フリーランス法|報酬の支払期日は納品日から60日

フリーランス法|報酬の支払期日は納品日から60日 起業・副業
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税理士事務所の現場から

報酬が振り込まれない
その支払期日、決まっていますか

支払期日を決めていない発注は、納品した日が支払期日になります

2026年9月2日、公正取引委員会が日本郵便株式会社にフリーランス法違反で勧告を出しました。研修の講師や荷物の配達を個人に委託する際、167人に取引条件を明示せず、うち140人には支払期日すら定めていなかったという内容です。

ここで注目したいのは、発注側の落ち度そのものよりも、「支払期日を決めていなかった」という状態が法律上どう扱われるかです。フリーランス法には、期日を決めなかった場合は納品した日が支払期日になるという規定があります。つまり受注した側から見ると、期日の取り決めがないまま納品した時点で、すでに支払期限は過ぎていることになります。

この記事は報酬を受け取る側、つまりフリーランス・個人事業主の立場から、法律のどこが自分の武器になるのかを条文で確認します。あわせて、税理士事務所の現場でよく相談を受ける「入金がない売上を、帳簿と確定申告でどう扱うか」までを整理します。
✓ 先に結論
支払期日は、納品日から数えて最長60日以内
法第4条第1項。「60日以内で、かつできる限り短い期間」と書かれています

期日を決めていなければ、納品日が支払期日になる
法第4条第2項の「みなし」規定です。合意がないことは、発注者の有利には働きません

発注元の規模は関係ない
取適法(旧下請法)と違い、フリーランス法に資本金や従業員数の要件はありません。発注元が小さな会社でも個人でも対象です

公取委・中小企業庁に申し出ができ、報復は禁止されている
法第6条。申し出を理由に取引を減らす・止めることは、それ自体が違法行為です
CASE01
日本郵便に何が起きたのか
違反とされたのは2つの条文です。どちらも受注側に直接関わります

公正取引委員会が公表している勧告一覧によると、2026年9月2日付の日本郵便株式会社への勧告は、法第3条第1項と法第4条第5項の違反によるものです。

⚠ 勧告の内容
対象期間は2024年11月1日から2025年6月30日まで

167人に業務委託をした際、取引条件の明示事項の全部または一部を、直ちに書面または電磁的方法で明示していませんでした(第3条第1項)。

このうち140人については報酬の支払期日を定めておらず、給付を受領した日または役務の提供を受けた日までに報酬を支払っていませんでした(第4条第5項)。

ここで「なぜ2025年6月30日までなのか」が気になった方がいるかもしれません。これは公正取引委員会が違反を認定した期間であって、それ以降は問題がなかったという意味ではありません。

⚠ 点検の対象は「勧告の日まで」とされています
勧告書の主文には、認定された期間とは別に、日本郵便自身が点検すべき範囲が定められています。

令和六年十一月一日から令和八年九月二日までの間に、別表一及び別表二の「特定受託事業者」欄記載の事業者百六十七名に対し業務委託をした内容と同種又は類似の内容の業務委託をした特定受託事業者に係る取引について、フリーランス・事業者間取引適正化等法第三条第一項及び第四条第五項の観点から問題が生じていなかったのかを調査し、問題が認められた場合には、特定受託事業者に係る取引の適正化のために必要な措置を講ずること

令和8年9月2日は、勧告が出された日そのものです。つまり2025年7月以降から勧告日までの取引も、同種・類似のものであれば日本郵便が自ら洗い直し、問題があれば措置を取るよう命じられています。
✓ 認定された期間の外にいても、対象から外れたわけではありません
167人・140人という数字は、公取委が立証した範囲です。取引が2025年7月以降だった場合でも、同種・類似の業務委託であれば点検の対象に含まれます。

勧告書は、採った措置を取引先の特定受託事業者へ通知すること、および公正取引委員会へ報告することも求めています。心当たりがある場合は、通知を待つだけでなく自分の取引条件がどう明示されていたかを確認しておくと、後の話が早くなります。

ここで、2つ目の「支払期日を定めていなかった」という表現に引っかかった方がいるかもしれません。期日を決めていないのに、なぜ支払期日を過ぎたことになるのかという点です。

