。
「どうせ150万円に届かない」と判断して資産を数えずにいると、POINT 03の特例の資産やPOINT 04の古い資産を足したときに、実は届いていたということも起こりえます。合計して判定するのは市区町村なので、届いた案内に沿って申告しておくのが確実です。
申告をしなかった場合について、地方税法は過料(かりょう。行政上の制裁として払うお金)の定めを置いています。
なお、うその申告をした場合は、385条で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。
過料の規定は、市区町村が条例で設けるものです。もう1つ押さえておきたいのが、過去の年度分の課税です。
東京都主税局は、申告漏れなどが分かった場合、5年度分(偽りその他不正の行為で税を免れた場合は7年度分)さかのぼって課税すると案内しています。過去の分が追加で課税される場合は、通常の納期とは違い、納期が1回になります。
市区町村には、償却資産の調査のための権限があります。そのひとつが、税務署に出した確定申告書を見る権限です。
東京都主税局は、この規定にもとづいて所得税・法人税の書類を閲覧することがあるほか、電話での問い合わせ、資料の提出の依頼、実地調査を行っていると案内しています。船橋市も、実地調査では固定資産台帳・決算書類・税務書類を見て、申告の内容と照らし合わせると説明しています。
そして、少額減価償却資産の特例は、確定申告書に明細書を付けた場合に限って使えます(租税特別措置法67条の5第3項・28条の2第3項)。特例を使った資産は、確定申告書の側に記録が残るということです。
- 固定資産台帳から抜き出す/1月1日に持っている資産を拾う。償却が終わったもの・使っていないものも含める
- 特例で経費にした資産を拾う/台帳に載せていなければ、確定申告書に付けた明細書から集める
- 外す資産を確かめる/10万円未満で一度に経費にしたもの、一括償却資産、ソフトウェア、車
- 増えた資産・減った資産を分ける/前回の申告から買ったもの、捨てた・売ったものを書き出す
- 申告先と出し方を決める/資産のある市区町村ごと(東京23区は都税事務所)に、郵送・窓口・eLTAX(地方税の電子申告)のいずれかで出す
- NG「経費で落としたから資産ではない」と、特例で経費にしたパソコンを外す
- NG減価償却が終わった機械や、倉庫で眠っている備品を外す
- NG事業で使う割合だけの金額で申告する
- NG捨てた資産の「減少」を出さずに、毎年同じ内容で出し続ける
- NG「150万円に届かないはず」と、資産を数えずに放置する
→ 2027年は2月1日まで
→ ソフトウェア・車は対象外
→ 申告の対象のまま
→ 事業に使えるなら対象
→ 申告を求める市区町村も
→ 最長5年度分さかのぼる
特例で経費にした資産や、昔から使っている資産の扱いは、台帳と確定申告書を見比べないと整理がつかないことがあります。資料の整え方で迷ったときは、第三者に一度見てもらうと整理がつくことがあります。
お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします税理士事務所での実務経験をもとに、経理まわりのご相談をお受けしています。※具体的な税額の計算・申告書の作成・個別の税務判断は税理士業務のため承っておりません。
償却資産の申告の様式、家屋と償却資産の区分、申告書の送付時期などの運用は、市区町村によって異なることがあります。個別の資産が申告の対象になるかどうかは、資産の所在する市区町村(東京23区は都税事務所)または顧問の税理士へご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。
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