消費税1%の大綱を解説|簡易課税の2年縛りは不適用に

消費税1%の大綱を解説|簡易課税の2年縛りは不適用に 制度・改正対応
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税理士事務所の現場から

消費税1%の大綱が閣議決定
2年縛りの不適用まで書かれました

8月の基本方針では空欄だった事業者向けの手当てが、ようやく具体的に埋まりました

2026年9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。8月5日の基本方針では「検討する」としか書かれていなかった事業者向けの措置が、この大綱で具体的に書き込まれています。とくに実務に効くのが、簡易課税のいわゆる「2年縛り」を適用しないという一文と、簡易課税事業者の飲食料品部分は実質的に納税額が出ない仕組みです。この記事では、大綱の原文(全16ページ)を読んだうえで、経理・事業者の立場で押さえるべき点を整理します。あわせて、特例税率が適用されない取引という見落としやすい例外も取り上げます。
⚠ 大綱は「政府の方針」であって、まだ法律ではありません
大綱は閣議決定された政府の方針であり、法律そのものではありません。報道によれば、政府はこの大綱をもとに関連法案を作成し、10月5日に召集が予定されている臨時国会に提出するとされています。したがって、以下の内容は国会審議の過程で変更される可能性があります。本記事は2026年9月15日時点の大綱原文にもとづく整理です。
POINT01
決まった文書の名前と、税率の正確な書き方
「1%」は国と地方を合わせた数字です

まず文書の名前を正確に押さえます。9月15日に閣議決定されたのは、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」です。毎年12月に決まる「令和○年度税制改正の大綱」とは別の、この件だけを扱う単独の大綱になっています。

原文は内閣官房 社会保障国民会議のページで公表されています(全16ページ)。本記事の引用はすべてこの原文にもとづいています。

次に税率です。報道では「1%」と書かれますが、大綱の原文はこう書いています。

📖 大綱原文(第二・一・1)より
令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間に事業者が国内において行う飲食料品(中略)について、消費税の税率を0.78%とする特例を創設する(地方消費税率と合わせて1%。以下「特例税率」という。)。

国の消費税が0.78%、地方消費税と合わせて1%という書き方です(逆算すると地方消費税分は0.22%になります)。いまの軽減税率8%が「国6.24%+地方1.76%」と表記されるのと同じ構造で、申告書や税額計算はこの内訳で動きます。実務でシステム設定や税区分の話をするときは、この0.78%という数字が出てくる場面があります。

対象はいまの軽減税率8%が適用されている飲食料品です。対象範囲そのものは変わりません。そして注意したいのが新聞です。

⚠ 新聞は8%のまま据え置きです
大綱の注1は、軽減税率の対象品目のうち「週2回以上発行される新聞の定期購読分」の税率については現行制度を維持すると明記しています。つまりいまの軽減税率8%対象が丸ごと1%になるわけではありません。新聞は8%のまま残ります。軽減税率の対象品目を扱う事業者は、税区分が1%・8%・10%の3本立てになる点を先に押さえてください。

インボイス(適格請求書)の記載についても書かれています。特例対象の譲渡を行った場合、適格請求書や仕入明細書の「適用税率」欄には特例税率を、「消費税額等」欄には特例税率に基づく金額を記載するとされています。請求書の様式そのものが変わるわけではなく、記載する税率の値が増えるという整理です。

POINT02
簡易課税の「2年縛り」は適用しないと明記された
8月の基本方針では書かれていなかった部分です

ここが今回の大綱で最も実務に効く部分です。

前提を説明します。簡易課税制度は、いったん選択すると原則2年間はやめられません(消費税法37条。いわゆる「2年縛り」)。また課税事業者を選択した場合も同様の縛りがあります。

ここで問題が起きます。飲食料品を扱う事業者は、売上の税率が1%に下がる一方、仕入や経費にかかる消費税(10%のものが多い)は変わりません。すると本則課税なら還付になるケースが出てきます。ところが2年縛りがあると、還付を受けたくても本則課税に移れない。大綱はこの問題をそのまま指摘しています。

