酒税改正の手持品課税
申告が要る店・要らない店
居酒屋などの飲食店も対象です。ただし申告が必要になるのは、一部の店だけです
国税庁の案内には、対象となる酒類の販売業者等に「酒場・料飲店等を経営されている方も含みます」と書かれています。酒屋さんだけの話ではなく、居酒屋やレストランも、10月1日時点の在庫の量を確認する必要があるということです。
この記事では、国税庁のリーフレットとQ&A(令和8年9月2日更新)をもとに、①申告が必要な店と不要な店の分かれ目、②午前0時に棚卸できなかった場合の数え方、③ビールの在庫が多い店が受けられる還付とその期限を、飲食店・酒販店の経理の目線で整理します。
② 2,000Lに届かない店も、10月1日午前0時の在庫の量は把握しておきます。0時に数えられなかった店には、営業後の棚卸から計算する方法や、POSレジの数量を使う方法が認められています。
③ ビールの在庫が多い店は、11月2日(月)までに届け出ると、差額の還付を受けられる場合があります。期限を過ぎると、後から請求しても戻りません。
酒税は、お酒がメーカーの工場(製造場)から出荷されるときにかかる税金です。国税庁のQ&A(問3)は、税率が変わる前に出荷されたお酒は「引上げ前の税率で課税されている」と説明しています。つまり、9月までに仕入れてお店に置いてあるお酒には、古い税率の酒税が含まれています。
この差をそろえるのが、手持品課税と手持品戻税です。税が上がるお酒の在庫には差額を課税し(手持品課税)、税が下がるお酒の在庫には差額を戻す(手持品戻税)という仕組みです。
国税庁のリーフレットに載っている金額です。
- 税が下がる:ビール/1Lあたり26円(9.1円)。麦芽比率50%以上またはアルコール分10度以上の発泡酒と、容器に「発泡酒③」と表示されたものも同じ
- 税が上がる:新ジャンル(第三のビール)/1Lあたり約21円(約7.26円)。麦芽比率25%未満の発泡酒も同じ。Q&Aの表では1kLあたり20,750円
- 税が上がる:チューハイ・ハイボールなど/1Lあたり20円(7円)。アルコール分10度未満で発泡性があり、ビール・発泡酒にあたらないもの
- 税が上がる:アルコール分の低い焼酎・ウイスキー・リキュールなど(発泡性のないもの)/アルコール分9度未満は1Lあたり20円(7円)、9度以上10度未満は1Lあたり10円(3.5円)
この結果、ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税は1kLあたり155,000円にそろいました(350ml缶1本あたりに直すと54.25円)。チューハイなどは1kLあたり100,000円(同35円)になります(Q&A問1の表)。日本酒(清酒)とワイン(果実酒)は、Q&Aの表で令和8年10月1日の欄が「-」となっており、今回は税率が変わりません。ただし、容器に「清酒(発泡性)」のように「(発泡性)」と表示されたアルコール分10度未満のものは、チューハイなどと同じ「税が上がる」側に入ります(問5)。
見た目が似たお酒でも、税が上がるものと下がるものが混ざっています。Q&A(問5)は、容器に書かれた品目の表示で見分けるよう案内しています。
- 「ビール」 → 税が下がる
- 「発泡酒③」(古い商品では「スピリッツ(発泡性)③」などの表示もある) → 税が下がる
- 「発泡酒②」(いわゆる新ジャンル。古い商品では「リキュール(発泡性)②」などの表示もある) → 税が上がる
- 「リキュール(発泡性)」「スピリッツ(発泡性)①」のような「(発泡性)」の表示 → 税が上がる(チューハイ・ハイボールなど)
- 表示が「発泡酒」だけのもの → 麦芽使用率で分かれる。50%以上は下がる、25%以上50%未満は変わらない、25%未満は上がる
このほかにも細かい区分があります。迷う商品は、Q&Aの問5で表示ごとの扱いを確認してください。
お酒はなぜ1%にならないのか|「嗜好品だから」ではありません
手持品課税の申告が義務になるのは、10月1日に、税が上がるお酒を販売のために持っていて、その量が2,000L以上だった店です(問4)。350ml缶24本入りのケースなら、約238ケース分です。
