プルデンシャル生命39億円問題 法人保険の確認点と節税の今

プルデンシャル生命39億円問題 法人保険の確認点と節税の今 経理の実務手順
※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
トレンドニュース × 経理の視点

プルデンシャル生命の金銭詐取問題
法人保険の契約者が確認すべきことと「節税では入れない」今の常識

お金は必ず保険会社へ直接——そして法人保険は2019年から「節税商品」ではなくなっています

法人保険 経営者の保険契約 担当者個人にお金を渡すのは → どんな理由でもNG 「全額損金で節税」は → 2019年改正で終了 いま入る目的は → 事業保障・退職金準備
2026年8月24日、プルデンシャル生命保険は、同社の営業社員1名が「架空の高金利預金」といった事実と異なる説明を行い、不適切に金銭を受領していた疑いのある事案を公表しました(同社ニュースリリース)。同社が新規契約の販売活動の自粛を始めた本年2月9日以降の期間にも発生していた可能性があるとされ、当該社員はすでに亡くなっていることが確認されています。同社はこれに先立つ7月にも被害額の拡大を公表しており、問題は現在も収束していません。プルデンシャル生命は中小企業の経営者向け保険に強い会社として知られており、「うちの法人契約は大丈夫か」と不安になった経営者・経理担当の方も多いはずです。この記事では、①いま何が起きているのか、②契約者が今すぐ確認すべきことを整理したうえで、あわせて知っておきたい③「法人保険はもう節税では入れない」という2019年以降のルール、④法人保険の正しい経理処理まで、経理初心者の方にもやさしく解説します。
POINT01
何が起きているのか——販売自粛の期間中にも、新たな疑いが公表された
2026年1月の公表から半年以上が経ちましたが、被害の全体像はまだ確定していません

報道と同社グループの公表内容を時系列で整理すると、次のようになります。

これまでの経緯(2026年8月24日時点)
  • 2026年1月: 社内調査の結果を公表。100人を超える社員・元社員が、長期間にわたり、約500人の顧客から架空の投資話でお金を集める・借りたお金を返さないなどの手口で金銭を受け取っていたと報じられました
  • 2026年2月4日: ガバナンス態勢と営業諸制度の抜本的見直しのため、新規契約の販売活動の自粛を公表(自粛開始は2月9日)。あわせて第三者委員会による調査が進められています
  • 2026年春以降: 金融庁が保険業法(保険会社を監督する法律)にもとづく立入検査に着手したと報じられています
  • 2026年7月1日: 企業倫理・ガバナンス強化のための組織改革を実施
  • 2026年7月24日: 補償の進捗を公表。新たな被害が判明し、判明分の総額はさらに拡大。一部の顧客については補償の決定が進んでいると報じられています
  • 2026年8月24日: 営業社員1名が「架空の高金利預金」といった事実と異なる説明を行い、不適切に金銭を受領していた疑いのある事案を公表。同社は、販売自粛を開始した2月9日以降の期間にも発生していた可能性があるとしています
⚠ 「調査中」ということは、被害はまだ増える可能性がある
これまでの発表は「最終報告」ではなく途中経過です。実際、再発防止に取り組んでいるさなかの自粛期間中にも、新たな疑いのある事案が公表されました。8月24日公表の事案について、同社は現時点で被害件数や被害額を含めた全容は判明していないとしています。つまりこの問題は「終わった話」ではなく、契約者にとっては今まさに自分の契約を確認すべきタイミングだということです。
⚠ 担当者が退職・死亡している場合こそ、自分から確認する
8月24日公表の事案では、当該営業社員はすでに亡くなっていることが確認されています。同社は「事実確認には一定の制約が生じる可能性がある」としたうえで、心当たりのある方から広く情報を寄せてほしいと呼びかけています。これは裏を返せば、会社側からの連絡を待っているだけでは、自社の被害が把握されないまま終わる可能性があるということです。過去に担当だった人が退職・異動・死亡している契約こそ、自社の帳簿を先に確認し、心当たりがあれば公式窓口へ申し出る必要があります。
POINT02
契約者(経営者・経理)が今すぐ確認すべきこと——お金の流れを見るだけでわかる
保険料は「保険会社へ直接」が大原則。担当者個人が間に入る支払いはすべて危険信号です

今回報じられている手口の多くは、ランサムウェアのような高度なものではなく、「営業担当者が個人的にお金を預かる・借りる」という昔ながらのものです。だからこそ、経理の帳簿と通帳を見れば自社でチェックできます。