これがこの記事の中心になります。答えは条文にあり、受注する側にとってはかなり有利な内容です。POINT 03で確認します。

✓ これは特殊な事例ではありません
公正取引委員会の勧告一覧を見ると、令和8年度に入ってからの勧告はこれで10件目です。株式会社KADOKAWA、株式会社河合楽器製作所、株式会社ベイシア電器といった名前の知られた企業が並んでいます。

このうち7件で第3条第1項(取引条件の明示)の違反が認定されています。大きな組織であっても、個人への発注部分だけが法律の想定どおりに運用されていない、という状態が広く起きていると読めます。

言い換えると、取引条件を書面でもらえていないのは、あなたの取引先だけではないということです。
POINT02
自分が「守られる側」に入るかを確かめる
規模の要件がないため、取適法(旧下請法)よりも対象がはるかに広くなります

まず、自分がこの法律の保護対象かどうかです。法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和五年法律第二十五号)といいます。守られる側は「特定受託事業者」と呼ばれ、第2条で次のように定義されています。

⚠ 法第2条第1項(特定受託事業者の定義)
「この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
個人であって、従業員を使用しないもの
法人であって、一の代表者以外に他の役員(…)がなく、かつ、従業員を使用しないもの
※(…)は「理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう」との定義を省略した箇所です

つまり従業員を雇っていない個人事業主であれば、業種を問わず対象です。開業届を出しているかどうかも条文には出てきません。一人社長の法人も対象になります。

✓ 取適法との決定的な違いは「規模の要件がない」こと
かつての下請法は、2026年1月1日施行の改正で中小受託取引適正化法(取適法)へと名称が変わりました。こちらは発注側と受注側の規模によって適用範囲が決まります。

現在の取適法は、資本金の額(3億円・5,000万円・1,000万円という区分)に加えて、常時使用する従業員の数による基準も置いています。従業員基準は製造委託等なら300人超、情報成果物の作成委託・役務提供委託なら100人超の事業者が発注する場合です(取適法第2条第8項)。この範囲から外れる取引は対象になりません。

これに対して、フリーランス法には発注側の規模を問う要件が一切ありません。

さらに、取引条件の明示を定めた第3条は主語が「業務委託事業者」です。第2条で従業員を使う側として定義される「特定業務委託事業者」よりも広く、従業員を雇っていない個人事業主が別の個人事業主に発注する場合も含まれます

「相手は小さな会社だから仕方ない」という理由で諦める必要は、この法律に関してはありません。
✕ ただし「従業員を使用している」と対象から外れます
自分がアルバイトやパートを雇っている場合、特定受託事業者には当たりません。第2条の条文が「従業員を使用しないもの」と限定しているためです。

この場合に使えるのは、規模の要件がある取適法(旧下請法)や民法の一般ルールになります。雇っているかどうかで適用される法律が変わるため、まずここを確認してください。
POINT03
支払期日は60日。決めていなければ納品日
この記事でいちばん知っておく価値があるのは、第4条第2項の「みなし」規定です

報酬の支払期日について、法第4条第1項は次のように定めています。

⚠ 法第4条第1項(報酬の支払期日)
「特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」

括弧の中は、役務の提供を委託された場合(第2条第3項第2号)は「役務の提供を受けた日」が起算日になるという意味です。講師・配達・コンサルティングなどがこれに当たります。記事の作成やデザインのように成果物を納品する委託は第2条第3項第1号にあたり、こちらは「給付を受領した日」が起算日です。

読むべき箇所が3つあります。

✓ 起算日は「納品した日」であって、請求書を出した日ではない
条文は「給付を受領した日から起算して」としています。請求書の発行日でも、締め日でもありません。納品した日から60日です。

「月末締めの翌々月末払い」という条件を提示された場合、月初に納品したものは支払いまで最長で90日近くかかります。この時点で第4条第1項に反している可能性があります。
✓ 検査の有無は理由にならない
「検査をするかどうかを問わず」とわざわざ書かれています。「まだ社内の確認が終わっていないので」という説明で60日を超えることは、条文が正面から否定しています。

