インボイス制度の基本と
2026年10月からの控除70%
登録・記載事項から、免税事業者からの仕入れの扱いまで【2026年10月1日更新】
- インボイスを出せるのは登録した事業者だけ。決まった記載事項がそろっていれば、様式は自由です
- 免税事業者などからの仕入れは、2026年10月1日以後に行った分から控除が70%になりました
- 判定は仕入れを行った日。9月に納品を受けたものは、請求書や支払いが10月でも80%です
- 2割特例は、個人は2026年分、法人は2026年9月30日を含む事業年度まで。個人には次に3割特例があります
インボイス(適格請求書)とは、売り手が買い手に、適用税率と消費税額を正確に伝えるための請求書やレシートのことです。消費税には10%と軽減税率8%があるため、「どの税率で、消費税はいくらか」を書類ではっきり示す仕組みとして導入されました。
買い手の側から見ると、仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、原則としてインボイスの保存が必要です。ここが制度の中心です。
- インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです。登録すると「T+13桁」の登録番号が通知されます
- 登録は任意です。ただし、免税事業者が登録すると課税事業者になり、消費税の申告と納税が必要になります
- 免税事業者は、登録申請書に提出日から15日以後の登録希望日を書けば、課税期間の途中からでも登録できます(2029年9月30日を含む課税期間までの経過措置)
- 取引先が登録しているかどうかは、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号から確認できます
「インボイス」と聞くと専用の様式を想像しがちですが、決まったフォーマットはありません。次の事項が書かれていれば、請求書でも領収書でもレシートでもインボイスになります。
- 発行者の氏名または名称と登録番号(登録番号が、以前の請求書との一番の違いです)
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目は、その旨を書きます)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける事業者の氏名または名称(相手の名前)
小売業・飲食店業・タクシー業など、不特定多数の人と取引する業種として法令で決められた業種は、簡易版の適格簡易請求書を使えます。相手の名前は省略でき、「適用税率」と「税率ごとの消費税額等」はどちらか一方の記載で足ります。スーパーやコンビニのレシートがそのままインボイスとして使えるのはこのためです。
インボイスを発行できない相手(免税事業者や、登録していない事業者、消費者)からの仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。ただ、いきなり控除ゼロにすると影響が大きいため、一定の割合だけ控除できる経過措置が設けられています。
制度が始まった時点の予定は、「2023年10月から80%、2026年10月から50%、2029年10月で終了」でした。これが2026年4月の消費税法等の改正(令和8年度税制改正)で見直され、70%の段階が加わり、終了も2年後ろにずれました。
- 2023年10月1日〜2026年9月30日: 80%(終了)
- 2026年10月1日〜2028年9月30日: 70%(いまはここ)
- 2028年10月1日〜2030年9月30日: 50%
- 2030年10月1日〜2031年9月30日: 30%
- 2031年10月1日以後: 経過措置なし
下がり方は予定より緩やかになりましたが、最終的に控除できなくなる方向は変わっていません。免税事業者との取引が多い場合は、どの取引先が登録していて、どこが登録していないのかを一覧にしておくと、影響額を見積もりやすくなります。
この1億円の上限が使われるのは、2026年10月1日以後に開始する課税期間からです。10月1日の仕入れから一斉に変わるわけではありません。たとえば3月決算の法人なら、最初に当てはまるのは2027年4月1日から始まる事業年度です。
10月の経理でまず迷うのが、9月に納品を受けて、請求書が10月に届いた取引です。80%と70%のどちらで処理するかは、「課税仕入れを行った日」で決まります。課税仕入れを行った日とは、商品を受け取った日や、サービスの提供を受けた日のことです(消費税法基本通達11-3-1)。
- 9月25日に納品、10月5日に請求書、10月末に支払い/仕入れは9月なので80%
