クラウドサービス・サブスクの勘定科目は?
Zoom・Google Workspace・ChatGPTの仕訳をやさしく解説
「通信費」でも「支払手数料」でも実は正解——大事なのは”毎回同じ科目”と、海外サービスの消費税です
クラウドサービスの利用料について、「この科目を使いなさい」という法律上の決まりはありません。どの科目で処理しても経費(損金)になることは同じで、税金の額も変わりません。実務でよく使われるのは次の科目です。
- 通信費: 「インターネット経由で使うサービス」という整理。プロバイダ料金や電話代と同じ並びで、クラウドサービスに使う会社が多い定番です
- 支払手数料: 「サービス利用の対価」という整理。こちらも定番で、freeeやマネーフォワードの公式ガイドでも候補に挙がる科目です
- 消耗品費: 単発・少額の買い切りソフトやアプリ(10万円未満)に使われることがあります
- 新聞図書費: 日経電子版や有料メルマガなど、「情報の購読」がメインのサブスクはこちらが自然です
実際によくあるサービスを科目の例と一緒に並べます。繰り返しになりますが、下の例と違う科目でも、社内で統一されていれば問題ありません。
- AIツール(ChatGPT Plus・Claude・Geminiなどの月額課金) → 通信費 または 支払手数料
- 会計・請求書ソフト(freee・マネーフォワード クラウド) → 通信費 または 支払手数料
- Web会議・グループウェア(Zoom・Microsoft 365・Google Workspace) → 通信費
- 電子契約(クラウドサイン・DocuSign) → 支払手数料 または 通信費
- デザイン・ストレージ(Adobe・Canva・Dropbox) → 通信費
- サーバー・ドメイン(レンタルサーバー代・ドメイン更新料) → 通信費 または 支払手数料
- 情報購読系(日経電子版・有料note) → 新聞図書費
- 利用時: (借方)通信費 3,200 / (貸方)未払金 3,200
- カード引き落とし時: (借方)未払金 3,200 / (貸方)普通預金 3,200
- ドル建て請求の円換算は、実務ではカード明細に載る円建ての請求額をそのまま使うのが一般的です(レートを自分で調べて換算し直す必要はありません)
- 同じサービスの科目を毎回気分で変える(継続適用に反し、集計も比較もできなくなります)
- 10万円以上の買い切りソフトを全額その年の経費にする(無形固定資産「ソフトウェア」として原則5年で減価償却です。月額課金のクラウドサービスは資産計上不要で、この心配はありません)
- 個人事業主がプライベート兼用のサブスクを全額経費にする(事業で使う割合分だけ経費にする「家事按分」が必要です。例: ChatGPT Plusを仕事半分・趣味半分なら経費は50%)
ここまでは考え方の話でした。実際には「このサービスは何費?」とサービス名で迷うことが多いので、相談の多い4つを個別に整理します。いずれも「絶対にこの科目」という決まりはない点は同じですが、サービスごとに注意点が違います。
- 科目は「通信費」が最も自然です。電話会議の代替という位置づけで、電話代・回線料と同じ並びになります。「会議費」に入れる会社もありますが、会議費は飲食代などが混ざる科目のため、毎月定額のツール代は通信費に分けたほうが集計しやすくなります
- Zoomは契約時に「JCT番号」(消費税の登録番号)の入力欄が出ることがあります。これは自社の登録番号を伝えるための欄で、入力すると事業者向けの扱いになります
- ウェビナー・大容量クラウド録画などのオプションを追加した場合も、本体と同じ科目でまとめて問題ありません
- どちらも科目は「通信費」が一般的です。メール・ストレージ・オフィスソフトが一体になっているため、無理に機能ごとに分ける必要はありません
- ライセンス数の増減がある点に注意してください。社員が増えて月額が変わっても科目は同じですが、請求額が毎月変わるため「いつもと同じ金額」でのチェックが効きません。人数変動があった月は請求書の内訳を確認する習慣をつけると、解約漏れ(退職者分の課金継続)を防げます
- 買い切りのOffice(パッケージ版)はクラウドサービスではなくソフトウェアの購入です。10万円以上なら資産計上の検討が必要になり、処理が変わります
- 科目は「支払手数料」または「通信費」。電子契約は「印鑑・郵送の代わり」という性格が強いため、従来の印紙代・郵送費と対比して支払手数料に入れる会社が多いです
- 電子契約サービスには月額基本料に加えて「送信1件あたり◯円」の従量課金があるものがあります。基本料と従量課金を別科目に分ける必要はなく、まとめて同じ科目で構いません
- 電子契約書そのものは電子帳簿保存法の「電子取引」に該当し、電子のまま保存が必要です。印刷して紙で保管するだけの運用にしないよう注意してください
ChatGPT・Claude・Zoom・Adobeなど、海外の会社が提供するクラウドサービスには、国内サービスにはない消費税の論点があります。ネット経由で受けるサービスは消費税法上「電気通信利用役務の提供」と呼ばれ、国内・国外どちらの事業者から買ったかで扱いが変わります(制度の全体像は国税庁タックスアンサーNo.6118にまとまっています)。
消費税の申告で仕入税額控除(支払った消費税を差し引くこと)を受けたい場合のポイントは、国内サービスと同じく「相手がインボイス(適格請求書)発行事業者かどうか」です。海外の大手クラウド事業者にも日本のインボイス登録をしている会社は多くありますが、登録の有無はサービスごとに違います。
- ① 領収書・請求書に「T+13桁」の登録番号があるか確認する(海外サービスは、アカウント設定画面から日本向けの領収書をダウンロードできることが多いです)
- ② 番号があれば、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで実在を確認する(番号を入力するだけで登録名が出ます)
- ③ 領収書を保存する(電子でダウンロードした領収書は電子帳簿保存法のルールに沿って保存します)
サブスクには「年払いにすると割引」のプランが多くあります。年払いした場合、原則は支払時にいったん「前払費用」という資産に計上し、毎月少しずつ費用に振り替える処理になります。ただし、実務ではもっと簡単にできる特例があります。
- 支払日から1年以内にサービス提供が終わる前払いは、毎期継続して同じ処理をすることを条件に、支払った年度に全額経費(損金)にできます
- 例: 年額60,000円の会計ソフトを年払い → 特例を使えば (借方)通信費 60,000 / (貸方)普通預金 60,000 の1本で完了
- 原則どおりなら、支払時に前払費用60,000円を計上し、毎月5,000円ずつ通信費へ振り替えます(月次の損益を正確にしたい会社はこちら)
- 注意: この特例は等質・等量のサービスの継続契約が前提で、売上原価になる支出などには使えません。金額が大きい場合は税理士に確認してください
→ どちらでもOK。毎回同じにするのがルール
→ 兼用サブスクは家事按分を忘れずに
→ 電子契約は支払手数料が自然
→ 「T+13桁」の登録番号を確認・保存
→ 短期前払費用の特例で支払時に全額経費も可
→ 退職者分の課金が続いていないか確認
クラウドサービスの仕訳で迷ったら、「科目はいつもと同じか? 海外サービスなら登録番号はあるか?」の2つだけ確認してください。この2点を押さえれば、サブスクの経理はほとんど迷わなくなります。
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