そして、日本郵便の勧告につながるのが次の第2項です。

⚠ 法第4条第2項(定めなかった場合のみなし)
「前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。」

ここが受注側にとっていちばん重要な部分です。整理すると、次の2通りになります。

✓ 支払期日が決まっていなかった場合
納品した日そのものが支払期日とみなされます。

期日の話をしないまま仕事を受けて納品した場合、その日のうちに支払わなければ発注者は期日を過ぎていることになります。日本郵便の140人は、この状態でした。

「何も決めていないのだから、いつ払われても文句は言えない」というのは誤りです。決めていないことの不利益は、発注した側が負う建て付けになっています。
✓ 60日を超える期日を決めてしまった場合
納品日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。

契約書に「翌々月末払い」と書いてあり、それに署名していたとしても、60日を超える部分については法律上の期日が上書きされます。合意していたことは、この点では理由になりません。
⚠ 再委託の場合は30日ルールが別にあります
発注元がさらに別の会社から受けた仕事を、あなたに再委託しているケースです。この場合、元の発注者からの支払期日(元委託支払期日)から起算して30日以内で定めなければなりません(法第4条第3項)。

ただしこれが適用されるのは、再委託である旨・元委託者の名称・元委託支払期日などを、第3条の明示の際にあなたに伝えている場合に限られます。伝えられていなければ、原則どおり納品日から60日のルールで判断することになります。

「元請けから入金があってから払う」という説明を受けている場合は、この条文の話をしているはずですので、元委託支払期日がいつなのかを確認すると話が具体的になります。
POINT04
単発か1か月以上かで、使える条文が変わる
減額や買いたたきを禁じた第5条には、期間の条件が付いています

フリーランス法には、報酬の減額や受領拒否を禁じた第5条があります。ただしここには見落とされやすい限定が付いています。

⚠ 法第5条第1項(遵守事項)
「特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。
一 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと
二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること
三 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領した後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること
四 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること
五 …正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。」

この「政令で定める期間」は、施行令第1条で1か月と定められています。

⚠ 役務の提供では、第一号と第三号が適用から外れます
条文の途中にある括弧書きが重要です。第2条第3項第2号に該当する業務委託——つまり役務の提供を委託された場合は、第一号(受領拒否)と第三号(引取り)が除外されます。

講師・配達・コンサルティングのように役務を提供する働き方では、受領拒否と返品を禁じる規定は使えません。形のある成果物を引き渡すわけではないため、条文の構造上こうなっています。

一方、記事・デザイン・プログラムのような情報成果物の作成(第2条第3項第1号)であれば、第一号から第五号まですべて適用されます。

自分の仕事がどちらに当たるかで、使える条文が変わります。ここは見落とされやすい部分です。
✓ 無償のやり直しについては第5条第2項があります
第2項は、特定受託事業者の利益を不当に害する行為として、自己のために金銭・役務その他の経済上の利益を提供させることと、責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、又は受領後にやり直させることを禁じています。

修正の指示が繰り返される場合はこちらに関わります。ただし第2項も第1項と同じく、1か月以上の継続的な業務委託が対象です(第1項の括弧書きに「以下この条において同じ」とあるため)。
✕ 単発の仕事では、第5条は使えません
1か月未満で終わる単発の業務委託には、第5条は適用されません。受領拒否・減額・買いたたき・返品といった行為を直接禁じる条文が使えない、ということです。

ただし契約の更新によって1か月以上継続することになる場合は含まれると条文に明記されています。短い契約を繰り返して受けている場合は、通算で判断される余地があります。
✓ 一方、第3条と第4条に期間の条件はありません
取引条件の明示(第3条)と支払期日(第4条)は、単発の1件でも適用されます。

つまり、初めて受けた1回きりの仕事であっても、条件を書面か電子データで示してもらう権利があり、支払期日は納品から60日以内でなければならないということです。

自分のケースで何が言えるのかを整理するとき、まず第3条と第4条から確認するのが実務的です。
POINT05
条件を出してもらえないときの進め方
申し出は法律上の権利で、それを理由にした報復は禁止されています

