消費税1%でレジを買い替えるなら
補助金で損しない選び方
「先に買って後から申請」ができる今こそ、契約前の確認が大事です
ガチャレジ(古い電子式・機械式のレジ)から切り替えるなら、動きやすい時期です。ただし補助金は、どのレジを買っても出るわけではありません。対象になるのは事務局に登録された製品だけで、同じ製品でも契約するプランによっては対象外になることがあります。
この記事では、買い替えると決めた方に向けて、①税率を設定だけで変えられるか、②補助金の対象製品・対象プランか、③会計ソフトに税率ごとの売上が流れるかという3つの基準を、税理士事務所の実務目線で整理します。最後に、実際の製品を1つ取り上げて、この基準で確かめます。
補助金の事前着手制度も、対象期間(2026年9月15日〜2027年3月)と申請受付期間(2027年1月〜3月)がどちらも「調整中」とされ、細かいルールを定めた公募要領はまだ公表されていません。金額・期間・対象範囲は、今後変わる可能性があります。
① 税率の変更を、設定やメーカーのアップデートで済ませられる(2027年4月に下がり、2029年4月に戻る予定。税率は2回変わります)
② 事務局に登録された製品で、しかも補助金の対象プランである(対象になるプランが限られている製品があります)
③ 会計ソフトに、税率ごとに分かれた売上が流れる(店内と持ち帰りの税率差が9%に広がるため、手作業の振り分けはミスのもとです)
そもそも買い替えが必要かどうかは、POINT01で先に切り分けてください。設定変更だけで済むレジも多くあります。
最初に確認しておきたいのは、税率が1%になるからといって、すべての店がレジを買い替える必要はないということです。必要な作業は、いま使っているレジの種類で大きく変わります。
- クラウド型のPOSレジ・タブレットレジ → 税率の数値を変えるだけ、またはメーカーのアップデートで済むことが多い
- 据置型のPOSレジ(メーカーのサポートが続いているもの) → 設定変更か、業者による改修で対応できることが多い
- 古い電子式・機械式のレジ(いわゆるガチャレジ) → 税率の区分を増やせない機種は、買い替えが必要になる場合がある
- メーカーのサポートが終わった機種 → 改修を受けられない場合がある
この記事は、下の2つに当たる方、つまりガチャレジやサポート切れの機種から買い替えを考えている方に向けたものです。
一方で、税率への対応だけが買い替えの理由とは限りません。中小企業庁の補助金の資料では、従来型のレジとスマートレジ(タブレットやスマートフォンなどの汎用端末に入れて使うレジ)が、次のように比べられています。
- 会計・集計/従来型は「レジ締め・集計は手作業中心」、スマートレジは「データが自動集計で省力化」
- 売上/従来型は「合計額のみ把握」、スマートレジは「商品別・時間帯別に見える化」
税率だけなら設定変更で済む店でも、毎日のレジ締めや集計に時間を取られているなら、補助金が使えるこの時期に切り替えを検討する価値はあります。その判断に使える3つの基準を、次のPOINTから順に見ていきます。
1つめの基準は、税率が変わったときに、お店側の設定変更かメーカーのアップデートで対応できるかです。ここを重く見るべき理由は、今回の税率変更が1回では終わらないからです。
大綱では、飲食料品を1%にする期間が「令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間」とされています。つまり、切り替えは次の2回です。
- 2027年4月1日/飲食料品が8%から1%に下がる
- 2029年4月1日/1%の特例が終わり、8%に戻る予定
大綱には、2029年4月の切り替え前後についても価格表示の経過措置が書かれており、2回目の切り替えを前提にした設計になっています。切り替えのたびに業者の訪問や有料の改修が必要なレジだと、手間も費用も2回かかります。
中小企業庁の補助金の資料も、この大綱に触れたうえで、「こうした制度変更を含め、様々な変化に対応していくためのシステム作りが喫緊の課題」だと説明しています。税率の変更に柔軟に対応できるレジを広げていく、というのが国の方針です。
- 税率の数値を、お店側の設定画面で変えられるか(業者の訪問が必要か、費用はかかるか)
- メーカーが「アップデートで対応する」と案内しているか(2029年4月に戻すときも同じ扱いか)
- 切り替え日を前もって設定しておけるか(4月1日の営業開始に合わせて、事前に準備できるか)