- 数えるのは、税が上がるお酒だけ/ビールなど税が下がるお酒は、2,000Lの判定に入れません
- すべての店舗・倉庫の合計で判定する/複数の場所でお酒を持っている場合は、全部を合計します(問7)
- 酒屋と飲食店を両方経営していても合計する/業態が違っても、1つの事業者なら合算です(問9-3)
- 0時に配送中だったお酒は、受け取る側の在庫に数える/原則として、荷受人の店が持っているものとして扱います(問8)
お店にあるお酒でも、販売のために持っているのでなければ数えません。Q&Aでは次のように整理されています。
- お客さんのボトルキープ/お客さんから預かっているお酒なので、未開栓でも、預かりの関係がはっきりしていれば対象外(問12)
- 店主が自分で飲む分や展示の見本/そのことが帳簿などで明らかで、ほかの在庫と分けて置いていれば数えなくてよい(問9)
- 使いかけで、残りの量を測れない樽など/合理的な方法で残量を明らかにできないものは含めない(問14。POINT03で詳しく説明します)
- 旅館・ホテルの客室の冷蔵庫や、自動販売機の中のお酒/販売のために持っているものなので、数える(問11)
注意したいのは、樽詰めや缶のチューハイ・ハイボールも、容器の表示が「(発泡性)」なら税が上がるお酒に入ることです。サワーやハイボールを多く出す店や、複数店舗の仕入れをまとめている会社は、店ごとの感覚で判断せず、合計してから確かめてください。
2,000Lに届かない店は、手持品課税の申告義務はありません。ただし、ビールなど税が下がるお酒を多く持っている店は、自分から手続きをすれば差額の還付を受けられる場合があります。これはPOINT04で説明します。
判定に使うのは、10月1日午前0時の実際の在庫です(問6)。とはいえ、0時をまたいで営業していた店や、9月30日の夜に数え忘れた店もあるはずです。Q&A(問13)は、0時に棚卸できなかった場合の方法を示しています。
- 営業後や前後の日に棚卸して、出し入れを足し引きする/営業時間の終了後や、10月1日の前後に実際に数え、帳簿に付けた仕入れ(受入)と販売(払出)の数量を加味して、0時時点の数量を出す
- POSレジの数量を使う/POSシステムなどで0時時点の数量が分かり、きちんと記帳されていれば、その数量でよい
0時の時点で一部を使っている樽などは、残りの量を合理的な方法で明らかにできないものは、数量に含めません(問14)。
Q&Aは合理的な方法の例として、開ける前の重さと0時の重さ(どちらも容器込み)の差から残りの量を出す方法、中身の量の目安になる線(入味線)で内容量が分かる瓶ならその高さから出す方法、残りを別の容器に移して実際に測る方法を挙げています。生ビールの樽なら、重さで測る方法が現実的です。
手持品課税のために、特別な帳簿を作る必要はありません(問23)。ただしQ&Aは、酒場・料飲店等を含む酒類の販売業者は、酒税法の規定により、仕入れたお酒と出したお酒の品目・税率の区分ごとに、数量や価格などを帳簿に記載する必要があるとしたうえで、0時時点の数量を確実に記帳するよう求めています。
ビールなど税が下がるお酒の在庫には、9月までの高い税率の酒税が含まれています。この差額は手持品戻税として戻してもらう仕組みがありますが、届け出て申告しなければ戻りません。
Q&A(問17)によると、税が上がるお酒が2,000L未満の店でも、令和8年11月2日(月)までに、お酒を置いている場所の所轄税務署に「手持品課税等対象酒類の酒税納税申告書兼酒税の手持品課税等の適用を受ける旨の届出書」を出せば、申告して還付を受けることができます。名前のとおり、届出書と申告書の兼用の様式です。
また、いったん出した届出書は、原則として取り下げられません。申告期限までに取下書を出した場合に限り、税務署で取り下げの処理ができるとされています(問21)。計算してから出すのが鉄則です。
リーフレットの1Lあたりの金額(ビールは26円下がる、チューハイは20円上がる)で計算します。
- ビールの在庫 300L(20Lの樽10本と中瓶200本)/300L × 26円 = 7,800円が戻る側
- チューハイの在庫 60L(350ml缶で約170本)/60L × 20円 = 1,200円が課税される側