取引条件の明示について、第3条は次のように定めています。

⚠ 法第3条第1項(取引条件の明示)
「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(…)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
※(…)は電磁的方法の定義を定めた括弧書きを省略した箇所です

「直ちに」であり、「書面又は電磁的方法」です。口頭の説明だけでは条文を満たしません。逆に言えば、契約書という形式である必要はなく、メールやチャットの記録でも電磁的方法に当たります

⚠ ただし書きがあるため「後から明示」が認められる場合があります
条文の後半にただし書きが置かれています。内容が定められないことに正当な理由がある事項——たとえば作業量が確定するまで報酬額を決められない場合など——は、その時点での明示を要しないとされています。

ただし放置してよいわけではありません。「当該事項の内容が定められた後直ちに」明示する義務が続けて定められています。決まったのに知らされないまま作業が進んでいる状態は、この後段に反している可能性があります。
✓ 書面での交付を求める権利があります(第3条第2項)
メールやチャットで明示された場合、あなたから書面の交付を求めることができます。

「業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。」

条件の記録が流れてしまいやすいチャットでのやりとりが中心の場合、この規定を使って書面にしておくという選択肢があります。
✓ まずは記録に残る形で確認する
大げさな手続きに進む前に、メールで条件を確認するだけで整うケースが現場では多くあります。相手も違反状態と気づいていないことがあるためです。

確認しておきたいのは、業務の内容・報酬の額・支払期日の3つです。「フリーランス法第3条で明示が必要とされているため」と一言添えると、担当者が社内で動きやすくなります。

このやりとり自体が記録として残るため、明示を求めた事実の証拠にもなります。

それでも解決しない場合、法律は受注側に申し出の権利を用意しています。

⚠ 法第6条(申出)
「業務委託事業者から業務委託を受ける特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる
2 公正取引委員会又は中小企業庁長官は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない
3 業務委託事業者は、特定受託事業者が第一項の規定による申出をしたことを理由として、当該特定受託事業者に対し、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。」
✓ 第6条で押さえておきたい3点
窓口は2つある/公正取引委員会だけでなく、中小企業庁長官に対しても申し出ができます。

調査は義務として書かれている/第2項は「調査を行い」「とらなければならない」という書き方です。受け付けるかどうかが行政の裁量に委ねられている、という条文ではありません。

報復の禁止が明文化されている/第3項が、申し出を理由とした取引の削減・停止・その他の不利益な取扱いを禁じています。「言ったら切られる」という不安に対して、法律が正面から答えている部分です。
⚠ 勧告の先に何があるか
今回の日本郵便のように、まず出されるのは勧告(第8条)です。従わない場合は命令(第9条)に進み、命令に違反した場合は50万円以下の罰金(第24条第1号)が定められています。

勧告は企業名とともに公表されるため、実務上はその段階で是正が進むことが多いのが実情です。
✕ 報酬そのものの取り立ては、行政の役割ではありません
公取委や中小企業庁が行うのは、法律に違反する状態を是正させることです。未払いの報酬を代わりに回収してくれる制度ではありません。

金額の請求そのものを争う場合は、弁護士への相談や少額訴訟・支払督促といった民事の手続きが別に必要になります。厚生労働省が設置しているフリーランス・トラブル110番では、弁護士による無料相談を受け付けています。

行政への申し出と、報酬の回収は別のルートであることを分けて考えると、動き方を決めやすくなります。
POINT06
入金がない売上を、帳簿と確定申告でどうするか
未入金でも売上は計上します。ここを誤ると翌年の申告に響きます

ここからは経理の話です。報酬が入っていないのだから、まだ売上ではない——この考え方でつまずく方が少なくありません。

✕ 入金がないから帳簿に書かない、は誤りです
所得税はその年に確定した収入で計算します。入金があった時点ではありません。納品して報酬額が確定していれば、入金前でもその年の売上になります。

年末をまたいで未入金のまま放置すると、売上の計上漏れという形になります。あとから入金があった年にまとめて計上すると、本来とは違う年に所得が乗ることになります。
✓ 納品したときに売掛金として計上する
帳簿への書き方は次のようになります。