- 10月3日に納品、請求書も支払いも10月/仕入れは10月なので70%
- 9月と10月の作業をまとめた月締めの請求書/納品日や作業完了日ごとに分けて判定します
登録していない外注先に、税込11,000円を支払った場合で比べます。消費税相当額は11,000円×10/110=1,000円です。このうち控除できる割合だけを仮払消費税等にし、残りは費用に含めます。
・外注費/10,200円
・仮払消費税等/800円(1,000円×80%)
貸方
・普通預金/11,000円
・外注費/10,300円
・仮払消費税等/700円(1,000円×70%)
貸方
・普通預金/11,000円
支払額は同じでも、控除できる消費税が100円減り、その分だけ費用が増えます。税込経理の場合は、仕訳の金額は変わらず、申告の計算で割合を反映します。
会計ソフトで記帳している場合は、70%控除用の税区分が選ばれているかを、10月分の最初の入力で確認しておくと安心です。
制度開始のときに用意された負担軽減の特例は、それぞれ期限が違います。2026年10月時点の状況を整理します。
- 2割特例(売上の消費税の2割を納める)/免税事業者から登録して課税事業者になった人が対象。個人は2026年分の申告まで、法人は2026年9月30日を含む事業年度の申告までです
- 3割特例(売上の消費税の3割を納める)/2026年4月の改正で新設。個人事業者の2027年分・2028年分が対象で、法人は使えません。確定申告書にその旨を書く必要があり、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える年などは対象外です
- 少額特例(税込1万円未満の仕入れ)/インボイスがなくても、帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。対象は基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者で、2029年9月30日までです
- 少額な返還インボイスの交付免除/税込1万円未満の値引きや返品(振込手数料分の値引きなど)は、返還インボイスを出さなくてかまいません。期限はなく、すべての事業者が対象です
小売業のようにみなし仕入率が高い業種では、3割特例より簡易課税のほうが納税額が少なくなる場合があります。どれが有利かは業種や経費の中身で変わります。
記事の中で出てきた用語をまとめます。言葉が分からなくなったら、ここに戻ってきてください。
- 課税事業者/消費税を申告・納税する義務がある事業者。基準期間(個人は2年前、法人は原則2期前)の課税売上高が1,000万円を超える場合などに当たるほか、インボイスの登録をした場合も課税事業者になります(国税庁 No.6501)
- 免税事業者/上のどれにも当たらず、消費税の納税義務が免除されている事業者。開業したばかりの個人事業主や、小規模な事業者の多くがこちらです
- 仕入税額控除/納める消費税を「売上で預かった消費税 − 仕入れや経費で払った消費税」で計算するときの、後ろの部分を差し引く仕組み。差し引くための条件がインボイスの保存です
- 本則課税/上の式のとおり、実際の売上と仕入れから消費税を計算する原則的な方法です
- 簡易課税/基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選べる方法。売上の消費税に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて控除額を計算するため、仕入れ側のインボイスの管理が原則いりません。一度選ぶと原則2年間はやめられません(国税庁 No.6505)
→ 登録は任意、途中からも可
→ 登録番号など記載事項で判断
→ 以後50%・30%と下がる
→ 9月納品・10月請求は80%
→ 10月以後は70%控除対象
→ 次は3割特例、法人は対象外
インボイス制度は、特例が少しずつ縮んでいく段階に入りました。10月は9月以前の仕入れと10月以後の仕入れを分けることと、帳簿の表記の切り替えをまず確認してください。そのうえで、登録していない取引先からの仕入れがどれくらいあるかを把握しておくと、今後の割合の変更にも慌てずに対応できます。
「9月と10月にまたがる請求書をどう分けるか」「登録していない取引先がどれくらいあるか把握できていない」——切り替えの時期は、細かい判断が続きます。税理士事務所での実務経験をもとに、経理の考え方の整理をお手伝いしています。
※具体的な税額の試算・有利不利の判定・申告書の作成は税理士業務のため承っておりません。経理の考え方の整理についてのご相談を承っています。