- 差し引き/7,800円 − 1,200円 = 6,600円の還付
実際の税額は、品目ごとに計算する「税額算出表」を申告書に付けて出します(問16)。戻る金額と、在庫を品目ごとに数えて書類を作る手間を比べて、届け出るかどうかを決めてください。
2,000L以上で申告が必要な店と、還付を受けるために届け出る店は、次の点を押さえておきます。
- 申告先は、お酒を置いている場所(貯蔵場所)の税務署/貯蔵場所ごとに、その所在地の所轄税務署へ出します。同じ税務署の管内に複数の場所があれば、内訳書を付けてまとめて申告できます(問15)
- 申告期限は令和8年11月2日(月)/申告書兼届出書に「税額算出表」を付けて出します(問16)。国税庁はe-Taxでの提出を案内しています
- 納付期限は令和9年3月31日(水)/申告期限から約5か月あきます(問2)
- 税務署から納付のお知らせは来ない/Q&A(問36)に「申告書の提出後に税務署から納税通知等のお知らせはありません」とあります
- 納付先が、いつもの税務署と違う場合がある/納めるのは申告書を出した税務署です。法人税や所得税を納めている税務署とは異なる場合があります(問37)
手続きの原典は、国税庁の次の資料で確認できます。
- 国税庁「酒類の手持品課税(戻税)」(案内ページ)
- 令和8年10月1日に酒類の手持品課税(戻税)が実施されます(PDF/リーフレット・判定のフローチャート)
- 手持品課税・手持品戻税に関するQ&A(令和8年9月2日更新)(PDF)
- 酒類の手持品課税(戻税)の申告等の手引(令和8年10月1日分)(PDF/申告書の書き方)
手持品課税とは別に、10月1日以降に工場から出荷されるお酒には、新しい税率の酒税がかかります(問3)。仕入れ値がどう変わるかは、取引先の卸やメーカーの案内で確認し、メニューの価格を見直すかどうかを決めます。
価格を変える場合は、レジに登録している商品の価格、メニュー表、店頭の値札をそろえて直します。消費者に向けてあらかじめ表示する価格は、消費税を含めた税込価格で表示する決まりです(総額表示義務。消費税法63条、国税庁タックスアンサーNo.6902)。
飲食料品の消費税を2027年4月1日から2年間、1%に下げる方針が、2026年9月15日に閣議決定されました(関連する法律は、10月1日時点でまだ成立していません)。
飲食店に関わる部分を見ると、お酒は軽減税率の飲食料品に含まれないため10%のまま、店内での飲食も外食にあたるため10%のままです。下がる予定なのは、テイクアウト・お持ち帰りの食品(8%から1%へ)です。
お酒の価格は来年4月の税率変更では動きませんが、持ち帰りの商品がある店は、レジの税率設定を直す必要があります。店内と持ち帰りの税率の差は2%から9%に広がり、打ち分けを間違えたときに納める税額への影響も大きくなります。今回、価格の登録し直しに手間取った店は、来年4月の前にレジそのものを見直すことも考えておきたいところです。
消費税1%のレジ対応|今すぐ買い替えるべきか 消費税1%でレジを買い替えるなら|補助金で損しない選び方
→ ビールは下がる、チューハイは上がる
→ 上がるお酒を全店舗で合計
→ 営業後の棚卸やPOSで出せる
→ 11月2日まで、後からは不可
→ 税務署からのお知らせはない
→ 来年4月もレジの見直しを
手持品課税は、酒屋さんだけでなく居酒屋やレストランも対象に含まれる手続きです。ただし申告が義務になるのは、税が上がるお酒を全店舗の合計で2,000L以上持っていた店だけです。まずは10月1日午前0時の在庫を、税が上がるお酒と下がるお酒に分けて把握してください。
ビールの在庫が多い店は、11月2日(月)までの届出で差額の還付を受けられる場合があります。届け出ると税が上がるお酒の分も申告することになるため、差し引きを計算してから決めてください。
スマレジの資料は無料でダウンロードできます。税率の切り替えを設定で済ませられるか・補助金の対象になるか・いま使っている会計ソフトとどうつながるかは、資料を見たうえで確認するのが確実です。
※店舗でレジを使う事業者向けの資料です。補助金の対象になるかどうかは、契約や申請の内容によって変わります。