📖 大綱原文(第二・二・1)より
令和9年4月1日の属する課税期間が既に開始している事業者や簡易課税制度の適用を選択して2年が経過していない事業者は、飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げを受けて、本則課税に移行し、還付申告を行う必要があっても、現行制度上は当該移行ができないこととなる。

これを踏まえて講じられるのが、次の2つの措置です。

  • 課税事業者選択届出書/令和9年4月1日の属する課税期間から課税事業者になることを選択する場合、その課税期間の末日までに提出すれば、期首の前日に出したものとみなす
  • 簡易課税制度選択不適用届出書/同じ課税期間について簡易課税をやめる場合、その課税期間の末日までに提出すれば期首の前日に出したものとみなし、さらに2年縛りは適用しない

消費税の届出は「適用を受けたい課税期間が始まる前の日まで」に出すのが原則です。それがその課税期間が終わるまで待てるようになる。つまり1年間の実績を見てから、本則課税か簡易課税かを選べるということです。これは実務上かなり大きい緩和です。

⚠ ただし「自動的に有利になる」わけではありません
期限が延びるのは届出を出す期限であって、判断しなくてよくなるわけではありません。届出を出し忘れれば、簡易課税のまま課税期間が終わります。また、この特例が使えるのは令和9年4月1日の属する課税期間についての取扱いとして書かれているものです。自社がどの課税期間に当たるか(3月決算か12月決算かなどで変わります)は、個別に確認してください。
POINT03
簡易課税でも飲食料品部分は納税額が出ない仕組みに
みなし仕入率ではなく「売上税額と同額」という書き方をしています

簡易課税は、売上にかかる消費税に業種ごとのみなし仕入率(卸売90%・小売80%など)を掛けて仕入控除税額を計算する制度です。実際の仕入がいくらかは関係ありません。

すると税率が1%に下がったとき、簡易課税の事業者には不利が生じます。売上税額が小さくなっても、その一定割合しか控除できないため、わずかながら納税額が残る。一方で本則課税なら還付になる。大綱はこの差を問題として挙げ、次の特例を設けるとしています。

📖 大綱原文(第二・二・2)より
簡易課税制度において可能な最大限の対応として、簡易課税制度の適用を受ける事業者が特例対象課税資産の譲渡を行った場合における(中略)仕入控除税額については、業種区分にかかわらず、当該特例対象課税資産の譲渡に係る消費税額(いわゆる売上税額)と同額とする特例を設ける。

売上税額と同額を控除できる、という書き方です。売上税額から同額を引けば残りはゼロですから、飲食料品の譲渡に対応する部分については、簡易課税でも納税額が出ないことになります。業種区分(第1種〜第6種)にかかわらず、という点も明記されています。

さらに、いわゆる2割特例・3割特例の適用を受ける場合も同様とされています。インボイス登録にともなう小規模事業者向けの経過措置を使っている事業者も、同じ扱いになります。

⚠ 「納税がゼロになる」のは飲食料品の部分だけです
大綱の注は、特例対象以外の売上(例:軽減税率対象でない商品の販売)については、その売上税額に基づいて現行どおりの簡易課税を適用するとしています。つまり飲食料品とそれ以外を売っている事業者は、売上を税率ごとに区分した上で、飲食料品部分だけこの特例を使うことになります。区分経理ができていることが前提になる点は、軽減税率導入時と同じです。
POINT04
中間申告が過大になる問題への手当て
前年実績で計算すると、払いすぎになるためです

中間申告は、原則として前年に納めた消費税額をもとに計算します。ところが税率が8%から1%に下がると、前年実績で計算した中間申告税額は実態より大きくなりすぎます。資金繰りの面では、払わなくてよいお金を先に払うことになります。

大綱は、これに対して次の措置を講ずるとしています。

  • 令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間/前の課税期間の取引に特例税率(1%)が適用されていたものとして計算した中間申告税額を記載できる(その額がない場合はゼロ)
  • 令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間/こんどは逆に、前の課税期間の取引に特例税率が適用されなかったものとして計算した額を記載できる

