発注書・注文書の保存期間は?
税法7年・会社法10年のどちらで考えるか
「個人5年・法人7年」で覚えていると危険——書類の種類と会社の形態で答えが変わります
発注書・注文書は、税法上「取引に関して受領した書類」にあたり、帳簿書類として保存する義務があります。保存期間は法人と個人事業主で違います。
- 法人 → 7年: 帳簿も書類もまとめて7年です(国税庁タックスアンサーNo.5930)。書類の種類で分かれないため、税法上は「全部7年」と覚えて問題ありません
- 個人事業主(青色申告) → 書類の種類で5年と7年に分かれる: 発注書・注文書は5年の区分に入ります。ただし後述のとおり例外があります
- 法人で欠損金(赤字)がある事業年度 → 10年: 赤字を翌年以降に繰り越す場合、その事業年度の帳簿書類は10年保存に伸びます
次のPOINT 02で、この「5年の書類」と「7年の書類」の境目を具体的に見ていきます。
青色申告をしている個人事業主の場合、保存期間は書類の区分ごとに決められています。区分ごとに整理すると次のようになります。
- 帳簿: 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など
- 決算関係書類: 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など
- 現金預金取引等関係書類: 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など
- その他の書類: 取引に関して作成・受領した上記以外の書類。請求書、見積書、契約書、納品書、送り状などが該当し、発注書・注文書もこの区分です
会社の場合、税法の7年とは別に会社法の10年があります。ここで問題になるのが、発注書がこの条文でいう「事業に関する重要な資料」に含まれるのかという点です。
- 株式会社 → 会社法432条2項: 「株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない」
- 合同会社・合名会社・合資会社(持分会社) → 会社法615条2項: 条文は分かれていますが、文言も保存期間も株式会社と同じ10年です。「合同会社だから短くてよい」ということはありません
- 一般社団法人・一般財団法人など会社以外の法人: 会社法ではなく、それぞれの根拠法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律など)に同じ趣旨の規定が置かれており、10年とされていることが多いです。自社の根拠法を確認してください
- 個人事業主: 会社法の適用はありません。税法の保存期間(POINT 02)だけで判断します
- 発注書は「会計帳簿」そのものではありません。会計帳簿とは仕訳帳・総勘定元帳など、取引を記録した帳簿を指します
- 論点になるのは、条文にある「その事業に関する重要な資料」のほうに含まれるかどうかです
- この「重要な資料」の範囲を具体的に定めた条文や法務省令はありません。そのため、何が該当するかは個別の判断になります
- 金額の大きい取引や、契約書に代わる性格を持つ発注書ほど「重要な資料」に近づきます。基本契約を結ばず、発注書のやりとりだけで取引している場合は特にそう考えられます
- 一方、定型的で少額の注文書まですべて該当するとは限らず、ここは解釈が分かれるところです
- 該当するかを1枚ずつ判断するのは現実的ではありません。判断に迷う時間のほうがコストになるため、実務では区別せず長いほうに合わせる会社が多くなります
保存期間で見落とされやすいのが「いつから数えるか」です。書類を受け取った日から7年ではありません。ここを勘違いすると、実際にはまだ保存義務がある書類を処分してしまうことになります。
- 法人税法: その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年です
- 消費税: 帳簿の閉鎖の日が属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年とされています(申告期限の延長特例を受けている法人は3か月)
- 会社法: 会計帳簿の閉鎖の時から10年です。税法のように申告期限を基準にしない点が異なります
発注書をメール添付のPDFやWeb上のシステムで受け取った場合、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当します。電子取引に当たるデータは、電子のまま保存することが必要とされており、紙に印刷したものだけを残す運用は認められていません。
- 紙で受け取った発注書 → そのまま紙で保存して問題ありません(スキャナ保存の要件を満たせば電子化も可能です)
- メール添付のPDF・Web発行の発注書 → 電子データのまま保存します。印刷して紙で残すだけでは要件を満たしません
- 紙で受け取ったものと電子で受け取ったものが混在するのが通常なので、受け取り方ごとに保存先を分けておくと管理しやすくなります
→ 赤字を繰り越す年度は10年
→ ただし領収証・通帳は7年
→ 合同会社も同じ。税法とは別
→ 取引日から数えると1年早い
→ 印刷して紙で残すだけでは不足
→ 探せない状態が調査で困る
発注書の保存で迷ったら、会社(株式会社・合同会社など)なら「10年」、個人事業主なら「7年」で統一し、年度ごとの箱に入れると決めてしまうのがいちばん確実です。書類ごとに年数を見分ける手間がなくなり、誤って早く処分する事故も防げます。
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