納品したとき/借方は売掛金、貸方は売上高。金額は請求額です

入金があったとき/借方は普通預金支払手数料(振込手数料を差し引かれた場合)、貸方は売掛金

源泉徴収されている場合は、入金時の借方に仮払税金(または事業主貸)を立てて、差引後の入金額と合わせます。売掛金の残高が、まだ受け取れていない金額そのものになるため、督促する際の資料としても使えます。
⚠ 白色申告・現金主義の場合は扱いが変わります
上に書いたのは発生主義(取引が起きた時点で記帳する方法)による処理です。

一定の要件を満たして現金主義による所得計算の特例を選んでいる場合は、入金時点での計上になります。ただしこの特例には事前の届出と所得金額の要件があり、誰でも使えるものではありません。55万円・65万円の青色申告特別控除とは併用できず、10万円のみとなります。(令和9年分から新設される75万円の控除についても同様です)

自分がどちらで記帳しているか分からない場合は、まず発生主義で記帳しておくほうが安全です。

では、最終的に回収できなかった場合はどうなるのか。ここは判断が分かれる部分です。

⚠ 貸倒れとして経費にできるかは、状況によって判定が変わります
回収できなくなった売掛金は貸倒損失として必要経費に算入できる場合があります。ただし「入金が遅れている」というだけでは足りません。

相手方の法的整理の手続き、債務者の資産状況からみて全額が回収できないことが明らかであること、取引停止後に一定期間が経過していることなど、状況に応じた判定が必要になる領域です。

金額が大きい場合は、その年のうちに税理士へ相談されることをおすすめします。判定の材料になるのは、督促した記録・相手の状況が分かる資料・売掛金の推移が分かる帳簿です。記帳していなければ、経費にできる余地があったかどうかの検討にも入れません。
✓ 明示された条件は、そのまま帳簿の裏付けになります
第3条によって明示される業務の内容・報酬の額・支払期日は、そのまま売上をいつ・いくらで計上するかの根拠になります。

取引条件の明示を求めることは、報酬を守るためだけの話ではありません。正しい年に正しい金額を計上するための材料を確保するという意味も持ちます。

メールで条件を受け取ったら、取引先ごとにフォルダを分けて保存しておくと、確定申告のときにも督促のときにも同じ資料が使えます。
この記事のまとめ
POINT 01
日本郵便に勧告
→ 明示なし167人・期日なし140人
POINT 02
発注元の規模は問わない
→ 従業員なしなら業種を問わず対象
POINT 03
期日は納品日から60日以内
→ 決めていなければ納品日
POINT 04
第5条は1か月以上が条件
→ 単発でも第3条・第4条は使える
POINT 05
申し出は権利で報復は禁止
→ 窓口は公取委と中小企業庁
POINT 06
未入金でも売上は計上する
→ 納品時に売掛金で記帳
未入金の売上や帳簿の付け方で迷ったら

報酬が入らないまま年末を迎えると、売上をいつ計上するか・回収できない分をどう扱うかという判断が出てきます。帳簿の付け方や書類の残し方について、第三者に一度整理してもらうと動きやすくなることがあります。

お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします

税理士事務所での実務経験をもとに、経理まわりのご相談をお受けしています。※具体的な税額の計算・申告書の作成・個別の税務判断は税理士業務のため承っておりません。また、報酬請求など法律上の争いに関するご相談は弁護士の業務となるため承っておりません。

本記事は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)および同法施行令、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号)の条文、ならびに公正取引委員会が2026年9月2日に公表した日本郵便株式会社に対する勧告および同委員会の勧告一覧をもとに、2026年9月時点の情報を整理したものです。条文の引用はe-Gov法令検索により、括弧書き等を省略した箇所は(…)で示しています。

個別の取引が法律の適用対象に当たるかどうか、また報酬の請求に関する法律上の判断については、弁護士または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口へご確認ください。所得の計算方法・貸倒損失の判定など税務上の取扱いに関する個別の判断は、所轄の税務署または税理士へご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。

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