- 商品ごとに税率を割り当て直せるか(いま8%で登録している飲食料品を、まとめて1%に切り替えられるか)
- 飲食店なら、同じ商品を「店内」と「持ち帰り」で打ち分けられるか
テイクアウトは消費税1%?店内飲食との違い
2つめの基準は、補助金の対象になるかです。使われるのは「デジタル化・AI導入補助金」(正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金。旧・IT導入補助金)で、1%への引き下げに合わせて新しく作られた補助金ではありません。既存の補助金に、2026年9月15日から事前着手制度という特例が加わった形です。
対象期間は2026年9月15日〜2027年3月、申請受付は2027年1月〜3月とされていますが、どちらも「調整中」です。
補助の上限額と補助率は、中小企業庁の資料(Ver 1.0/2026年9月15日)で次のように示されています。
- ソフトウェア・役務(レジのシステム購入費・クラウド利用料、導入設定や研修など)/対象の機能(「会計」「受発注」「決済」)が1つなら〜50万円、2つ以上なら〜350万円。補助率は50万円以下の部分が3/4(小規模事業者は4/5)、50万円を超える部分が2/3
- ハードウェア/スマートレジに切り替える場合はPC・タブレット購入費、いまのPOSレジを改修する場合はレジ購入費。いずれも〜20万円・補助率1/2
- その製品が事務局に登録されているか/中小企業庁の資料に「あらかじめ事務局に登録されているスマートレジ・POSレジ等の製品が対象となります」と明記されています。登録外の製品は、事前着手制度を使っても対象になりません
- 同じ製品の中で、どのプランが対象か/製品によっては、対象になるプランが限られています
- 利用料を何年分、先に払う必要があるか/クラウド利用料は最大2年分が補助の対象です。そのぶんを先に立て替える必要がある製品があります
- 申請の相談に乗ってもらえるか/製品を事務局に登録しているのは「IT導入支援事業者」と呼ばれる、事務局などの審査を経て採択された事業者です。申請者からの問い合わせに対応する役割もあるため、まず相談する相手になります
- 「補助金対象」という案内だけを見て、プランを確かめずに契約する → 対象外のプランだと、事前着手制度を使っても補助を受けられないおそれがあります
- 登録製品かどうかを確かめないまま契約する → 登録外の製品は対象になりません
- 見積書・契約書・レシートを捨ててしまう → 事後に申請する仕組みのため、資料では契約・納品・支払いに関するすべての書類の保管が求められています
ソフトウェア導入費用の勘定科目|資産計上と経費の分かれ目
制度の原典は、次の公的機関のページで確認できます。申請の前には、必ず最新の公募要領を確認してください。
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金(消費税率引き下げ対策)」(PDF/補助率・上限額・スケジュールの原典)
- デジタル化・AI導入補助金 事務局「スマートレジ導入支援」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
3つめの基準は、レジ選びで見落とされやすい会計ソフトとのつながりです。レジの売上を会計ソフトへ手で入力していると、税率ごとの振り分けを人がやることになります。区分のミスがいちばん入り込みやすいのは、この転記の場面です。
1%が始まると、消費税の税率は制度全体で1%(飲食料品)・8%(週2回以上発行される新聞の定期購読分)・10%(それ以外)の3つになります。大綱では、新聞の定期購読分の税率は現行制度を維持するとされています。お店のレジで打つのは1%と10%が中心でも、会計ソフトでは仕入側も含めて3つの区分を扱う場合があります。たとえば店で新聞を定期購読していれば、その支払いは8%のままです。
レシートの書き方にも関わります。インボイス(適格請求書)の登録をしているお店が出すレシート(適格簡易請求書)には、消費税法57条の4第2項により、「税率の異なるごとに区分して合計した金額」と「消費税額等又は適用税率」を記載することになっています。大綱では、1%の取引について、この「適用税率」の欄には特例税率(1%)を、「消費税額等」の欄には1%に基づく税額を記載するとされています。