2つ目は、税率が1%から8%に戻ったあとの話です。戻った年は、前年実績(1%の期間)で計算すると中間申告税額が小さくなりすぎ、期末にまとめて負担が来ます。それを避けるための調整です。下がるときと戻るときの両方に手当てがあると読めます。

⚠ 戻るときのほうが資金繰りは厳しくなります
1%から8%に戻る令和11年4月以降は、売上にかかる消費税が一気に増えます。預かった消費税は手元に残りますが、それは納税のために預かっているお金です。引下げ期間中の資金感覚のまま使ってしまうと、戻ったあとの納税で行き詰まります。2年後に戻ることまで含めて資金計画を立てるという視点は、いまの段階から持っておいて損はありません。
POINT05
値札の貼替えは「4つの期間」で緩和される
税抜きだけの表示が認められるわけではありません

店頭価格は、消費税込みの総額で表示することが義務づけられています(総額表示義務)。税率が変わる日をまたいで値札を貼り替えるのは、店舗にとって大きな負担です。

まず認められないことから押さえます。大綱は、税抜価格(本体価格)のみを表示する方法や、税抜価格に続けて「+税」とだけ表示する方法など、税込価格を表示しない方法は引き続き認められないと明記しています。総額表示義務そのものが外れるわけではありません。

そのうえで、直ちに対応することが困難な事情がある場合に限り、次の期間について、その期間に対応する税率で計算した税込価格を表示してよいとされています。誤認されないための措置を講じている場合という条件つきです。

  • 令和9年2月1日〜3月31日/まだ8%の期間だが、1%に基づく税込価格を表示してよい(引下げ前の先回り)
  • 令和9年4月1日〜5月31日/もう1%の期間だが、8%に基づく税込価格を表示してよい(引下げ後の貼替え猶予)
  • 令和11年2月1日〜3月31日/まだ1%の期間だが、8%に基づく税込価格を表示してよい(引上げ前の先回り)
  • 令和11年4月1日〜5月31日/もう8%の期間だが、1%に基づく税込価格を表示してよい(引上げ後の貼替え猶予)

切替日の前後2か月ずつ、古い税率と新しい税率のどちらの税込価格でも表示できる、という設計です。夜間に一斉に値札を貼り替えられない店舗や、カタログ・商品パッケージに価格が印字されている場合が理由として挙げられています。

⚠ 「表示」と「実際に受け取る金額」は別の話です
これはあくまで値札の表示についての特例です。レジで実際に適用する税率と、納める消費税額は、その取引日の法律上の税率で決まります。表示が8%のままでよい期間だからといって、1%の期間の売上を8%で申告してよいという意味ではありません。表示の猶予と、税額計算は切り離して考えてください。レジシステムの改修が必要かどうかは、この点を前提に販売管理システムの提供元へ確認することをおすすめします。

なお大綱の注では、スマートレジシステムへの移行やレジシステムの改修を行う中小企業等に対する支援を行うとも書かれています。ただし支援の内容・金額・申請方法は大綱には書かれておらず、今後の予算編成の過程で具体化されます。

POINT06
1%にならない取引がある(見落としやすい例外)
定期購入と通信販売の一部が除外されています

報道ではほとんど触れられていませんが、大綱には特例税率を適用しない取引が書かれています。定期供給契約と通信販売の一部です。

理由は、特例税率を前提とした契約変更等が困難な事例が生じることが想定されるためとされています。具体的には次の2つです。

  • 定期供給契約/令和9年1月1日より前に締結した定期供給契約に基づき、令和9年4月1日より前に対価を受け取っている、同日以後の飲食料品の譲渡(その受け取っている部分に限る)
  • 通信販売/令和9年1月1日より前に販売条件の提示が行われ、令和9年4月1日より前に申込みを受けた、同日以後の飲食料品の譲渡

