株式会社と合同会社はどちらを選ぶ?費用と仕組みの違い

株式会社と合同会社はどちらを選ぶ?費用と仕組みの違い 起業・副業
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法人の形態を選ぶ

株式会社か、合同会社か
費用の差は9万円。ただし判断の軸は別にあります

条文で決まっている差と、運用で効いてくる差を分けて整理します

株式会社 登録免許税 最低15万円 定款の認証が必要 決算公告の義務あり 合同会社 登録免許税 最低6万円 定款の認証は不要 決算公告の義務なし
法人にすると決めた後に出てくるのが、「株式会社と合同会社、どちらにするか」という問いです。調べると「合同会社は安い」「株式会社は信用がある」という説明が並びますが、金額の差は法律で決まっているのに対し、信用の差は相手によって変わります。この2つを同じ土俵で比べると判断を誤ります。この記事では、条文で確定している差運用で効いてくる差を分けて整理します。
✓ 先に結論
  • 設立時の登録免許税は株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円。差は9万円です
  • 定款の認証は株式会社のみ必要。合同会社は不要なので、その分の費用も変わります
  • 毎年の決算公告の義務は株式会社だけ。ただし実施率は1.8%という実態があります
  • ただし費用の差は最初の一度だけ。判断の軸は取引先と、人を雇うかどうかに置いてください
POINT01
設立にかかる費用の差
ここは金額が法律で決まっているため、はっきり比較できます

まず、確実に差が出るところから見ていきます。金額は感覚の話ではなく、登録免許税法の別表第一で決まっています。

設立登記の登録免許税
  • 株式会社/資本金の額の1000分の7。計算した額が15万円に満たないときは15万円
  • 合同会社/資本金の額の1000分の7。計算した額が6万円に満たないときは6万円

資本金が小さい場合、登記の段階で9万円の差が出ます。

定款の認証
  • 株式会社/会社法30条により、定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません。認証の手数料が別途かかります
  • 合同会社/会社法575条は「社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印する」と定めるのみで、認証は求められていません
⚠ 司法書士に依頼する場合の報酬は別です
上記は国に納める税金と認証の手数料の話です。設立の手続きを司法書士に依頼する場合は、その報酬が別途かかります。報酬額は依頼先によって異なるため、事前にご確認ください。

なお定款の作成や設立登記の代行は司法書士・行政書士の業務です。本記事は判断材料の整理までを扱っています。
POINT02
決算公告は「義務はあるが、ほぼ守られていない」
条文と実態が最も離れている論点です

見落とされがちですが、毎年発生する違いがあります。決算公告です。

会社法440条は次のように定めています。

✓ 条文の主語を見てください
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない」

主語が株式会社であり、合同会社にこの義務はありません。官報に掲載する場合の費用が毎年かからない点は、小さくない差です。

怠った場合の定めもあります。会社法976条2号は、公告をすることを怠ったときは100万円以下の過料に処すると定めています(対象は会社ではなく取締役などの個人です)。

⚠ ただし、実際に公告している会社はごく一部です
条文上は義務であり過料の定めもありますが、実態は大きく異なります。

東京商工リサーチが2023年6月に公表した調査によると、2022年に官報で決算公告を行ったのは4万214社。官報を公告方法とする株式会社は217万9,325社と推計されており、実施率は1.8%にとどまります。

つまり官報を公告方法としている株式会社の98%以上が、決算公告を行っていない計算になります。実務で決算公告を見かけないのは、このためです。過料が実際に科された事例も稀とされています。
✓ なぜ公告していないのに過料にならないのか
過料が科される経路を見ると、理由が分かります。

過料は、登記官が違反を見つけて管轄の地方裁判所に通知することで始まります。裁判所が略式の手続きで決定し、通知が代表者の自宅に届く、という流れです。

ここで問題になるのが「誰が気づくか」です。役員変更の登記漏れなら、登記簿を見れば任期切れが分かりますし、遅れて申請すれば申請書から懈怠の期間が明らかになります。登記官が発見できる仕組みがあります。