- いま使っている会計ソフトと連携できるか(freee会計・マネーフォワード クラウド・弥生など)
- 連携したとき、売上が税率ごとに分かれて入るか(1%の区分が加わったときに、どの税区分で仕訳されるか)
- レシートに、税率ごとの合計と、税額または税率が印字されるか
記帳を会計事務所に頼んでいる場合は、候補のレジがどの会計ソフトとつながるかを事務所にも一度伝えておくと、切り替えた後のやり取りが楽になります。
ここまでの3つの基準を、実際の製品に当てはめてみます。例として取り上げるのは、タブレットをレジ端末として使うクラウドPOSレジの「スマレジ」です。以下は、2026年9月28日時点のスマレジ公式サイトの案内にもとづいています。
公式サイトの税率変更対応のページでは、「すべてのプラン」で「食料品8%→1%に対応」とされています。あわせて「税率が何%になっても、スマレジの設定画面から変更するだけ」「適用期間を指定できるので、施行日にあわせて事前準備が可能」と案内されており、切り替え日を前もって設定しておける仕組みです。
店内と持ち帰りで税率が変わる商品については、「1つの商品に複数の税率を設定でき、会計時にスタッフがワンタップで選択できます」とされています。飲食店で気になる打ち分けにも対応している、という案内です。
なお、2029年4月に8%へ戻るときについての個別の記載はありませんでした。適用期間を指定する仕組みで2回目の切り替えも同じように設定できるかは、資料請求の際に確認しておくと安心です。
スマレジは、自社を幹事社とする「スマレジコンソーシアム」でIT導入支援事業者の認定を受けたと案内しています。補助金のページのよくある質問でも、補助金の申請をサポートすると答えています。ただし、補助金の対象になるかどうかは、契約や申請の内容によって変わります。自分の店の契約が対象になるかは、資料請求のあとの相談で確認してください。
注意したいのは、公式の補助金ページの「導入の流れ」が通常の順番(お問い合わせ → 補助金申請 → 交付決定のあとに利用契約・支払い・利用開始)で書かれている点です。9月15日からの事前着手制度(先に導入して後から申請)で進めたい場合は、事前着手制度の対象として扱えるかを、あわせて確認してください。
外部システム連携のページでは、freee会計・マネーフォワード クラウド・弥生シリーズ・勘定奉行クラウド・TKCのFXシリーズとの連携が案内されています。freee会計には売上データを自動で登録でき、マネーフォワード クラウドには売上データを毎日自動で反映できるとされています(弥生シリーズとの連携状況は、弥生のサイトで確認するよう案内されています)。
一方で、1%の区分が加わったときに、連携先の会計ソフトで税率ごとにどう仕訳されるかまでは、公式ページからは読み取れませんでした。使っている会計ソフトの名前を伝えたうえで確認しておきたい点です。
補助金が入るのは、申請と審査を終えたあとです。レジや利用料の支払いは、いったん全額を自分で済ませることになります。見積もりを取ったら、補助金が入るまでの資金繰りに無理がないかを先に確かめてください。
逆に、在庫の管理、複数の決済方法、会計ソフトとの連携、店内と持ち帰りの切り替えまで1台でまとめたい店は、補助金で負担を抑えながら導入する意味があります。
→ 2027年と2029年の2回
→ 契約前に資料で確認
→ 振り分けの手作業を減らす
買い替えるかどうかは、まずいまのレジが設定変更で済むかを確かめてからです。買い替えると決めたら、補助金の対象製品・対象プランかを契約前に確認し、見積書・契約書・レシートはすべて保管してください。
事前着手制度の細かいルールを定めた公募要領は、2026年9月28日時点でまだ公表されていません。対象期間と申請受付期間も「調整中」です。申請の前には、必ず事務局の最新の案内を確認することも忘れないでください。
スマレジの資料は無料でダウンロードできます。事前着手制度で使えるか・自分の店にはどの契約が合うか・いま使っている会計ソフトとどうつながるかは、資料を見たうえで、相談の場で確認するのが確実です。
※店舗でレジを使う事業者向けの資料です。補助金の対象になるかどうかは、契約や申請の内容によって変わります。
「うちのレジは設定変更で済むのか」「補助金を受け取ったときの経理処理はどうなるのか」「納税額はどう動くのか」——答えはお店ごとに変わります。何を先に確認すべきかを、税理士事務所の実務目線で一緒に整理します。