いずれも「特例税率を前提とするものを除く」という括弧書きがついています。つまりあらかじめ1%を織り込んだ契約なら、この除外には当たらないという整理です。

⚠ 日付が2つあります。1月1日と4月1日です
除外の判定には令和9年1月1日(契約・条件提示の時期)と令和9年4月1日(対価の領収・申込みの時期)という2つの日付が出てきます。定期購入や頒布会、カタログ通販で飲食料品を扱っている事業者は、令和9年1月1日より前に結んだ契約が残っているかどうかが実務上の分かれ目になります。該当しそうな契約がある場合は、早めに洗い出しておくと、直前に慌てずに済みます。

あわせて、農林漁業者・食品事業者・外食事業者への対応も大綱に書かれています。とくに本則課税に移行することが困難な簡易課税事業者・免税事業者である農林漁業者については、個別の売上高を踏まえた金額を給付する仕組みを導入するとされました。8月の基本方針では「検討する」だけだった部分が、給付という形で一歩進んでいます。また本則課税事業者に移行する際の相談対応や、税理士費用等の経費に対する支援を行うという記述もあります。

ただし、これらの支援はいずれも金額・要件・申請方法が大綱に書かれていません。「予算編成過程において支援内容を具体化する」とされている段階です。支援があることを前提に設備投資の判断をするのは、まだ早いと考えています。

この記事のまとめ
POINT 01
税率は国0.78%+地方で1%。新聞は8%のまま据え置き
POINT 02
簡易課税の2年縛りは適用しないと明記。届出期限も期末まで延長
POINT 03
簡易課税でも飲食料品部分は納税額が出ない(売上税額と同額を控除)
POINT 04
中間申告は下がるときも戻るときも調整できる
POINT 05
値札は切替日の前後2か月猶予。ただし税抜表示は不可
POINT 06
令和9年1月1日前の定期購入・通販は1%にならない場合がある
✓ いま手をつけておくとよいこと
  • 税区分が3本立てになる前提でシステムを確認する/1%・8%(新聞)・10%が並びます。販売管理システムの提供元に、対応予定と時期を聞いておく
  • 自社が簡易課税か本則課税かを確認する/簡易課税なら、今回の特例で判断を先送りできます。ただし届出は必要です
  • 令和9年1月1日前の定期契約を洗い出す/定期購入・頒布会・カタログ通販がある事業者は、除外に当たる契約があるかを先に把握する
  • 1%から8%に戻る時期の資金計画も立てる/令和11年4月に戻ります。戻ったあとの納税を見込んでおく
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※ご相談は制度の一般的な整理までとなります。個別の税務判断は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

この記事は2026年9月15日時点の公表情報をもとに作成しています。主な情報源は、内閣官房 社会保障国民会議が公表した「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日閣議決定・全16ページ)の原文PDFです。原文PDFは内閣官房「社会保障国民会議」のページ(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokuminkaigi/index.html)から辿ることができます。PDFの掲載先URLは、公表元の都合により変更される場合があります。本記事で引用した原文の記述は、いずれも上記大綱に記載されている内容です。大綱は閣議決定された政府の方針であり、法律の成立ではありません。報道によれば、政府は大綱をもとに関連法案を作成し、10月5日に召集が予定されている臨時国会に提出するとされています。税率・対象範囲・期間・開始時期・各特例の内容および適用要件は、今後の国会審議の過程で変更される可能性があります。本記事で紹介した簡易課税・中間申告・総額表示の各特例は、いずれも大綱に方針として記載されている段階のものであり、適用の可否・手続の詳細は今後公表される法令および国税庁の取扱いによって確定します。個々の事業者がこれらの特例を適用できるかどうかは、課税事業者か免税事業者か、簡易課税を選択しているか、課税期間がいつ開始するかなど、個々の状況によって異なります。農林漁業者等への給付およびレジシステム改修等への支援については、大綱に方針が記載されているのみで、その金額・要件・申請方法のいずれも確定していません。本記事は、支援制度が特定の内容で設けられることを保証するものではありません。価格設定・値下げの是非について、本記事は特定の判断を推奨していません。実際の判断にあたっては、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
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