一方決算公告をしていないことは、登記簿に表れません。登記官が把握する経路がないため、通知に至りにくいという構造があります。実務で過料の話として聞くのは、ほとんどが登記懈怠(役員変更の登記漏れなど)のほうです。
✓ 公告方法は3つから選べます
会社法939条1項は、公告方法として次の3つを定款で定められるとしています。

① 官報に掲載する方法/掲載料がかかります
② 日刊新聞紙に掲載する方法
③ 電子公告/自社サイトなどに掲載する方法

定款に定めがない場合は、①の官報になります(同条4項)。

なお公告方法が官報または日刊新聞紙の場合、貸借対照表の「要旨」の公告で足ります(440条2項)。また電磁的方法で5年間継続して開示する措置をとれば、公告そのものが不要になります(440条3項)。自社サイトに決算内容を載せて5年間置いておく、という対応が可能です。
⚠ 「だから守らなくてよい」という話ではありません
実施率が低いことと、義務がないことは別です。法律上の義務は存在し、過料の定めもあります。守っていない会社が多いという事実は、守らなくてよい理由にはなりません。

ただし形態を選ぶ判断材料としては、この差を過大に評価しないほうが実態に近いと言えます。「株式会社にすると毎年公告費用がかかる」という説明を見かけますが、実際にその費用が発生している会社は少数派です。

自社の対応をどうするかは、司法書士または顧問税理士にご相談ください。
POINT03
意思決定と経営の仕組みが違います
1人で始めるなら影響しませんが、複数なら重要です

費用の次に効いてくるのが、会社の動かし方の違いです。

仕組みの違い
  • 株式会社/出資する人(株主)と経営する人(取締役)が分かれています。株主総会の決議で取締役を選任・解任でき、就任する本人が出資している必要はありません
  • 合同会社/会社法590条により「社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する」とされ、出資と経営が結びついています
⚠ 合同会社では、出資していない人を役員にできません
この違いは、あとから人を経営に加えたいときに表面化します。合同会社で業務執行社員になるには出資が必要で、代表を交代する場合も持分を買い取るなどの手続きが必要になります。

利益が出ている会社ほど持分の評価額が上がるため、交代の負担も大きくなります。1人で設立して1人で続けるなら問題になりませんが、将来的に共同経営や事業承継を考えているなら、この点を先に確認してください。
✓ 役員の任期にも違いがあります
株式会社の取締役には任期があり、任期が満了するたびに登記が必要です(登記を怠ると過料の対象になることがあります)。

合同会社の業務執行社員には任期の定めがありません。そのぶん、定期的な登記の手間と費用がかからないという違いがあります。
POINT04
税金と経理の手間は、ほとんど変わりません
ここを誤解して形態を選ぶ方がいます

「合同会社のほうが経理が楽なのでは」と聞かれることがありますが、ここに大きな差はありません

変わらないもの
  • 法人税の計算方法/どちらも同じです
  • 赤字でもかかる均等割/どちらにも発生します
  • 日々の帳簿づけと決算/手間はほぼ同じです
  • 税理士に依頼する費用/形態による差はあまりありません

違うのは前述の決算公告と、株主総会に関する手続きの有無くらいです。税金や経理を理由に合同会社を選ぶ必要はありません。

✓ 法人化そのもので変わることは別記事にまとめています
個人事業主から法人になると、赤字でも均等割がかかること、申告を自力で行うのが難しくなること、会社のお金を自由に使えなくなることなど、形態にかかわらず共通の変化があります。

この点は個人事業主のまま続けるか、法人にするかで整理しています。まだ法人化そのものを迷っている段階なら、先にそちらをご覧ください。
POINT05
では、どちらを選ぶか
費用ではなく、相手で決めてください

