会計ソフトの選び方
2027年からは「認証」で選ぶ
機能や価格の前に、確認しておくべき一点があります
ただし準備の期限は2026年内です。優良な電子帳簿は2027年1月1日の時点で要件を満たしている必要があり、年の途中で設定をオンにしても遡れません。「まだ2年ある」ではなく「今年中」の話である点が、この改正のいちばんの注意点です。詳しくは青色申告特別控除の改正記事で解説しています。
会計ソフトの比較記事は世の中にたくさんありますが、その多くは操作画面の見やすさ・スマホ対応・料金といった観点で書かれています。もちろん大事な要素です。
ただ2027年以降を見据えるなら、その前に確認しておくべき項目があります。そのソフトで作った帳簿が「優良な電子帳簿」の要件を満たせるかどうかです。
理由は単純で、ここを満たさないと75万円控除のルートに乗れないからです。どれだけ操作が快適でも、控除額が10万円変わるほうが金額としては大きくなります。逆に言えば、この条件さえ満たしていれば、あとは好みで選んで構いません。
ロ 帳簿間の相互関連性(仕訳帳と総勘定元帳などがたどれること)
ハ 検索機能の確保(取引年月日・金額・取引先で探せること)
これらは手書きの帳簿やExcelでは基本的に満たせません。訂正履歴が自動で残る仕組みが必要になるためです。「会計ソフトを使うこと」自体が、実質的な前提条件になったと考えてください。
各社の公式サイトを見ると、どこも「電子帳簿保存法に対応」と書いてあります。ただこの表記だけでは、優良な電子帳簿まで対応しているのかが判断できません。電子帳簿保存法には複数の区分があり、「対応」の範囲が会社ごとに違うためです。
そこで使えるのが、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)が公開している「電子帳簿ソフト法的要件認証製品一覧」です。第三者が要件充足を認証したもので、認証を受けた製品は国税庁のサイトにも掲載されます。
実際に一覧で確認できた主な製品は次のとおりです(いずれも自分で帳簿を作るためのパターン1「作成・保存」の認証です)。
- やよいの青色申告 オンライン(認証番号 106800-00)
- 弥生会計、やよいの青色申告(認証番号 100700-01)
- 弥生会計 Next(認証番号 107300-00)
- マネーフォワード クラウド会計、マネーフォワード クラウド確定申告(認証番号 104400-00)
- マネーフォワードクラウド会計Plus(認証番号 104500-00)
このほかTKC・ソリマチ・PCAなど、法人や会計事務所で使われる製品も多数掲載されています。個人事業主・副業の方であれば、上記のいずれかが現実的な選択肢になるはずです。
またJIIMA認証は任意の制度です。認証を受けていないソフトが要件を満たせないと決まっているわけでもありません。本記事は特定製品について要件を満たす・満たさないと判定するものではありません。検討中の製品がある場合は、提供元の公式情報で直接ご確認ください。
「まだ副業だし、白色申告で十分」と考えている方は少なくありません。ただ控除の話をするなら、白色申告には青色申告特別控除そのものが存在しません。75万円も65万円も関係なく、控除額はゼロです。
白色申告用のソフトも各社が出していますが、これらは控除を取るための選択肢にはなりません。記帳の手間を減らす目的では有効でも、控除で税負担を下げたいのであれば、青色申告に切り替えるところが出発点になります。
つまり2027年分から青色申告にしたいなら、2027年3月15日までに申請が必要ということになります。ソフトの準備(2026年内)とは期限が別なので、両方を意識してください。
なお、青色申告に切り替えても紙で申告していると、令和9年分からは控除が10万円になります。複式簿記で帳簿をつけていても、提出方法が紙というだけで55万円が10万円まで下がる改正です。e-Taxでの申告は、実質的に必須の条件になったと考えてください。
筆者は税理士事務所に勤務しており、業務のなかで弥生・マネーフォワードのどちらにも触れる機会があります。個人で契約して使い込んでいるわけではないので、「何年も自分で使った人のレビュー」ではない点は先にお断りしておきます。そのうえで、選定の考え方として実務上妥当だと思うことを書きます。
結論から言うと、認証を満たしているソフト同士であれば、機能差で悩む必要はほとんどありません。どちらも銀行口座やクレジットカードとの連携、仕訳の自動提案、確定申告書の作成まで一通り揃っています。決め手になるのは、次のような点です。
- サポートが必要か → 初めての確定申告なら、電話・チャットで質問できるプランのほうが安心です。ここは価格差がそのままサポートの厚みの差になります
- すでに使っているサービスとの相性 → 普段使っている銀行・カード・決済サービスと連携できるかは、実際の入力量に直結します
- 会計事務所に依頼する予定があるか → 将来的に顧問を頼むなら、その事務所が対応しているソフトに合わせるとやり取りが楽になります
ただし試用のまま年をまたがないよう注意してください。2027年1月1日の時点で本番の帳簿が動いている状態にしておく必要があるため、2026年のうちに使うソフトを決めておくのが安全です。
「やよいの青色申告 オンライン」の場合、公式サイトによるとセルフプランが次年度以降11,800円+税、ベーシックプランが22,800円+税で、2027年3月15日までの申し込み分についてセルフプラン・ベーシックプランを初年度無償とするキャンペーンが案内されています(トータルプランは初年度半額)。サポートが不要ならセルフ、初めてで不安ならベーシック、という分け方が実務的です。
マネーフォワード クラウド確定申告も同様に、認証一覧に掲載されている製品です。どちらを選んでも「優良な電子帳簿」のルートからは外れませんので、あとは操作感やサポートの好みで判断して問題ありません。
いずれのソフトを選ぶ場合も、申し込んだ後に「優良な電子帳簿」に対応する設定が有効になっているかを必ず確認してください。ソフトを契約しただけで自動的に要件を満たすとは限らず、設定やプランによって扱いが変わることがあります。この確認を飛ばすと、1年分の記帳が終わってから要件を満たしていなかったと気づくことになりかねません。
会計ソフト選びは、これまで「好みの問題」で済む部分が大きい領域でした。今回の改正で変わったのは、選び方を間違えると控除額という金額の差になって表れるようになった点です。
とはいえ、やるべきことは複雑ではありません。認証一覧で確認できるソフトを選び、2026年内に使い始め、e-Taxで申告する。この3つが揃えば75万円控除の要件に手が届きます。難しいのは中身ではなく、期限が2028年ではなく2026年内だと気づいているかどうかです。