今すぐできる確認(帳簿と記憶の3ステップ)
  • ① 保険料の支払先を元帳で確認する: 「支払保険料」「保険積立金」の相手先が保険会社名義の口座振替・クレジット払いになっているか。個人名義の口座への振込が1件でもあれば要確認です
  • ② 保険料以外にお金を渡していないか思い出す: 「特別な運用に回す」「一時的に立て替えてほしい」などの名目で、担当者に現金や振込でお金を渡したことがないか。手書きの領収書や個人名義の借用書しかないものは特に危険です
  • ③ 不安があれば会社の公式窓口に直接確認する: 担当者本人ではなく、保険会社のカスタマーサービスに契約内容と入金記録を照会します。各社が相談窓口を設けています
これをやったら危険信号(すべてNG)
  • 営業担当者の個人口座に振り込む・現金を手渡しする(保険料の払込方法として、担当者個人がお金を預かることはありません)
  • 保険会社の特別な運用」「未公開の社内商品」「利回り保証」といった担当者個人からの投資の誘いに乗る(正規の保険商品にこのような案内はありません)
  • 高金利の預金」「特別な金利の口座で預かる」といった預金・定期預金を装った勧誘に応じる(8月24日公表の事案は「架空の高金利預金」と説明されていました。そもそも保険会社は預金を取り扱えません)
  • 証拠が手書きの領収書・個人名義の借用書しかない取引を放置する(正規の取引なら保険会社発行の書類が必ずあります)
⚠ 「投資」より「預金」のほうが警戒されにくい
経理担当者は「未公開株」「利回り保証の投資」には身構えますが、「高金利の預金」と言われると警戒がゆるみます。預金は元本が減らないものという印象があるためです。しかし、保険会社が預金を取り扱うことは、そもそも法律上できません。保険業法は、保険会社が行える業務を保険の引受けなどに限定し、それ以外の業務を行うことはできないと定めています(保険業法第97条・第100条)。一方、預金の受入れを含む「銀行業」は、免許を受けた者でなければ営めません(銀行法第2条第2項・第4条第1項)。
つまり、保険の担当者から「預金」の話が出た時点で、商品として成立しようがないということです。会社のお金を動かす前の判断基準は、「そもそもこの会社が扱える商品なのか」——ここが最初の関門になります。
✓ 慌てて解約する必要はありません——会社が破綻したわけではない
今回の問題は営業社員による不祥事であり、保険会社の経営破綻ではありません。保険契約そのものは有効で、保険金・解約返戻金の支払い能力に問題が生じている状況ではないと報じられています。不安から慌てて解約すると、①解約返戻金が低い時期で損をする、②経営者の健康状態によっては同じ保障に入り直せない、③その間の保障が消える——という不利益のほうが大きくなりがちです。確認すべきは「解約すべきか」ではなく、「お金の流れが正規ルートか」です。なお、こうした「担当者を装った・肩書きを悪用した詐欺」への備えは、ビジネスメール詐欺(BEC)対策の記事でも解説しています。
POINT03
そもそも法人保険は、もう「節税」では入れない——2019年ルールを知っていますか
「保険料が全額損金で節税になる」は過去の話。いま同じ営業トークが出たら疑ってください

プルデンシャル生命をはじめ、生命保険各社の経営者向け保険はかつて「保険料が全額損金(経費)になり、解約すれば大半が戻ってくる」という実質的な節税商品として盛んに販売されていました。しかしこの使い方は、2019年に国税庁がルールを変えて事実上終わっています

「節税保険」が終わるまでの流れ
  • 2019年2月(通称「バレンタインショック」): 国税庁が法人向け保険の税務取扱いの見直しを表明。各社は「全額損金」タイプの保険の販売を一斉に停止しました
  • 2019年6月に通達を改正、7月8日以後の新契約から新ルールを適用: 損金にできる割合が「最高解約返戻率」(保険期間中いちばん高い解約返戻率)で決まる仕組みに変わりました
  • 2021年6月: 残っていた抜け道の「名義変更プラン」(解約返戻金が低い時期に契約を法人から経営者個人へ移し、低い評価額で買い取る手法)も、所得税のルール改正で封じられました
現在のルール: 最高解約返戻率で損金にできる割合が決まる(2019年7月8日以後の契約)
  • 最高解約返戻率50%以下 → 保険料は全額損金にできます(掛け捨てに近いもの)
  • 50%超〜70%以下 → 保険期間の当初4割の期間は、保険料の40%を資産計上(損金は60%)。ただし被保険者1人あたり年換算保険料30万円以下なら全額損金にできる特例があります
  • 70%超〜85%以下 → 当初4割の期間は、保険料の60%を資産計上(損金は40%)
  • 85%超 → 当初10年間は「保険料 × 最高解約返戻率 × 90%」を資産計上。返戻率90%の保険なら損金にできるのは2割弱だけです

細かい条件は国税庁タックスアンサーNo.5364-2(前払部分の保険料が多い定期保険等)とNo.5364にまとまっています。要するに、「戻ってくるお金が多い保険ほど、損金にできない」——節税目的の設計が成り立たないように作られたルールです。