ここまでの差をまとめると、判断の材料は次のようになります。

合同会社が向いていると考えられるケース
  • 1人で設立し、1人で続ける予定/意思決定で揉める構造がありません
  • お客様が個人中心/飲食・美容・教室・小売など、会社形態を尋ねられる場面が少ない業種
  • すでに株式会社があり、サブ的な位置づけで作る
  • まず小さく試したい/設立費用を抑えられます
株式会社を検討したほうがよいケース
  • 大企業と直接取引する予定がある → 取引先の登録条件に会社形態の指定がある場合があります
  • 新卒や若手を採用する予定がある → 応募者やその家族への説明の手間が増えることがあります
  • 外部からの出資を受ける可能性がある → 株式による資金調達ができます
  • 出資していない人を経営に加える予定がある → 合同会社では対応できません
⚠ 「信用が低い」を漠然と怖がらないでください
合同会社のデメリットとして必ず挙がるのが「社会的信用が低い」ですが、この差が表に出る場面は限られています。上に挙げたような相手がいる場面で効いてくるもので、事業の中身の問題ではありません。

狙っている取引先が既に決まっているなら、設立前にその会社に直接確認できます。「合同会社でも取引可能か」と聞けば答えが返ってきます。漠然と不安を抱えたまま決めるより確実です。
✓ あとから株式会社に変更することもできます
合同会社から株式会社への変更は、組織変更という手続きで可能です。ただし登記費用・官報掲載料・専門家への報酬がかかり、期間も必要になります。無料ではありません。

合同会社を選ぶ際の具体的な判断材料は、合同会社の設立で後悔する人・しない人で詳しく整理しています。実際に困ったケースと問題なかったケースを比較していますので、迷っている方はあわせてご覧ください。
まとめ:確定している差と、相手による差を分ける
STEP 01
費用の差は9万円
→ 条文で確定。ただし一度だけ
STEP 02
決算公告は株式会社のみ
→ ただし実施率は1.8%
STEP 03
判断の軸は相手
→ 取引先と採用の予定で決める

設立費用の差ははっきりしていますが、それは最初の一度だけです。事業を続ける限り効いてくるのは、決算公告のような毎年の負担と、取引先や採用の場面で形態が問われるかどうかです。数万円の差で決めるのではなく、これから関わる相手を基準に選んでください。

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「この事業ならどちらが向いているか」「設立後の経理は何から始めるのか」——設立の前後は、調べても答えが出にくい疑問が一度に出てきます。税理士事務所での実務経験をもとに、こうした疑問にお答えしています。

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※登記や定款そのものの手続きは司法書士の業務です。経理・税務まわりのご相談を承っています。

本記事は2026年8月30日時点の法令にもとづいて作成しています。登録免許税の金額は登録免許税法別表第一、定款の認証に関する記載は会社法30条および575条、決算公告に関する記載は会社法440条および976条2号、公告方法に関する記載は会社法939条、業務の執行に関する記載は会社法590条の条文を確認したうえで記載しています。決算公告の実施率(2022年・4万214社/217万9,325社・1.8%)は、東京商工リサーチが2023年6月26日に公表した調査によるものです。実施率が低いことは法律上の義務を否定するものではありません。設立手続きを専門家に依頼する場合の報酬は、依頼先および業務範囲によって異なります。本記事に記載した費用は国に納める登録免許税および認証に関するものであり、専門家への報酬を含みません。定款の作成・設立登記・組織変更の手続きは司法書士および行政書士の業務であり、本記事はこれらの手続きの代行や個別の法律判断を行うものではありません。組織変更に要する費用と期間は事案によって異なります。取引先が会社形態について条件を設けているかどうかは相手先ごとに異なるため、実際の可否は直接ご確認ください。実際の設立にあたっては、司法書士または顧問税理士にご相談ください。本記事にはアフィリエイト広告および筆者自身の出品サービスの紹介が含まれています。
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