⚠ そもそも保険の損金算入は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」です
仮に保険料を損金にできても、解約返戻金を受け取った時にその大部分が利益(雑収入)として課税されます。税金が消えるのではなく、納税のタイミングが後ろにずれるだけ。役員退職金の支払いなど「出口」の赤字とぶつける計画がなければ、節税効果はほぼありません。いまだに「保険で節税できます」というセールストークがあったら、2019年以降のルールを踏まえていない説明だと考えて、その場で契約しないでください。
POINT04
それでも法人保険に意味はある——正しい目的と経理処理
目的は「節税」から「事業保障」へ。仕訳のルールもここで押さえましょう

「節税にならないなら法人保険は不要か」というと、そうではありません。目的を正しく持てば、法人保険はいまでも有効な道具です。

いま法人保険に入る意味があるケース
  • 事業保障: 経営者に万一のことがあった時、借入金の返済・当面の運転資金・従業員の給与を保険金でまかなう(中小企業では経営者の信用=会社の信用です)
  • 連帯保証対策: 経営者個人が会社の借入の連帯保証人になっている場合、遺された家族を保証債務から守る資金になります
  • 役員退職金の準備: 解約返戻金を退職金の原資に充てる設計。「損金の繰り延べ」と「退職金という出口」をセットにする、現在も成り立つ王道の使い方です
仕訳例: 最高解約返戻率90%・年間保険料100万円の定期保険(当初10年間)
  • 資産計上額 = 100万円 × 90% × 90% = 81万円、損金は残りの19万円
  • 支払時: (借方)保険積立金 810,000 / 支払保険料 190,000 (貸方)普通預金 1,000,000
  • 解約時: (借方)普通預金(受け取った返戻金) / (貸方)保険積立金(それまでの資産計上累計)、差額はプラスなら雑収入(益金)、マイナスなら雑損失として処理します
  • 掛け捨て(最高解約返戻率50%以下)なら、(借方)支払保険料 / (貸方)普通預金 だけのシンプルな処理です
✓ 決算前チェック: 古い契約と新しい契約でルールが違う
2019年7月7日以前の契約は旧ルール(契約時の取扱い)のまま処理を続けます。つまり同じ会社の帳簿に、旧ルールの保険と新ルールの保険が混在するのが普通です。保険会社が毎年送ってくる「保険料控除証明書・税務取扱いのご案内」に経理処理(損金割合)が書かれているので、決算時はそれを確認しながら仕訳するのが確実です。判断に迷う契約は税理士に確認しましょう。
まとめ: 法人保険は「お金の流れ」と「目的」で見直す
POINT 01
自粛期間中にも新たな疑い
→ 調査継続中。「終わった話」ではない
POINT 02
確認すべきは保険料の支払先
→ 担当者個人へのお金はどんな名目でもNG
POINT 03
「高金利の預金」は成立しない
→ 保険会社は預金を扱えない(保険業法)
POINT 04
担当者が不在なら自分から確認
→ 待つだけでは把握されずに終わる
POINT 05
「節税で入る」は2019年に終了
→ 損金割合は最高解約返戻率で決まる
POINT 06
目的は事業保障と退職金準備
→ 資産計上と損金の区分を仕訳で押さえる

今回の事件から経理が学ぶべき教訓はシンプルです。「会社のお金は、必ず会社(保険会社)名義の口座にしか払わない」——このルールを守っているだけで、今回のような被害のほとんどは防げます。そして保険の提案を受けたら、「節税になるか」ではなく「万一のとき、いくら必要か」で判断してください。

振込先のすり替えを狙う「ビジネスメール詐欺」への備えも、あわせて確認しておくと安心です。

経理を狙う詐欺の手口と対策をあわせて読む

お金まわりの不安、ひとりで抱えていませんか?

「この仕訳で合っているか不安」「経理のやり方を一度ちゃんと整えたい」——そんなお悩みのご相談も承っています。税理士事務所での実務経験をもとに、無理のない経理のしくみづくりをご提案します。

ココナラの出品サービスもありますので、そちらもご活用ください。

お金の悩みやそれにまつわる疑問や相談お受けします

この記事は、2026年8月25日時点のプルデンシャル生命保険株式会社およびプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンの公表資料、ならびに各社報道にもとづいて作成しています。事件に関する記載は公表内容・報道内容の紹介であり、調査は現在も進行中で、同社も「被害件数や被害額等を含めた全容については判明していない」としているため、被害の内容・金額等は今後変わる可能性があります。特定の企業・商品・個人の評価や違法性を断定するものではありません。また、保険の税務取扱いは契約日・契約内容によって異なり、記事の内容は一般的な解説です。実際の契約の経理処理・税務判断にあたっては、保険会社発行の税務取扱いのご案内をご確認のうえ、税務署または税理士にご相談ください。なお、本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
タイトルとURLをコピーしました